第19回 ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ

レシピ印刷 ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ

 ふきのとうを使った代表的な料理といえば「ふき味噌(みそ)」。茹(ゆ)でて水をさらしてアクをとったふきのとうをきざみ、味噌、みりん、砂糖などと混ぜて練りながら火を入れるのが、基本的な作り方だ。
 前回で書いたように、佐渡のおばあさんから、ふきのとうは薬味、スパイスだ、というインスピレーションを得た私が考えたふき味噌の作り方はまったく違う。いわゆる「薬味味噌」にふきのとうという新たな、そして鮮烈な薬味を加えたイメージである。
 例によって、生のままきざんだふきのとうをそのまま使い、かつおぶし、胡麻(ごま)、柚子(ゆず)の皮、きざみねぎなどと一緒に味噌に混ぜ合わせる。胡桃や生姜(しょうが)を入れてもうまい。味噌は、米こうじの多い、甘めのものを使うとよい。そのまま炙(あぶ)って、焼き味噌にすると、酒のつまみとして、最高に美味だ。

ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ
ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ
ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ

 しかしここで私は考える。ふきのとうが薬味なら、この味噌自体が薬味みたいなもんではないか。というわけで、焼き魚に、大根おろしとともに添える。実にうまい。
 ついでに、魚に塗ってから焼く。焼き味噌の香りが漂い、食欲をそそる。ふき味噌はふっくらとして香ばしく、それが、魚の味が混ざり合う。
 すぐ近くの沢で釣れるイワナやヤマメが最高。川魚独特の香りとの相性が素晴らしくよいのだ。しかしめったに手に入らないので、ここではタラを使った。海の魚ならタラやアンコウ、フグ、カワハギ、メバルなどの白身魚がよい。「魚のふき味噌田楽(でんがく)焼き」とでもいおうか。魚の代わりに豆腐にのせて炙ってもおいしいし、焼きおにぎりも素晴らしい味わいだ。

 断言するが、通常の作り方のふき味噌より、この"ふき薬味味噌"のほうが、何倍も何十倍もうまい。そのうえふきのとうをたくさん使う必要もない。2~3人分なら、作る前に、庭からひとつひねりとって、その半分程度使えば十分なのだ。
 しかし、少なくて済む、というのは困ったことでもある。次から次へと出てくるふきのとうを消費できないのだ。やがてふきのとうは空に向かって伸び始める、暖かくなるにつれ、白い花が咲き、綿毛(わたげ)でいっぱいになり、それがところどころ抜け落ちてすっかりくたびれた印象になる。
 風に吹かれる、それらのふきのとうの姿を見て、私は膝(ひざ)を打った。その姿は、背中を丸めてよろよろと動く、白いひげの老人そのもの。我が家の庭のあちこちで、正真正銘の「ふきのじいさん」たちがゆらゆらと揺れているのである。


ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ

ふきんじい味噌

材料

  • ふきのとう......1/2個
  • 味噌(みそ)......大さじ4
  • 長ねぎ......3cm
  • 白ごま(または金ごま)......小さじ1
  • かつおぶし......大さじ1
  • 柚子(ゆず)の皮......少々


作り方

    ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ
  1. 長ねぎとふきのとうは粗みじんに切る。柚子の皮は針状に切る。
  2. すべての材料をよく混ぜ合わせる。
  3. ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ
  4. タラの切り身にふきんじい味噌を塗りつけ、トースターか魚焼きグリルでタラに火が通るまで焼けば、「タラのふきんじい味噌焼き」ができあがる。
  5. ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ ふっくらして香ばしい「ふき味噌」のうまさ
  6. 今度は豆腐にふきんじい味噌をのせる。トースターなどに入れ、味噌に焼き色がつくまで焼けば、「豆腐のふきんじい味噌田楽」となる。

2010年2月12日