一つの食材について集中的に考えたあとは、実は切り替えが難しい。仕事柄、さまざまな媒体に料理レシピを書いているが、ある特定の食材が頭から離れず、困ることがあるのだ。
今、どうしても頭から離れない食材は、サンマ、イチジク、そしてキノコである。そう、この連載でひとつの食材を集中的に扱うことを始めて以来、別の仕事で何か新しいレシピを開発しようと思っても、これらの食材ばかりが思い浮かんでしまうのだ。
先日もトンカツのレシピを頼まれたのだが、すぐに「トンカツにイチジクを入れたらうまいだろうか」などと考えてしまう。
他の食材に目がいかなくなってしまうのは困りものではあるのだが、実際にイチジクとんかつを作ってみるとおいしかったりするので、まあ、悪くはない。
この連載の原稿とレシピを書き終わると、頭の中はその食材に執着しつつも、「一仕事終わった......」とほっとする。そして、穏やかな気持ちで、書き終わった後の余韻を楽しむ。その状態で他の仕事に取りかかると、サンマやイチジクやキノコと別の食材を取り合わせた、いいレシピが生まれることが多いようだ。「イチジクレシピ、イチジクレシピ......」と念じながら、どんなレシピを作ろうか頭を捻っているときには思い浮かばなかったようなレシピがどんどんと出てくるのである。
これらをお蔵入りにさせてはもったいないので、そんな「余韻レシピ」を今回はご紹介する。
まずはイチジクと豚肉とポルチーニの煮込み。連載時にも豚肉とイチジクの組み合わせはあったが、そこにキノコが加わっている点が違う。キノコレシピの連載を書くときの研究の成果が加わっている。
イチジクトンカツは別のサイトに載せる予定なのでここでは紹介しないが、薄切り肉を使ってより簡単に作れる、イチジク入り一口カツをご紹介しよう。
そしてサンマのレシピは、サンマの山椒煮を洋風にしたイメージで。やはりここにもキノコが加わる。
最後のキノコレシピは、前回紹介した「キノコのオイル焼き」を進化させたもの。一度シンプルなレシピを作っておくと、このようにバリエーションを広げてゆくことができるのである。
豚バラ肉とイチジクとポルチーニの煮込み
材料(2~3人分)
- 豚バラ......800g
- イチジク......5個
- 乾燥ポルチーニ......5g
- 水......1カップ
- 白ワイン......1カップ
- 塩......小さじ1
- 黒こしょう......少々
作り方
- 豚バラ肉は5cm角程度に切り、塩小さじ1/2,黒こしょうをまぶし、
弱めの中火にかけたフライパンで各面2分ずつ焼く。 - イチジクは皮をむき、ポルチーニは水で戻す。鍋に1の豚バラとイチジク、ポルチーニを浸(つ)けて汁(しる)ごと入れ、さらに白ワイン、塩小さじ1/2を入れ、ひたひたになるまで水を注ぐ。
- これを中火にかけ、沸騰し始めたらとろ火にして煮る。90分ほどしたらひっくり返し、さらに90分、計3時間程度煮込んで完成。
豚とイチジクの一口カツ
材料(2~3人)
- イチジク......2個
- 豚薄切り肉(ロース、ももなど)......20枚程度
- 塩、こしょう......適宜
- パン粉
- 薄力粉
《卵液》
- 卵......1個
- 牛乳......50ml
キノコのチーズココット
材料(10センチ径2個分)
- キノコ(エリンギ、ブナシメジ、マッシュルームなど)......6本程度
- パルミジャーノチーズ(粉末)......適宜
- アスパラガス......2~3本
- パン......少々
- 塩......少々
- こしょう......少々
- オリーブオイル......少々
- 白ワイン......少々
- キノコは1本を2、3等分にし、アスパラガスは5cm幅程度に切る。これをボールに入れて、白ワイン、オリーブオイル、塩、こしょうを加えてよく混ぜる。
- 耐熱性のココットにパンを敷き、パルミジャーノチーズを少々ふりかける。その上にアスパラガスとキノコを入れ、さらにチーズをたっぷりとふる。
- 220℃に予熱したオーブンで10分焼いて完成。
サンマとキノコの煮込みマリネ
材料(2~3人分)
- サンマ......2尾
- キノコ(マッシュルーム、エリンギ、ブナシメジなど)......適宜
- 乾燥ポルチーニ......3g程度
- 水(ポルチーニを浸けるため)......1カップ
- 白ワイン......1カップ
- レモン汁......大さじ1
- 塩......小さじ1/4
- 長ねぎ......2本
- 赤とうがらし......1本(好みで)
- E.V.オリーブオイル......適宜