第14回 どんな食材とも合う「禁断の果実」

レシピ印刷 どんな食材とも合う「禁断の果実」

 りんごは箱買いが基本だ。段ボール箱一杯に買っても、腐らせてしまうことはまずない。なぜなら、りんごは「食材」としてとても秀逸(しゅういつ)だからだ。
 肉に合う。魚に合う。豆に合う。乳製品に合う。卵に合う。多くの香辛料に合う。生でうまい。煮ても、焼いても、揚げてもうまい。料理をする人間にとってこれほど重宝する果物はめったにない(その対極にある果物が柿で、柿ほど加熱調理に難儀する果物はめったにない)。
 「禁断の果実」にされてしまったのもわかる気がする。りんごを前にすると欲望(ただし食欲に限る)が、際限なく広がってゆく気がするのだ。

 りんごを使った手持ちのレシピはそれこそ山のようにあるが、今回はすべて新作。ここ数日、箱一杯のおいしいりんごを相手に頭と手と舌とを使ってウンウン唸(うな)りながら考えたものだ。

写真:豚肉

写真:ひよこ豆とりんご、ブルーチーズのオーブン焼き

写真:カラメリゼしたりんごのプリン

 まずは、定番の豚肉。京都で無職だったころは、冬になると、豚肉とリンゴを同じぐらいの大きさに切って炒め、黒こしょうをたっぷりかけたものをしょっちゅう食べていた。安上がりでおいしく、栄養もある。京都の冬の寒さと共に思い出すのは、ハモでも千枚漬けでもすっぽんでもなく、豚とりんご、である。
 これまではたいてい火を入れたりんごを豚に合わせてきたが、今回は生。生ならではの立ち上る香りとシャッキッとした食感が、まったりとした豚の味をぐっと引き締めてなかなかよい。すだちでさらで風味をつけ、輪郭のしっかりとした味わいとする。ローストした豚肉の代わりに蒸した鶏の胸肉などで作っても美味だ。

 続いては、豆とチーズとりんご。これも自分のなかでは新しい組み合わせだが、とてもおいしかった。ひよこ豆とりんごの組み合わせ、というのは、何やら可能性を感じるので、今後も追求してゆきたい課題である。

 そして仕上げはりんごをのせたプリン。焼きりんごにカスタードソースをかけるのを想像すればわかるように、りんごと卵というのはかなり幸福な組み合わせだ。
 ここでの一工夫は、りんごをタルト・タタンのようなキャラメル風味に仕上げているところだ。冷やしたプリンにできたての「バターキャラメルりんご」をかけて食べる。口の中では、香ばしいカラメルをまとったアツアツの甘いりんごが、とろけるようなプリンと絡み合って、これはちょっとヤバいくらい、至福なひとときなのである。


豚とりんご、すだちのサラダ

豚とりんご、すだちのサラダ

材料(2~3人分)

  • 豚ロース肉......800g
  • 塩......重量の1%程度
  • 黒こしょう......少々
  • りんご......1/2個
  • すだち......1個
  • マーマレード(あればライムのもの)......大さじ1
  • 水......少々
    *白ワインに浸けたレーズンをのせても美味

作り方

    豚とりんご、すだちのサラダ
  1. 豚ロースにまんべんなく塩をすりつけ、こしょうを振る。
  2. オーブンを160℃に予熱し、1の豚肉をローストする。30分ほど焼いたら裏返し、さらに30分ほど焼く。
  3. 豚とりんご、すだちのサラダ 豚とりんご、すだちのサラダ
  4. 焼けたらアルミホイルに包んで温かいところに置き、1時間ほど休ませる。
  5. 豚肉を薄切りにし、マーマレードを水少々で薄めて豚肉に薄く塗り、すだちの汁を絞り、リンゴの薄切り、細く切ったすだちの皮を散らす。


ひよこ豆とりんご、ブルーチーズのオーブン焼き

ひよこ豆とりんご、ブルーチーズのオーブン焼き

材料(3~4人分)

  • ひよこ豆......1カップ
  • 塩豚(豚バラ肉に2%の塩をして一晩おいたもの)......300g
  • 玉ねぎ......1個
  • クローブ......1粒
  • にんにく......1片
  • りんご......1個
  • 白ワイン......大さじ1
  • 鶏の手羽先......2個
  • 水......800ml
  • 塩......小さじ1/2
  • ブルーチーズ......100g程度
  • パン粉......適宜
  • オリーブオイル......適宜
  • 黒こしょう......適宜

■作り方

    ひよこ豆とりんご、ブルーチーズのオーブン焼き
  1. ひよこ豆は一晩水に浸(つ)けて戻し、なべに20分ほどゆでてザルにあける。
  2. 鍋に短冊切りにした塩豚を入れて弱めの中火にかけ、脂が出て焼き色がついてきたら1のひよこ豆、乱切りにしたりんごと玉ねぎ、皮をむいたにんにく、白ワイン、手羽先、水、塩を加える。
  3. 沸騰したらとろ火にし、豆と肉が柔らかくなるまで、アクを取りながら煮る。味見をし、味が薄いようなら塩を足す。
  4. ひよこ豆とりんご、ブルーチーズのオーブン焼き ひよこ豆とりんご、ブルーチーズのオーブン焼き
  5. クローブと手羽先を取り除いた鍋の中身を耐熱ココットに移し、1cm角程度に切ったブルーチーズを入れ、黒こしょうをふり、パン粉とオリーブオイルをかけて、パン粉が色づくまで200℃のオーブンで、焼き色がつくまで20~30分ほど焼く。


カラメリゼしたりんごのプリン

カラメリゼしたリンゴのプリン

材料(7~8個分)

  • 牛乳......300ml
  • 生クリーム......300ml
  • 卵......1個
  • 卵黄......4個
  • 砂糖......60g
  • バニラビーンズ......1本
  • カルバドス(又はブランデー)......少々
  • リンゴ......3個
  • 砂糖......100g
  • 水......少々
  • バター......40g
  • シナモン......少々

作り方

    カラメリゼしたりんごのプリン
  1. 牛乳と生クリームを鍋に入れ、バニラビーンズを縦に裂き、中の種をしごきだして加え、さらにカルバドスを加えて火にかける。沸騰する前に火を止めて、そのまま人肌ぐらいまで冷ます。
  2. 卵と卵黄を溶き、砂糖を加えながら泡立てないようにかき混ぜる。
  3. 2に1を加えて混ぜ、ザルなどで漉(こ)し、プリン型に入れる。
  4. オーブンを130℃程度に予熱し、湯煎して40分程度、プリンが固まるまで火を入れる。できあがったら常温まで冷まし、冷蔵庫で冷やしておく。
  5. カラメリゼしたりんごのプリン
  6. リンゴをさいの目に切る。小鍋に砂糖と水少々を加えて熱し、溶けて薄く色づいてきたら鍋をゆすって砂糖を溶かし、茶色くなったら火から外し、バターを加える。
  7. カラメリゼしたりんごのプリン
  8. バターが溶けたら、ストウブなどのオーブンに入れられる鍋に移し、リンゴを加えて中火にかける。
  9. 煮汁がたくさん出てくるので、これが蒸発して、とろりとしてくるまでかき混ぜる。
  10. 7を180℃のオーブンに入れて20分ほど煮込む(焦がさないように時折様子を見ながら火を入れてゆく)。
  11. 4のプリンの上に8のリンゴをのせて供す。

2009年11月30日