第7回 強い旨みと匂いを活かす「足し算」のキノコ料理

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 キノコの旬が秋というのは、もうほとんどイメージの中だけの話で、実際には、菌床栽培のマイタケやシイタケ、ブナシメジなどが一年中栽培され、いつでも手に入る。秋にしか手に入らないとなると、今ではマツタケぐらいなものだ。
 ただ、運が良ければこの時期には、原木栽培のシイタケやクリタケ、ナメコなどが出回ることもあり、味は菌床栽培のものより格段に良い。

 しかし、それでも天然のものにはとてもかなわない。都会では無理でも少し田舎に行けば、天然のキノコを手に入れるのはそう難しいことではない。
 天然シイタケは春に生えるので秋に手に入れる術はないが、ナラタケやクリタケは案外簡単に見つかる。採った木の株を覚えておけば、来年も同じ株から生えるから、時期さえ逃さなければ確実に獲れる。
 マイタケも、見つけるのは難しいものの、ほぼ毎年木から出る。

 これらの天然キノコを食べ慣れてしまうと、スーパーで売っているキノコを食べたときに最初に感じるのは、「臭い」ということだ。「菌の匂い」が強すぎるのだ。それでいて旨(うま)みは少ない。そして弾力が強い。
 それに対して天然のものは、一瞬あっさりしているようで、凝縮した旨みがある。そして、歯切れがよく、噛んでいて気持ちよい。ちょうど豚肉とイノシシ肉の違いによく似ている(イノシシ肉が臭いと思っている人も多いが、締め方や解体方法が適切なら臭みは豚よりはるかに少なく、旨みが強く、特に脂身の歯切れがよい)。

 しかしながら、都会で天然キノコを手に入れるのは難しい。そこで、上記のことをふまえた上で、普通に出回っている菌床栽培のキノコをうまく使って料理を作ってみたい。

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 まずはシンプルに焼く。それだけで旨みがぐっと増す。ただ焼くだけだと乾燥してしまうので、オイルで膜を作り、またワインでさらに旨みを添加する。
 使うのは、エリンギやシイタケ、マッシュルームなど、肉厚のキノコがいい。もちろん、予算さえ許せばマツタケを使えばすこぶる美味だ。マイタケやヒラタケなど先端が細かく分かれているキノコは乾燥しがちで歯ごたえも悪い。

 もう一つの方法は、たくさんの種類のキノコを混ぜ、それぞれの強い匂いを渾然一体(こんぜんいったい)とさせてしまい、さらにそこに天然キノコの旨みを加えてしまうというもの。もっとも手に入りやすい天然キノコであるドライポルチーニ、さらに菌床よりはだいぶましな原木栽培シイタケを使った干しシイタケで旨みを与えるのだ。

 キノコは水分が多く、炒めるとどんどん水っぽくなる。そこであわてて火を止めてももう後の祭りなので、腹を据えて水分が蒸発しきるまで炒め続けるのが正解。水分が飛び、旨みの強い、気持ちのよい歯ごたえのキノコ炒めができる。
 レタスなどで包んで食べてたり、メイン料理の付け合わせにしたり、いろいろと使えるので,たくさん作ってストックしておくのもよい。

 この多様なキノコの渾然一体感ともいうべきものがよく合う料理は、なんといってもカレー。カレーもまた、個性の強いものをどんどん足して、一体感を出した料理だ。
 そこで、「渾然一体キノコ」をキーマカレー風に仕立ててみると、想像通りのおいしさだった。私は基本的にシンプルな「引き算の料理」が好きだが、キノコとカレーは「足し算」が合う。

 ちなみに今回料理を作っていて印象的だったのは、エノキダケが、意外にも最も強い香りを放っていたこと。5、6種類のキノコを混ぜ、スパイスを加えても、エノキダケの、日本酒の酵母にも似た香りが感じられるのである。


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キノコのオイル焼き

材料(2人分)

  • キノコ(エリンギ、マッシュルーム、シイタケなど)......10個程度
  • オリーブオイル......大さじ3
  • 白ワイン(または日本酒)......大さじ3
  • 塩......小さじ1/2
  • 黒こしょう......少々

作り方

  1. ボールにオリーブオイル、白ワイン、塩を入れてよく混ぜる。


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  3. 1にキノコを加えてよくからめる。


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  5. 直火に焼き網を載せ、きのこを炙(あぶ)る。焼き色がつき、表面に艶(つや)が出て、
    箸(はし)で押すと水分が少しにじみ出るようになったら焼けている。



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キノコの炒めもの

材料(2~3人分)

  • キノコ(エリンギ、マイタケ、ヒラタケ、ブナシメジ、エノキダケ、マッシュルームなど)......200g
  • 干しシイタケ......2~3個
  • ドライポルチーニ......5g程度
  • 塩......小さじ1/2
  • オリーブオイル......大さじ1
  • バター......大さじ1

作り方

  1. 干しシイタケとドライポルチーニは水(またはぬるま湯)につけて、戻す(戻し汁は捨てない)。

  2. キノコ類と戻した干しシイタケとポルチーニをみじん切りにする。


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  4. フライパンにオリーブオイルを入れて中火にかけ、2を加えて炒める。


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  6. 塩と1の戻し汁を加え、出てきた水が蒸発してなくなるまで炒める。


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  8. 最後にバターを加えて火を止め、全体を混ぜ合わせる。



キノコのキーマカレー風

材料(3~4人前)

  • キノコ(エリンギ、マイタケ、ヒラタケ、ブナシメジ、エノキダケ、マッシュルームなど)......合わせて200g
  • 干しシイタケ......2~3個
  • ドライポルチーニ......5g程度
  • 水......200ml
  • にんにく......1片
  • しょうが......親指大ひとかけ
  • サラダ油......少々
  • トマト水煮缶......1缶(400g)
  • ヨーグルト(無糖)......200ml
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  • 味噌......大さじ1
  • コリアンダーパウダー......大さじ1
  • クミンパウダー......小さじ1
  • ターメリックパウダー......小さじ1/2
  • チリパウダー......小さじ1/2
  • 塩......小さじ1/2程度

作り方

  1. 干しシイタケとドライポルチーニは水(またはぬるま湯)につけて、戻す(戻し汁は捨てない)。

  2. キノコ類と戻した干しシイタケとポルチーニ、にんにく、しょうがをみじん切りにする。

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  4. フライパンにサラダ油と、にんにく、しょうがを入れて中火にかけ、香りが出たら、
    キノコ類(干しシイタケ、ポルチーニも)と塩を入れて炒める。


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  6. キノコから水分が出てくるが、それが蒸発するまで炒め、さらにコリアンダー、クミン、
    ターメリックを加えてざっと炒める。


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  8. 1の戻し汁、適当に切ったトマト水煮(煮汁ごと)、ヨーグルトを加えて
    トマトをつぶしながら混ぜ合わせ、弱火にしてふたをし、
    焦げないようときどき混ぜながら30分ほど煮詰める。


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  10. 味噌とガラムマサラを加えて混ぜ、さらに5分ほど煮詰めて完成。

2009年10月 9日