アッシ「ちっとも親分に会えねぇと嘆いていたら、
『サカリがついちゃって、ちっとも帰ってこないのよ』と、
おかみさんも嘆いていた」
吉太郎「えっ、オレになんか憑いてるのか?」
アッシ「おおっ、穴の向こうに見えるは親分!
そんなとこに隠れてないで、こっちに出てきて
おくんなせぇ」
吉太郎「何が憑いてるんだ? えっ?」
アッシ「親分がこちらにいらしていただければ、
アッシが憑き物をおとりいたしやす」
吉太郎「オレは、こちらより、あちらに行く」
アッシ「親分、吉太郎親分~」
アッシ「くそ! 先回りじゃ。親分のやり口は
合点承知なんでぇ。
おっ、ほらね、来た来た」
吉太郎「しょげねえな。少しだけサービスしてやるか。
コロンりんっとね」
アッシ「ほんとに、少しですね。
さっさと行っちゃうんですね」
とことことこ……
ふふふんふん……
すったこらさっさ……
吉太郎「今、帰ったよ」
おかみさん「あら、お早いお帰りで」
吉太郎「なんか、疲れたな~」
吉太郎「オレに、なんか憑いてるらしい」
吉太郎「ねえ、憑いてるンだってば~」
おかみさん「はいはい、それはそれは、ようござんした」
吉太郎「あ~あ、奥で一寝入りするか」