13冊め 「ビジネス書」の新しい読み方を教えてくれる『ビジネス書大バカ事典』

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こんにち、ビジネス書がよく売れるそうだ。
今回ご紹介する『ビジネス書大バカ事典』は、そんな巷にあふれるビジネス書たちを、バッサバッサと斬っていく本である。

本についている帯にあるキャッチコピーもまたおもしろい。
「そんなビジネス書にいったいいくら遣ってるの?」

著者である勢古さんは、ビジネス書を「自分が金儲けをするための金儲け本」と「自分の言いたいことをしたためた本」とに分類し、当然ながら後者を高く評価している。
そして、前者を「ビジネス書もどき」として斬っているのである。

手にとってパラパラと開いて読んでみると、まず、文章がひねくれていておもしろい。
「白だ」と言っているものを「いやあれは黒だ」と言い「じゃあ黒だ」と言ったら「実は赤なんだ」と言うような、このひねくれた感じがいいのだ。

たとえば、私が好きなビジネス書を挙げてみると、経済学者である野口悠紀雄さんの『「超」手帳法』は100点満点の50点、「可」という評価。経済小説家の橘玲さんの著作『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門』は、なんと10点。
「いくらなんでもそんなにひどくはないだろう」とは思うが、「そういう切り口もあるのか」という発見もある。
自分が好きな著者がけなされているからと言って、気分が悪くなるようなものでもない。

斜に構えてちゃかすおもしろさ、娯楽の形をこの本は教えてくれる。

また、多くの本は、どうしても硬い内容の本だと読んでもらえないので、手に取りやすいタイトルがついている。おもしろいタイトルは本当におもしろいのだが、これをやり過ぎるのが、「もどき本」のパターンとして確立されているようだ。

これまでに私も何冊も本を出してきたが、本を出すときには非常な葛藤がある。
タイトルをとってみても、ストレートなタイトルにするのか、「なんだろう」とおもわせるようなひねりを加えるのか。
そもそも、何が売れるのか、出してみなければだれにも分からないという問題もある。
だけれども、僕自身が持っている信念を曲げてまでタイトルや内容を売れるようにしようとは思えないし、そこまでして本を出す必要性は感じない、とも思う。

成功には、「だれでも」「必ず」などという近道や王道はない。こういったタイトルに踊らされないように心がけておきたい。

今の人達は内容よりも、有名人が書いた、読んだという部分で本を買っているように感じる。
でも、そんな本をいくつも買うくらいなら、この本を1冊買ったほうがよほどいいと私は思う。

今回の乱読で得たこと

取り上げられている本を読んでいなくても、読んだ気分になれた

<今回の本>勢古浩爾『ビジネス書大バカ事典』(三五館)


2010年12月 6日