第四席

 近頃流行のドラッグストアは酷(ひど)い。確かに便利だが、いちいち店員がうるさい。
 渋谷や新宿の街中で店員が店頭に立って大声で宣伝をしている。あのね、あんたがたが売っているのはなんだい? 薬や化粧品でしょ。そんなに慌てて売るべきものか。
 あの売り方は魚屋である。魚屋は早く売らなきゃ腐っちまうから仕方がないが、どうして薬をあんなに騒いで売るのか。それをなぜ人々が怒らないか不思議でしょうがない。
 たぶん、腐るんだろうね、薬がね。一刻も早く売りたい花屋をごらん。花屋の方がよっぽど騒いで売りたいよ。花屋がドラックストアと同じ売り方をしてごらん。誰も買わないよ。すぐに枯れちゃいそうだもの。

 賃貸マンションの仲介業もうるさい。駅前などでその会社のテーマソングをガンガン流している。
 私なんか自宅の最寄の駅に行くと自然とその歌を口ずさんでしまっていたりする。気がつくとものすごく損をした気分になる。不動産屋なんだから、もっと陰気にやりなさい。不動産屋は不動産屋らしくしなさい。遊園地に行ったら「昭和枯れすすき」が流れていたらいやでしょ(めちゃくちゃないちゃもんのつけ方だな、我ながら)。不動産屋にテーマソングなんぞいらない!

 私が一番嫌いなのは、行列のできるこだわりのラーメン屋。ラーメンなんぞ並んで食うほどのものではない。
 スープにやたらこだわりすぎて、あらゆる動物の骨と野菜を煮込み、もはや意味が分からない代物(しろもの)になっている場合が多い。
 豚の背油なんかをできあがったラーメンの上に、チャッチャカ網越しにかけたりする。豚が背中にかいた汗なんかかけてくれるなよ。
 チャーシュウも凝り過ぎて、脂でギトギト。あの手のラーメンを自動車のガソリンタンクに入れたら間違いなく動き出すよ。ラーメン屋の主人に、過ぎたるは及ばざるがごとしという言葉を贈って差し上げたい。
 それと随分と威張っているラーメン屋のおやじがいるね。もっと人間の身体によろしいものをこしらえてから威張りなさい。

 若者の間では古着屋が流行っているらしい。一度、出かけてみた。
 どんな若者が購入するのだろうかと監視していたら、私服警官と間違えられてしまったよ。
 昔は古着なんか、「死んだ人が着ていたかもしれない」と思って、買うのを躊躇(ちゅうちょ)したものだ。今では古着がおしゃれなんだって。馬鹿か。おさがりを着ておしゃれも何もあったものではない。

 渋谷の109や新宿のアルタの洋服屋をのぞいてみると、誰が店員で誰が客か見当がつかない。店員は制服を着なさい。

 私はデパートが嫌いだ。何が嫌いったって、冷暖房を店員側にあわせて調節しているところだ。
 夏場のデパートの寒いこと。冷房をガンガンかけまくる。半袖(はんそで)では到底耐えられない寒さだ。ガタガタ震えながらショッピッングをしなくてはいけない。それなのに店員をごらん、寒いからって薄でのカーディガンを着ているよ。
 冬場は逆。表が寒いから客はコートの下にたくさん着込んで買い物にくる。するとデパートは暖房をかけまくる。客は汗まみれになるから慌ててコートを脱ぐ。手の自由がふさがれて実に動きづらい。で、店員をみると、薄でのカーディガンを着て身軽に立ち回っている。
 なんなんだい?

 デパートの挨拶も嫌だ。開店のとき、店員が全員並んで挨拶(あいさつ)をしてくる。客は、とっても決まりが悪い気持ちになる。どうして挨拶をされて決まりが悪いかというと、マニュアルの挨拶だからだ。奴(やつ)らは開店前に朝礼をして練習した挨拶をぶつけてくる。
 挨拶なんて稽古(けいこ)するものなのか? 心をこめて自分の言葉ですればよろしい。
 それにどうして開店のときにしか挨拶をしないのだ? 開店の音楽が止まると、くるっと背中を向けて、午前中でありながら誰も「おはようございます」と言わなくなる。
 意味のない挨拶なんかやめていただきたい。

 最後にコンビニの弁当はまずい。間違いなくまずいのに、テレビのワイドショーかなんかでタレントが出てきてコンビニの新商品を食べたりすると、おいしい! なんておおげさに騒ぐ。  おいしいはずがない。私は生まれてこの方、コンビニでおいしいと思える弁当に出合ったことがない。

2009年10月11日