第5回 季節の移り変わりを舌で楽しむ、さんまの秋レシピ

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 さんまは夏と秋とを紡ぐ食材である。
 8月には新物が登場し、トマトをはじめとする夏野菜と抜群の相性を発揮する。
 8月後半以降、秋なすが大量に採れはじめ、安く出回るころには、さんまももっとも安くなる。前回は「さんまと焼きなすのマリネ」を紹介したが、なすとさんまの相性もよい。
 そしていよいよ本格的な秋になると、キノコや銀杏(ぎんなん)、そして柚子(ゆず)やすだちがさんまを待ち構えている。

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 まずは、「さんまサンド」を作ろう。

 三枚におろしてさっとソテーしたさんまにレモンを絞り、軽く焼いたたまねぎと生のトマト、そしてグリーンの野菜とともに、バゲットに挟む。それだけなのにとびきりうまい。

 使うパンは断然バゲットがいい。それも口のなかをけがしそうなくらい、パリパリの皮のやつ。かぶりつけば、そのパリパリのむこうに、驚くほど一体感のある味の固まりが現れ、かむほどにおいしさが広がる感じだ。
 この感じは、食パンでもカンパーニュでも決して味わえない。よく見れば、バゲットは形からして、さんまをのせてください、と言わんばかりに長細いではないか。

 BBQで作るのもよい。
 焼くときに広葉樹の枝を混ぜてやれば、燻製(くんせい)のような香りがつき、なお美味だ。夏らしい味わいで、ちょっと季節をすぎてしまった感があるが、空が青く高い、秋晴れの日のピクニックにもぴったりの一品だろう。

 秋らしく茶色でまとめた料理としては、「さんま入りの和風オニオンスープ」なんていうのはどうだろう。
 たまねぎを茶色くなるまで炒め、キノコで旨味(うまみ)を出し、そこにさんまをのせてオーブントースターで焼く。すだちを絞り、最後に山椒(さんしょう)を振り入れて完成。山椒は必須。入れないと何か物足りなく、味が決まらない。

 トマトの赤やグリーンと合わせると、さんまは涼やかな青色に見え、一方キノコなど秋らしい茶系の色をした食材と合わせると、黒っぽいもっと落ち着いた色に見える。バゲットの上では青々として若々しかったさんまが、オニオンスープでは、すっかり落ち着いた大人に見えてくるから不思議だ。

 最後にご紹介する「さんまと長ねぎのじゃがいも包み」は、先日、雑誌の取材で、「包丁を使わないで作る料理」を考案中に、偶然に生まれたレシピだ。少し包丁を使うので誌面にはのせられなかったが、そのとき考えたレシピの中で、料理としての完成度は一番高かった。季節感はないが、なにしろおいしい。
 ピーラーで薄切りにしたじゃがいもで、ネギとサンマを包んで弱火でじっくり焼く。じゃがいもがきつね色にパリッと焼けば、中には、とろとろの甘いねぎとふっくらと蒸し焼きになったさんま。まずいわけがない。

 なお、今回のレシピはすべて三枚おろしを使ったが、これはスーパーなどでおろしてもらえばよい。1尾数十円という激安の時期に頼むのは申し訳ない気もするが、実際にお願してみれば、あっという間におろして、腹骨も取ってくれるだろう。

 そうそう、新さんまの時期、前年に獲れて冷凍しておいたさんまが一緒に並ぶことがある。できればそちらは避け、やはり夏から秋への季節の移り変わりを、舌で堪能してほしい。


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さんまサンド

材料(2人分)

  • さんま......1尾
  • トマト......1個
  • たまねぎ......1/2個
  • 塩、こしょう、小麦粉、オリーブオイル......少々
  • レモン汁......適宜
  • レタス、水菜など......適宜

作り方

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  1. さんまは三枚におろして腹骨をすきとり、塩こしょうし、小麦粉をまぶす。トマト、たまねぎは5mm厚程度の輪切りにする。









  2. フライパンにオリーブオイルを入れて中火にかけ、たまねぎを入れざっと炒め、さらにさんまを皮目から入れて1分ほど焼く。ひっくり返して、さらに1分ほど、中に火が通るまで焼く。







  3. バゲットを水平に切り分け、下半分にレタスなどとトマトをのせ、さらにたまねぎ、さんまをのせ、レモン汁をかけ、バゲットの上半分をのせて完成。

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さんま入り和風オニオンスープ

材料(2人分)

  • さんま......2尾
  • たまねぎ......5個
  • 干し椎茸(しいたけ)......3個
  • 舞茸(まいたけ)......1パック
  • サラダ油......大さじ3
  • 水......800cc
  • 塩......小さじ1/2
  • ぎんなん......7~8個
  • 粉山椒(こなざんしょう)......少々

作り方

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  1. ボールに水と干し椎茸を入れ、干し椎茸を戻す。戻ったら薄切りにする。


  2. たまねぎを薄切りにし、焦げ付かないように注意しながら茶色くなるまで30分ほど炒める。






  3. フライパンに適当にほぐした舞茸と干し椎茸を入れ、炒める。このとき油が足りないようなら適宜足す。








  4. 舞茸に火が通ってしっとりと柔らかくなったら、椎茸の戻し汁(じる)を加え、沸騰したら弱火で7~8分煮込む。これを深めの耐熱皿に移し、ぎんなんを散らす。

















  5. さんまは三枚におろして腹骨をすきとり、塩(分量外)少々をふり、4の上に皮目を上にしてのせる。








  6. トースターに入れ、さんまに焼き色がついたら完成。

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さんまと長ねぎのじゃがいも包み

材料(2人分)

  • さんま......1尾
  • じゃがいも(メークイーン)......1~2個
  • 長ねぎ......1本
  • 塩、こしょう......少々
  • サラダ油......大さじ2程度

作り方

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  1. さんまは三枚におろし、腹骨をすきとる。


  2. じゃがいもの皮をむき、身もピーラーで薄くスライスしてゆく。細長いメークイーンが扱いやすい。長ねぎは3cm幅程度に切りさらに縦半分に切る。






  3. 2のじゃがいもを塩こしょうし、全体の1/4量をバットに広げ、うえにさんまの長さの分だけ、長ねぎを断面を上にして並べる。








  4. ねぎにも塩をかるくふり、上にさんまをのせ、さらに1/4量のじゃがいもを上からのせ、全体を包み込むように整形する。これをもうひとつ作る。

















  5. フッ素樹脂加工のフライパンにサラダ油を入れて熱し、温まったら、4を形を崩さないようにそっと入れる。








  6. 焼いている面がおいしそうなきつね色になったらひっくり返し、裏面も焼き色がついたら、皿に移して完成。

2009年9月25日