夏野菜の季節だ。特に8月も下旬を過ぎるとナスもトマトもぐっと安くなる。そこで、この旬の野菜たちを使ってカレーを作る。
といっても、ただの野菜カレーではない。夏野菜を一度直火で焼く。なぜそんな面倒なことを? と思う人もいるだろう。これは男子特有のDNAなのだろうか、要は火遊び。子どものころから、焼くという作業それ自体がめちゃくちゃ楽しいのだ。加えて、野菜を焼けば甘いカラメルのような香りを堪能でき、そのうえカレーが格段にうまくなるのだからいうことはない。
できれば、よく晴れた休みの日の午前中、白ワインかビールを開け、飲みながら焼く。野菜は多めに用意し、塩とオリーブオイルをときどきふりかけてはつまみ食い。あっ、ご飯を炊くのも忘れずに。酔っぱらいすぎてそれを忘れ、妻子からブーイングを受けるヤツもいるらしい(上の写真にごはんが写っていないのは、そんなわけです。すみません......)。
まずは、ふたのできる鍋にオリーブオイル大さじ1と1cm角に切ったタマネギ2個分を入れてざっと混ぜ、弱めの中火にかける。透明になり、しっとりとしてとろりと柔らかくなったら火を止めておく。
その隣のコンロには焼き網を載せ、焼きなすを作る要領で、なす3本を直火で皮を焦がすように焼く。これは魚焼きグリルを使ってもいい。
トルコだと(そう、トルコでも焼きなすを作るのだ)、なすの丸いおしりの部分に大きめのフォークを刺し、直火にかざしてシワシワになるまで焼く。このやり方は、なす1本のときは便利でいいが、3本ぐらい焼くときは時間がかかるし、フォークがどんどん熱くなる。ただし、なす1本だけ焼きなすにするなら、おすすめのやり方だ。
同じくパプリカ2個を皮が黒くこげるまで焼く。そして、なすとパプリカは紙袋にいれておく。こうするといい具合にふやけて、皮がむきやすくなる。
続いてヘタを取ったミニトマト20個くらいとズッキーニ2本を丸ごと焼き網で軽く焦げ目がつくまであぶる。これも魚焼きグリルを使っても。焦げ目がついたら、ミニトマトはそのまま、たまねぎの入った鍋に入れる。残りの野菜は切るが、その前に鶏肉を焼こう。
鶏もも肉1枚に塩小さじ1/2とこしょう少々をまぶし、サラダ油をひいたフライパンにのせ、弱めの中火にかける。バチバチと音がしてきたら弱火にして12分ほど焼き、皮目においしそうな焼き色がついたらひっくり返す。さらに7、8分ほど火を通したら、そのまま10分ほど置いて肉を落ち着かせる。
そして鶏を焼いている間に、先ほどあぶった野菜を切る。ズッキーニは1cm幅に切る。袋からなすとパプリカを出して、皮をむき、1cm角程度に切り、やはり鍋に入れる。皮をむいたパプリカを切ると、なかに透明な汁がたまっているはずだが、これがものすごくおいしい。決して捨てず、一緒に鍋の中に入れる。
ちなみに、この焼き野菜たちをボールに入れて塩をオリーブオイルであえただけのものも非常に美味。やっぱり合うのは白ワインか。パスタソースやパンにのせて食べてもいい。
野菜類を入れた鍋に、塩とチリパウダー各小さじ1/2、クミンパウダー、ターメリックパウダー、ガラムマサラ各小さい1、黒こしょう少々を加えて混ぜ、ふたをして弱火で10分煮る。
最近はこれらのスパイスもスーパーで見かけることが多いが、すべてがそろわない場合はカレー粉+ガラムマサラ、またはカレー粉+クミンでごまかす。近所に、スパイス類の棚が深刻なまでに貧困なスーパーしかなければ、カレー粉+一味唐辛子(七味ではなく一味です)で。これならどの店にもたぶんあるはず。
さて、野菜を煮込んだら、鶏もも肉を1cm幅に切って加えよう。このときヨーグルト大さじ2も一緒に入れる。味見をして足りなかったら塩を足す。そしてさらに5分ほど煮込んだら火を止める。
お皿に盛ったら好みで生卵を落とす。まるでカレーの上で太陽がかがやいているよう。夏の陽光そのもののような力強いカレーのできあがりである。
ミニトマトとズッキーニが主役の
夏野菜カレー
必要な道具
- 直径18~22cm程度のふたのある鍋
- フッ素加工のフライパン
材料(3~4人前)
- ズッキーニ......2本
- ミニトマト......20個程度
- なす......3本
- パプリカ......2個
- 玉ねぎ......中2個
- オリーブオイル......大さじ1
- 鶏もも肉......1枚
- 鶏を焼くときの塩......小さじ1/2
- 鶏を焼くときのこしょう......少々
- サラダ油......小さじ1
- クミンパウダー......小さじ1
- ターメリックパウダー......小さじ1
- ガラムマサラ......小さじ1
- チリパウダー......小さじ1/2
- 黒こしょう......少々
- 塩......小さじ1/2
- ヨーグルト......大さじ2
- 卵(好みで)......3~4個
作り方
- ふたのできる鍋に油と1cm角に切ったタマネギを入れ、透明になるまで炒める。
- ナスとパプリカを焼き網に載せ、直火で皮を焦がすように焼き、皮をむいて、1cm角に切り、1.の鍋に加える。パプリカを切ったときに溢れ出る甘いエキスも捨てないで一緒に鍋に入れる。
- ミニトマトとズッキーニは少し焦げ目がつくまで直火で炙る。ズッキーニは1cm角に切り、ミニトマトはそのまま鍋に加える。
- 塩こしょうをした鶏肉をフライパンで焼き、一口大に切る。
- 鍋にスパイス類と塩を加えて混ぜ、ふたをして弱火で10分煮る。
- 鶏肉とヨーグルトを鍋に加えて混ぜ、味を見て薄ければ塩を足す。さらに5分煮込んで完成。皿に盛り、生卵を落として供す。