第4回 赤ピーマンの色と甘さが生きる、シンプルでおしゃれな西洋料理

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前回のなすと並んで、下焼きでおいしくなる野菜が赤ピーマンだ。

韓国やオランダから来た肉厚のパプリカが一年中売られているが、じつは赤ピーマンの旬はまさに今。この時期には、八百屋やスーパーの店頭に、不ぞろいな赤い国産ピーマンが並ぶのである。

  

普通の緑のピーマンに比べ、赤ピーマンやパプリカは難しい。まず、緑のピーマンが赤く熟すまでには1ヵ月はかかる。普通のピーマンはもげば、すぐに新しい花が咲き、実がなり、つぎつぎに収穫できるが、赤ピーマンは枝についたまま、じっくり熟させねばならない。だから一株に実る数も少なくなるし、夏の間、ずっと畑を占領するので、効率が悪い。

また、若いピーマンを食べる虫はほとんどいないが、それが赤く熟して甘い香りを放ち始めると、とたんに虫やら鳥やらが寄ってきてかじる。するとかじられたところから腐ってくる。また雨が降り、表面のくぼみに水が溜まってもそこから腐る。けっこうやっかいな作物である。

  

それだけに、収穫の喜びは格別で、採れたてを炙(あぶ)り、薄皮をむいて塩とオリーブオイルをかけて食べるだけで最高に幸せな気持ちになる。

焼くことでその糖分はキャラメルのような香ばしさを放ち、また、焼くと赤ピーマンのなかに水分が溜まるのだが、それもジュースのように甘くて美味だ。

この採れたて味を知っている4歳の長男は、スーパーに赤ピーマンやパプリカが並んでいるのを見つけると、大好きな桃や葡萄(ぶどう)もそっちのけで、「あーっ、僕がいちばーん好きな食べものがある!」と興奮を隠さないほどだ。

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焼き方は、直火で焼いて薄皮をむくのが王道だが、一度にたくさん作るときは、オーブンが便利だ。大量に作った場合、余ったものは、数日間保存できる。

  

しっかり冷えたものは、ただそのまま食べるだけでもとてもおいしく、サラダなどにいれてもよい。国産赤ピーマンの旬は短いので、一度にたくさん作って保存することをおすすめする。

  

さて作り方だが、オーブンを180℃くらいに予熱し、ハサミでヘタと種を取り除き、さらに中を洗って残った種も取り除く。表面にサラダ油を塗ったパプリカを立てて入れ、20~25分ほど加熱する。取り出してそのまま待てば、粗熱(あらねつ)が取れるころ(左写真の4番目)には薄皮がシワシワになり、スーッと手で簡単にむける。

  

これはフランス料理のシェフの水島弘史氏が考えたもの。プロのやり方だけあって、大量の赤ピーマンの薄皮をむくのに便利この上ない。ただし、このやり方だと、きれいに透明の皮がスーッとむけるが、きれいにむけすぎるせいか、そのすぐ下にある赤色の薄皮が残る。

  

じつは私もこの作業をしていて初めて知ったのだが、赤ピーマンは透明な薄皮と赤い薄皮の、2枚の皮に覆(おお)われているのだ。透明な薄皮ほどではないが、赤い薄皮(左写真の5番目は、透明のうす皮1枚をむいたところ。6番目の写真は赤い皮をむいているところ)もそれなりに味に癖があり、歯ざわりもよくはない。

  

味付けしてしまえば、あまり気にならないので、そのまま使って一向に差し支えないと思うが、たしかに2枚ともむいたほうが美味ではあるので、どうしても皮を2枚ともむきたい人は、直火で焼き、二つの皮を一度に取るようにするとよいだろう。オーブンで一度透明な薄皮をむいてから、もう一度赤い皮をむく作業は困難を極めるからだ。

  

そうやって作った下焼き済みの赤ピーマンは、焼きなすとは違い、イタリアンやフレンチなどとよく合う。その色は西洋的な鮮やかさを持っていて、見栄えのよいちょっとおしゃれな料理を作りたくなるのだ。とはいっても、いかにも凝った料理を作るわけではない。シンプルなのに見栄えがよい料理をいくつか作ってみた。

  

赤ピーマンは味もしっかりして甘みも強いので、合わせる食材を選ぶ。まずは、イタリアの定番にして鉄板のおいしさ、アンチョビとモッツァレラチーズのせで、一度は味わってほしい。

  

単に焼き赤ピーマンに塩とオリーブオイル、レモンなどをかけただけも十分うまいのだが、アンチョビとチーズを加えると味のボディが一気にしっかりし、その味わいが、口のなかで大きくふくらむ。

続いて合わせるのはお刺身用の生のホタテ。どういうわけかよく合う。今回は、塩、オリーブオイル、レモンで味をつけて層になるように重ね、よく冷やす。ただそれだけだが、見た目もよく、さも凝った料理のように見えるのがよい。

  

さらに、試しに赤ピーマン1個にほたての貝柱3個の割合でフードプロセッサーにかけ、スプーンで整形して、沸騰しない程度に熱したお湯のなかにそっと落としてみた。崩れることなくそのままきれいに固まったので、すくいあげて皿に盛り、オリーブオイルとレモンとこしょうをふる。こちらもかなりカッコイイ出来である。

  

味を比べてみると、重ねただけのほうに軍配が上がる。下焼きによってしっかりうまさを出した野菜は、やっぱり、よりシンプルに仕上げたほうが美味なのである。


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赤ピーマンのアンチョビとモッツァレラのせ

材料(2人分)

  • 赤ピーマン......2個
  • アンチョビフィレ......8枚
  • モッツァレラチーズ......100g程度
  • E.V.オリーブオイル......少々
  • レモン汁......少々

作り方

  1. 赤ピーマンを焼いて薄皮をむき、それぞれ4等分する。
  2. 赤ピーマンの上にスライスしたモッツァレラチーズとアンチョビフィレ1枚をのせ、オリーブオイルをかけ、レモンをしぼる。

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赤ピーマンとほたてのミルフィーユ風

材料(2人分)

  • 赤ピーマン......2個
  • ほたて(刺身用)......4個
  • E.V.オリーブオイル......少々
  • レモン汁......少々
  • 塩......少々

作り方

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  1. 赤ピーマンを焼いて皮をむき、ほたての幅より少し大きめの幅に切り分ける。





  2. ホタテは、貝柱だけにし、横から包丁を入れて、3枚に切り分ける。





  3. ボウルにすべての材料を入れてよくあえる。





  4. ボウルから赤ピーマンを一枚取り出し、上にホタテを重ねる。それを繰り返し、一番上は赤ピーマンでおおう。

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赤ピーマンとホタテのクネル風

材料(2人分)

  • 赤ピーマン......2個
  • ほたて(刺身用)......6個
  • E. V. オリーブオイル......少々
  • レモン汁......少々
  • 塩......少々
  • こしょう......少々

作り方

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  1. 赤ピーマンを焼いて皮をむき、てきとうな大きさに裂く。




  2. フードプロセッサーに1とほたての貝柱、塩を入れ、ペースト状にする。




  3. ぎりぎり沸騰しない程度までお湯をわかし、スプーン(今回はアイスクリームディッシャーを使用)などで整形した2のペーストをそっと入れ、固まったら取り出す。




  4. 皿に盛り、オリーブオイルとレモン汁、こしょうをかけて完成。

2009年9月18日