第6回 旬の今しか作れない、甘く香ばしいイチジク料理

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 イチジクの旬は短い。
 店頭に並び始めたな、と思うと、いつのまにか姿を消してしまう。
 柔らかく、傷みやすく、保存が利かない。

 佐渡ではフランス原産の黒イチジクが栽培されているが、夏でもビニールハウスの中で育てられている。糖度が非常に高く、虫の被害がすごいからだと聞いた。また非常に柔らかく、ちょっとした衝撃で崩れて売りものにならなくなる。

 ハネものの、崩れたり傷ついたりした黒イチジクを袋一杯もらったことがあったが、それはそれは美味なるものだった。そのまま食べても、タルトにしても、料理に使っても、素晴らしくおいしかった。

 その柔らかさゆえ、島外に出すのは難しいらしいが、見た目ばかりを気にする日本の流通制度のせいで、本土に住む人たちの手に入らないのはもったいない、というほかない。

 通常のイチジクもフランス原産の黒イチジクほどではないにしろ、やはり商品として流通させることは難しい。しかし、強靭(きょうじん)で栽培は難しくないので、田舎では庭にイチジクを植えている人は多い。放っておいても実がつくので、秋にはあちこちの庭でイチジクがたわわに実ることになる。イチジクは保存が利かないため、毎年、日本の田舎では、一気にイチジクがダブつく現象が起こるのである。

 大抵の場合、せいぜいジャムにされるぐらいで、残りは鳥に食べられ、地面に落ち、放置されることになるのだが、イチジクが大好きな私としては、やっぱりそれはもったいなさすぎる。今回ご紹介するのはそんなときに最適のレシピ。

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 都会では役に立たないレシピと思うかも知れないが、そうでもない。傷みやすい果実だけあって、スーパーの見切り品売り場に崩れたようなイチジクが激安で並ぶことは多々あるのだ。

  

 まずは、イチジク入り胡麻豆腐(ごまどうふ)。胡麻とイチジクは相性が非常によいので、和食の定番に、炊いたイチジクに胡麻だれをかける、などというものがあるが、混ぜ込んで豆腐にしてしまうといっそう美味で、また驚きがあっていい。どうせつぶしてしまうので、少々形が崩れていても大丈夫なのだ。

  

 イチジクを漬け床(つけどこ)にしてしまう、という手もある。今回は同じく旬のサンマを漬けてソテーした。もともとサンマは甘みとよく合う魚。バターで焼くと、カラメルのような香りが立って食欲をそそる。ここでは塩味としたが、案外醤油(しようゆ)味でもよい。まさにこの時期しか作れない料理だ。

   

 豚肉との相性のよさは知られているが、豚バラ薄切りとイチジクを重ねて、グラタン風に仕上げると、ものすごく簡単なのに見映えもよく、とても美味。これは赤ワインがぴったりだ。

  

 魚と合わせるにしろ、肉と合わせるにしろ、焼いたときの甘く香ばしい匂いがなによりイチジクの身上(しんじょう)。鼻でもそのおいしさを堪能(たんのう)したい。    

 最後は、同じく旬を迎えた栗と合わせてみた。イチジクは水分が出やすい果実なので、中心の赤い部分(実は小さな花が寄せ集まった部分)だけを耐熱容器に入れ、その上に栗入りのクレーム・ブリュレを入れて焼き上げるのである。作り方は簡単だが、一年のうちで、今しか食べられない貴重なデザートである。


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イジチク胡麻豆腐(ごまどうふ)

材料(4人分)

  • 白胡麻......100g
  • くず粉......40g
  • 昆布だし......300g
  • イチジク......3個
  • 塩......小さじ1/4

作り方

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  1. 白胡麻をすり、だし、塩を加えて伸ばす。


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  3. これを漉し、くず粉を加えてよくまぜ、もう一度漉してダマを取り除く。


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  5. 鍋に2と皮をむいたイチジクを入れて弱めの中火にかけ、
    イチジクをつぶしながら絶えず混ぜ、固まったら型に入れて完成。



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さんまのイチジク漬け

材料(2人分)

  • イチジク......2個
  • さんま......2尾
  • 塩......少々
  • バター......少々

作り方

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  1. さんまは頭と内蔵を取り除き、よく洗い、イチジクはつぶす。


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  3. 皮をむき、つぶしたイチジクと一緒に密閉できるビニール袋などに入れておく。


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  5. 半日ほど置いたら、フライパンにバターを入れて弱めの中火にかけ、サンマを入れて、両面を焼いて完成。



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サンマと豚バラ肉のグラタン風

材料(2人分)

  • 豚バラ薄切り肉......200g
  • イチジク......4個
  • 昆布だし......300g
  • 塩、黒こしょう......適宜

作り方

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  1. イチジクは皮をむき、5mm幅程度の輪切りにし、豚バラ薄切り肉は、耐熱容器の幅に切る。

  2. 豚肉とイチジクを交互にずらしながら重ねてゆき、塩、黒こしょうをふる。


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  4. 220℃程度に予熱したオーブンに入れ、25分ほど焼いて完成。
    オーブントースターを使って普通のグラタンを作る要領で焼いてもよい。



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栗とイチジクのクレーム・ブリュレ

材料(10人分)

  • 栗......10個
  • マスカルポーネチーズ......100g
  • 卵黄......2個
  • グラニュー糖......50g
  • 生クリーム......200ml
  • ブランデー......少々
  • きび砂糖......適量
  • イチジク......2個

作り方

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  1. 栗はゆでてスプーンで中を取り出し、マスカルポーネチーズとよく混ぜ合わせる。


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  3. 卵黄にグラニュー糖を加え、白っぽくなるまで混ぜる。


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  5. 2に1を加えてよく混ぜ、生クリームを少しずつ加え、ブランデーを入れる。


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  7. 耐熱容器にイチジクの中心の部分をスプーンですくって入れ、その上に3を注ぐ。


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  9. 150℃に予熱したオーブンに入れ、25分程度火を入れ、粗熱(あらねつ)が取れた冷蔵庫で冷やす。


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  11. もしバーナーがあれば、食べる前にきび砂糖をふってバーナーで炙(あぶ)る。

2009年10月 6日