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        <title>梧桐書院WEB連載</title>
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        <description></description>
        <language>ja</language>
        <copyright>Copyright 2011</copyright>
        <lastBuildDate>Fri, 01 Oct 2010 22:03:20 +0900</lastBuildDate>
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        <item>
            <title>立川流鎖国論(5)  鎖国効果</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: blue;"><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></span></p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: blue;"><span style="font-size: small;">～落語は伝統芸能にあらず～</span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">　私の思い込みの激しい性格というのは、鎖国の世界では良い方向に作用していると思う。鎖国とは自分の国の文明文化こそ最高だと信じ込んでいるからこそ鎖国なのであり、落語という芸能そのものが鎖国的な芸能なのだ。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　この芸能のおもしろさ、すごさはわからない人にはどう説明してもわからない。柳家小さんのあの間がすばらしいだとか、古今亭志ん朝の「本当ぅにぃ」という響きがたまらないなんて、落語を知らない人にどう説明できるというのか。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　日本人にだってこの楽しさが一部の人にしか伝わらないというのに、アメリカ人なんかにはどう逆立ちしたって理解できないだろう。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;「ウディ・アレンよりも落語のほうが数十倍粋なことを言っているんだぜ」</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　なんてニューヨーカーに言ったって、ユーモアのかけらもない日本人が何を言っているんだと一笑されておしまいだ。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　ニューヨークで私も落語をやった。近ごろ、数人の落語家が海外で落語を披露しているらしい。下手くそな英語で落語を語っている輩もいるとのこと。その努力はたいしたものだが、落語は英語になりません。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　アメリカに30年ぐらい住んで、その町の匂い、その町に暮らす人種の文化と了見まで理解して初めて、落語らしきものを英語で語れる。</span><span style="font-size: small;">日本の英会話教室で学んだ程度の英語力で落語を語ったって、相手には物語しか伝わらない。</span><span style="font-size: small;">まあ、落語の楽しさを物語だと信じているのならばそれで仕方がないが、落語の魅力は物語にあるのではない。</span></p>
<p>&nbsp;</p>
<p><span style="font-size: small;">　</span><span style="font-size: small;">元来、落語とは、映画や小説、演劇になり得ない、屁みたいなくだらないものを名人がひとつの話芸にして語ったものだ。その「屁みたいにくだらないもの」の中に人生の真実があり、談志のいうところの「人間の業（ごう）」があるのだ。</span><span style="font-size: small;">それを中途半端な英語で語って、アメリカ人に聞かせてどうしようというのか？</span></p>
<p>&nbsp;</p>
<p><span style="font-size: small;">　私の場合は、スクリーンに字幕をだしてやってみたが、これも愚の骨頂。落語の持つ言葉の迫力と空気感は伝わったはずだが、それでも所詮（しょせん）、物語しか相手には伝わらない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　外国人</span><span style="font-size: small;">の歌手が日本に来て、片言の日本語で持ち歌を歌われたら、その歌詞の意味はわかるだろうが、おもしろくもなんともない。歌詞なんか分からなくても英語で普段通り歌ってもらえれば、客は感動する。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　森進一がアメリカにいって、「おふくろさん」を</span><span style="font-size: small;">「♪マザー、マザー、ルックアップ、スカイ」なんて歌うはずがない。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　落語は閉鎖的な、つまりは「鎖国的な芸能」だ。だからこそ江戸時代から今日まで続いている。</span><span style="font-size: small;">これが、いわゆる「伝統芸能」とは異なるところであり、笑いを主とした落語がもし「伝統」だけであったら、時代とずれすぎてとうの昔に崩壊しているはずだ。</span><span style="font-size: small;">落語を100パーセント伝統芸能だと信じ込んでいる落語家の落語は、だからつまらないと言ってもいい。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　落語の存在価値は「伝統芸能」のそれにあるのではなく、永遠に人間の中にある真実を描くところにあるのだ。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p style="text-align: center;"><span style="font-size: small;"><span style="color: blue;">～鎖国が生んだ4人～</span></span></p>
<p><span style="font-size: small;"><span style="color: blue;">&nbsp;</span></span></p>
<p><span style="font-size: small;">　鎖国的芸能である落語。その落語を生業（なりわい）としている落語家が東京に500人ほどいる。その中で立川流の存在は異彩をはなっている。</span><span style="font-size: small;">立川流は落語協会から脱退した立川談志という家元のもとに、その信者が集まった集団であり、「談志の言葉がすべて」であり、「談志の落語こそが最高だ」と思い込み、修行をし、長い間鎖国状態におかれていた。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　しかし、開国をした今日、そこで育った落語家が頭角を現してきた。立川流を作る前の談志にはいわゆる売れっ子の弟子がいなかった。 落語もできる小説家というキャッチフレーズの談四楼師匠が存在感を見せつけていたぐらいであろう。</span><span style="font-size: small;">「談志は弟子を育てるのが下手」とまで言われた。談志は「師匠がすごすぎると弟子は育たないもんだと思っていた」と過去を振り返る。</span></p>
<p>&nbsp;</p>
<p><span style="font-size: small;">　本当の売れっ子、スターは志の輔だけであろうが、落語界においてなにかと話題としてとりあげられるのは、志の輔のほか、談春、志らく、時として談笑である。</span><span style="font-size: small;">この4人とも談志が落語協会を脱会したのちの立川流、つまりは鎖国状態のなかで修業を積んだ落語家たちだ。鎖国が4人を生んだのである。</span></p>
<p><span style="font-size: small;">&nbsp;</span></p>
<p><span style="font-size: small;">　もっとも、私のように</span><span style="font-size: small;">思い込みが激しい性格でないと、この鎖国状態に疑問を抱いてしまうかもしれない。</span><span style="font-size: small;">日々疑問の中で暮らし、ついに開国となったときには、実に中途半端な芸人になってしまっている可能性がある。その点、私などは、談志が惚（ほ）れているものはすべて善だと思い込み、落語は当然のことながら、談志が愛するナツメロ、映画にいたるまで、教祖を上回る勢いでその知識を増やし、愛情を傾けながら、25年の歳月が流れたのである。</span></p>
<p>&nbsp;</p>
<p><span style="font-size: small;">　</span><span style="font-size: small;">だから思い込みの激しい性格、万歳なのだ&hellip;&hellip;って、論理もへったくれもありません。</span><span style="font-size: small;">こういう人間が落語家になったからいいようなものの、新興宗教にハマってしまったら、今ごろどうなっていたかわかりませんね。</span><span style="font-size: small;">落語家になって本当によかったよ。</span></p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/5.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 01 Oct 2010 22:03:20 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>立川流鎖国論（4）　志らく伝説・下</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt"><span style="color: #0000ff;">【登場人物】</span></p>
<table class="bodytxt" style="color: #0000ff;" border="0">
<tbody>
<tr valign="top">
<td style="white-space:nowrap;">●立川志らく&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流真打ち、私</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space:nowrap;">●落語立川流&hellip;&hellip;</td>
<td>立川談志が落語協会を脱会して設立。脱会によって寄席には出演できなくなり、独演会や一門会のみで活動することになった。脱会直前に弟子となったのが志の輔、脱会後に弟子になったのが談春、志らく、談笑。「寄席を知らない弟子たち」と呼ばれることもあり、それがタイトルの「立川流鎖国論」の由来。</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;"><br />～AMとPM～</span></p>
<p class="bodytxt">妻とニューヨークに行ったとき、とんでもない失敗をやらかした。</p>
<p class="bodytxt">入門当初、落語家としてニューヨーク旅行に行ける身分になるとは想像もしていなかった。ニューヨークで落語会を開催することになり、全日空が全面協力をしてくれるというので、開催前に現地に下見という名目で妻と旅行をさせてもらったのだ。思い込みによる失敗は帰りに起こった。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">帰国前夜、帰りの時刻を確かめようと飛行機のチケットを見た。「AM7:30」とそこに記されていた。でも私はまだ遊びに行きたい場所があり、勝手に「帰りは夜のフライトだ」と思い込んでいた。そのせいで、AMを午後だと脳が判断し、妻に「明日一日たっぷり遊べるよ」と話して、その晩は眠りについた。</p>
<p class="bodytxt">あくる日、ほうぼうを観光し、夕方、空港に向かうバスの中でもう一度航空券を確認した。「AM7:30」と当然ながら書いてある。AMは午後だと脳が主張する。しかしAMPMという言い方はするが、PMAMとは言わない。コンビニでもampmというのがある。</p>
<p class="bodytxt">午後・午前&hellip;&hellip;。脂汗が流れ出す。かたくなにAMを「午後」だと思い込んでいた脳が崩れ出す。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">AMと言えば、だれがなんと言おうが午前じゃないか。</p>
<p class="bodytxt">持参していた英会話の本を鞄（かばん）から取り出し、念のため調べてみる。</p>
<p class="bodytxt">「AM、午前のこと」</p>
<p class="bodytxt">己の間違いに気がつき、勇気をだして横でくつろいでいる妻に声をかけた。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">「重大な発表があります」</p>
<p class="bodytxt">「なに？」</p>
<p class="bodytxt">「我々の乗る飛行機は、もう行ってしまいました」</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">唖然（あぜん）とする妻。ただただ笑い続ける私。</p>
<p class="bodytxt">仕方なく全日空と私の間に仲介役で入っていたニューヨーク在住の友人に電話して、全日空に事情を説明してもらった。それから空港そばのホテルを急遽（きゅうきょ）とってもらい、飛行機は明日の便に変えた。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">飛行機代は全日空がもってくれたが、こうなると余計なホテル代は当然ながら自前。しかし所持金が100ドルしかなかった。帰るつもりだったから使ってしまったのだ。クレジットカードは使用限度を超えており、そのホテルには日本円をおろせるATMがない。ホテル料金が50ドル。夕飯が30ドルかかった。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">朝になり、空港まではタクシーに乗らないといけない距離。しかし、財布には20ドルしか残っていない。</p>
<p class="bodytxt">「まあ、空港はホテルの近所だろうから、10ドルあれば着くだろう」</p>
<p class="bodytxt">と、自分をそうやって勇気づけた。</p>
<p class="bodytxt">ホテルのカウンターでタクシーを手配してもらうと、なんとハイヤーのような車がきやがった。運転手は黒人。「ハイヤーでなくタクシーでいいです」と英語でどう言っていいかわからず、しずしずと車に乗り込んだ。</p>
<p class="bodytxt">車内に料金メーターがないではないか！　いったい我々夫婦はどうなるのか！　二日続けて脂汗がにじみ出てくる。</p>
<p class="bodytxt">時折、運転手がなにやら私に語りかけてくるが、何を言っているのかさっぱりわからず、ただ「イエス、イエス」とだけ連呼していた。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">数分で空港に到着。運転手が車から降りると、ドアを開けてくれて、トランクから荷物まで降ろしてくれようとしたので、私は「ノー、ノー」とここで初めて「NOと言える日本人」になった。</p>
<p class="bodytxt">「20ドルしか持っていないのだから、そこまでお世話になれませんよ。いくらですか？」</p>
<p class="bodytxt">と片言の英語で尋ねると、運転手はなにやらフィフティーンみたいなことを言っている。</p>
<p class="bodytxt">150ドルか！　と愕然（がくぜん）とする私だが、20ドルしか持っていないので、「ソウリー」と言いながら20ドルを渡した。</p>
<p class="bodytxt">どれだけ怒るだろうかと思ったら、「サンキュー」と言ってその場を去っていった。</p>
<p class="bodytxt">どうやら料金は15ドルで、私が20ドル渡したからお釣りの5ドルはチップだと思ったらしい。つまりホテルから空港まで15ドルと決まっていて、ホテル専属の車が送り迎えをしてくれていたのだ。</p>
<p class="bodytxt">黒い車＝ハイヤーと思い込み、黒人＝恐怖と思い込んでいたために、神経をすり減らしてしまったのだった。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～『オー』と『カー』と『マンマミーヤ』～</span></p>
<p class="bodytxt">その数年後、ラスベガスに妻と旅行した際も、くだらない思い込みをして汗みどろになったことがある。</p>
<p class="bodytxt">ラスベガスでショーを三つ観る予定になっていた。日本で予約をしておいて、現地のオカダヤという店でチケットを受け取る手はずになっていた。</p>
<p class="bodytxt">観る予定のショーは『オー』と『カー』と『マンマミーヤ』。8月5日に『オー』、6日に『カー』、7日に『マンマミーヤ』。</p>
<p class="bodytxt">しかし、これはたんにタイトルのゴロでその順番にしただけで、どういうことかというと、一番有名なのは水をテーマにしたイリュージョンの『オー』。どうしてもこれは観たかった。それで最初に『オー』。あとはなんでもよかった。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">妻が有名なミュージカル『マンマミーヤ』を観たいというのでそれを観ることにし、火をテーマにしたイリュージョンの『カー』は旅行会社の人に勧められたので観ることにしただけだ。</p>
<p class="bodytxt">で、本当の順番は『オー』『マンマミーヤ』そして『カー』。でも私の中では『オー』以外はどうでもよかったので、『オー』とくれば『カー』であろう。『オー』『カー』『マンマミーヤ』の順となる。</p>
<p class="bodytxt">と、まるで狛犬（こまいぬ）の「あ」といえば「うん」のようにそう覚えてしまった。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">オカダヤのカウンターで、</p>
<p class="bodytxt">「5日に『オー』、6日に『カー』、7日に『マンマミーヤ』で予約をしています」</p>
<p class="bodytxt">と告げると、受付の東南アジア系の人がいぶかしそうな顔をして、</p>
<p class="bodytxt">「『マンマミーヤ』は6日ですよ」</p>
<p class="bodytxt">と言ってきた。私は「そうですか」と言って、そのままチケットを受け取った。そして妻に、</p>
<p class="bodytxt">「あいつ、バカだね。6日は『カー』なのに」</p>
<p class="bodytxt">と笑った。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">「6日に『カー』を観る」と思い込んでしまうと、その間違いを指摘されても気がつかない。ましてやその間違いを指摘した人間が「自分より馬鹿だ」と勝手に思い込んでしまう粗忽者（そこつもの）の私であった。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">予定通り、5日に『オー』を観て6日を迎えた。『カー』は我々が宿泊をしていたMGMホテルの中にあるシアターでやっていた。PM7時の開演。もうAMとPMは間違えない。</p>
<p class="bodytxt">ホテル内でくつろぎ、6時半になり、そろそろシアターに向かおうと、チケットを確認した。すると何べん見てもチケットには「『カー』開催日8月7日」と書いてある。私はパニックに陥った。</p>
<p class="bodytxt">そこで真っ先に頭に浮かんだのが、いわゆるダブルブッキング。8月7日に『カー』と『マンマミーヤ』の二つのショーのチケットを購入してしまったと思ったのだ。</p>
<p class="bodytxt">妻に、</p>
<p class="bodytxt">「『カー』は今日じゃないよ。明日だった。明日は『マンマミーヤ』だけれども、こうなったらどちらかあきらめないといけないよ」</p>
<p class="bodytxt">と詫びた。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">しかし、そう言った直後、オカダヤの店員の言葉が頭をよぎった。</p>
<p class="bodytxt">「『マンマミーヤ』は6日ですよ」</p>
<p class="bodytxt">そこで初めて己の間違いに気がつく。</p>
<p class="bodytxt">「今日は『マンマミーヤ』だった。会場となるホテルは、マンダレイベイだ。7時の開演までまだ30分あるから、急ごう！」</p>
<p class="bodytxt">妻にそう告げたのだが、『マンマミーヤ』のチケットは部屋のサービス金庫の中であった。慌てて部屋に直行。しかし、ラスベガスのホテルはデカい。日本のホテルとはケタが違う。</p>
<p class="bodytxt">MGMは5000人収容できるデカさ。ホテルそのものが町なのである。</p>
<p class="bodytxt">エレベーターに飛び乗る。そういったときに限って、金髪のガキがすべての階のボタンを悪戯（いたずら）して押しやがる。</p>
<p class="bodytxt">各駅停車で自分の階まで行く。エレベーターを出てからが遠い。数百メートルの距離があった。</p>
<p class="bodytxt">全力で駆けて、チケットを手にし、エレベーターの中で見てみると、開演は7時半と書いてあった。一安心である。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">MGMからマンダレイベイまではそれほど遠くない。ホテルの正面玄関からその姿が見える。MGMの正面が、ホテル内にジェットコースターがあるニューヨーク・ニューヨーク。通りをはさんで左前に子供のお城みたいなエクスカリバー、その隣がピラミッド型のホテルルクソール。その隣が金ぴかに輝くマンダレイベイである。歩いて5分といった感じだ。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">でもこれが間違い。旅行会社の人にさんざん言われていた。</p>
<p class="bodytxt">「建物がすべて巨大なので、距離感が分からなくなりますよ。すぐそこだと思っても30分はかかると思ってください。それに真夏のラスベガスは想像を絶する暑さです。もともと、砂漠にホテルを建てたのだから、暑いに決まっていますがね。だから移動はなるべくタクシーかバス、モノレールを使ってくださいね」</p>
<p class="bodytxt">そう言われても、新宿駅南口から出てすぐ目の前に高島屋があるような感じでマンダレイベイが見えている。どうも日本人という民族は、タクシーで1メーターで降りるのは運転手に申しわけないという気持ちが働くみたいだ。</p>
<p class="bodytxt">時計を見ると6時45分。妻に私はこう告げた。</p>
<p class="bodytxt">「タクシーに乗る距離じゃない。第一、運転手さんに申し訳がない。歩いたって5分で着きそうな距離だ。旅行会社の人間の言葉を信じたとしても、せいぜい15分だよ。7時に到着すればちょうど開場時刻。それにルクソールのピラミッドと横に鎮座している偽物のスフィンクスをそばで見たいからさ、歩くことにしよう」</p>
<p class="bodytxt">二人はトコトコ歩き出した。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">すると、本当に遠いんですね。途中から走ったね。灼熱（しゃくねつ）の砂漠を妻と汗みどろになりながら。</p>
<p class="bodytxt">ピラミッドもスフィンクスも目に入りゃあしない。シアターに着いたのがなんと7時25分。新宿駅南口から高島屋まで40分かかってしまったのだ。</p>
<p class="bodytxt">おかげで肝心の『マンマミーヤ』の上演中、疲れから何度も船をこいでしまいました。</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/4.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Tue, 24 Aug 2010 00:06:00 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>立川流鎖国論(3)　志らく伝説・中</title>
            <description><![CDATA[<p><span style="color: #0000ff;"><span style="font-size: x-small;"><span style="background-color: #ffffff;"><span class="bodytxt"><span class="bodytxt" style="color: #3366ff;">&nbsp;</span></span></span></span></span></p>
<p><span class="bodytxt"><span style="color: #3366ff;">&nbsp;【登場人物】</span></span></p>
<p><span class="bodytxt"><span style="color: #3366ff;">&nbsp;</span></span></p>
<table style="COLOR: #0000ff" border="0">
<tbody class="bodytxt">
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;"><span style="background-color: #ffffff;"><span style="color: #3366ff;">●立川談志&hellip;&hellip;</span></span></td>
<td><span style="background-color: #ffffff;"><span style="color: #3366ff;">落語立川流家元、志らくの師匠</span></span></td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;"><span style="background-color: #ffffff;"><span style="color: #3366ff;">●立川志らく&hellip;&hellip;</span></span></td>
<td><span style="background-color: #ffffff;"><span style="color: #3366ff;">落語立川流真打ち、私</span></span></td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;"><span style="background-color: #ffffff;"><span style="color: #3366ff;">●落語立川流&hellip;&hellip;</span></span></td>
<td><span style="background-color: #ffffff;"><span style="color: #3366ff;">立川談志が落語協会を脱会して設立。脱会によって寄席には出演できなくなり、独演会や一門会のみで活動することになった。脱会直前に弟子となったのが志の輔、脱会後に弟子になったのが談春、志らく以下。「寄席を知らない弟子たち」と呼ばれることもあり、それがタイトルの「立川流鎖国論」の由来。</span></span></td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p><span style="background-color: #ffffff;">&nbsp;</span></p>
<p align="center"><span style="font-size: small;"><span class="bodytxt">&nbsp;</span></span></p>
<p align="center"><span class="bodytxt"><span style="color: #3366ff;">～13日の「土」曜日～</span> </span></p>
<p align="center"><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　志らくが談志の真似を始めたぞ、と落語ファンの間に噂（うわさ）がひろまった事件がある。私が独演会に穴をあけそうになったのだ。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「志らく独演会」なのに志らくが来ない。弟子が汗水垂らしてつないだそうだ。でも、私は談志の真似をしたわけではない。ただの勘違いである。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　小林小屋というプロダクションが主催する志らく独演会。冬季オリンピック開会式の日だった。独演会は2月13日の土曜日。私は日曜日だと思い込んでいた。「2月13日の日曜日」と頭にインプットされていた。しかし実際は、日曜日は2月14日で、2月13日は土曜日であった。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　この思い込みが激しいのも私の特徴だ。あとでその話はするが、とにかく「独演会は日曜日だ」と思い込んでしまっていたのだ。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　その日は昼からゴロゴロしていた。夕方になってテレビでオリンピックの開会式を見ていた。あともう少しで日本の入場だ。すると妻が私のスケジュール帳を見て、</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「今日、独演会じゃないの」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　と言い出した。私は笑いながら、</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「独演会は日曜日だよ、今日は土曜日だから明日が独演会だよ」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　と相手にしなかった。しかし、妻は言い返してきた。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「だって手帳にそう書いてあるもん」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「ならば書き間違えだ、バカ野郎」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　と、私は妻を罵（ののし）った。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　少し不安になって自分のスケジュール帳を見ると、そこには「2月13日土曜日市ヶ谷で</span><span class="bodytxt">独演会」と書かれてあった。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　私は「これは何かと間違えだ！」と叫んだ。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p class="bodytxt">　　13日は日曜日のはずだ。今日が土曜日ならば13日のはずがない。しかしテレビでは、アナウンサーがはっきりと「日本時間2010年2月13日土曜日、冬季オリンピックの開会でございます」と言っているではないか。アナウンサーが間違えるはずもない。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;　　おそるおそる携帯電話を手にしたら、マネージャーから複数回の着信履歴があった。私は、オフの日は携帯をサイレントモードにしているのでいくら携帯が鳴ってもわからない。</p>
<p><span class="bodytxt">　　留守電を聞いてみると、マネージャーの声で「志らくさん今どこにいますか、もうじき落語会が始まりますよ」と入っていた。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　時計を見ると、時刻は午後6時45分。会が始まるのは6時30分。私はあわてふためいてマネージャーに電話をした。マネージャーが、</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「今どこにいるんですか」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　と電話越しでもわかるぐらい青ざめた感じで聞いてきたので、正直に、</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「家だよ」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　と答えた。絶句するマネージャーに私は、</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「あれっ？　明日でしょ独演会は」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　と白々しく聞いた。するとマネージャーは、</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「今日ですよ！　もう始まってます。すぐに来て下さい。弟子でつないでいますから」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　と叫んだ。私はその言葉を聞くと、妻に「お前が正しかった」とだけ伝え、急いで着替え、家を飛び出した。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　 </span></p>
<p align="center"><span class="bodytxt" style="font-size: x-small;"><span class="bodytxt" style="color: #3366ff;"><span style="font-size: small;">～案外近い千葉～</span></span></span></p>
<p align="center"><span style="font-size: x-small;"><span class="bodytxt">&nbsp;</span></span></p>
<p style="text-align: left;"><span class="bodytxt">　　家から駅まで歩いて15分。タクシーを捕まえようとしたが、そういったときに限ってタクシーが見当たらない。とにかく走った。</span></p>
<p style="text-align: left;"><span class="bodytxt">&nbsp; </span><span class="bodytxt">マネージャーに電話したのが午後6時45分。己の間違えに気が付き、着替えて家を飛び出し、まで15分かかるのに7時2分には電車に乗っていた。</span></p>
<p class="bodytxt">　「我ながら凄い」と唸（うな）った。唸っている場合か！</p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　携帯の乗り換えサイトで市ヶ谷（いちがや・東京都千代田区）駅の到着時間を検索してみた。到着時間は午後7時35分。その旨（むね）をマネージャーにメールした。マネージャーから、「駅の改札に志らら（弟子）が迎えに行く」と返信があった。かなりの遅れではあるが、まあ許される範囲であると安心した。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　しかしこのとき、思い込みの激しい私の性格がさらなるパニックをもたらした。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　私は、独演会の場所を市川（いちかわ）と思い込んでいた。千葉県の市川だ。だからマネージャーに連絡したとき、これはとうてい間に合わないと思った。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　我が家は練馬（ねりま）である。市川までは1時間以上かかるはずだ。でも携帯で検索したら到着時間が7時35分とでた。なんだ、「千葉って近いね」と心の中で笑った。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　ちゃんと「市ヶ谷」で検索しているのに、頭では「市川」と思い込んでいるから笑える。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　高田馬場（たかだのばば）駅で地下鉄に乗り換える。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　髭（ひげ）を剃（そ）っている時間がなかったから、駅のホームで電車を待つ間に剃ろうとしたが、周りに人がいて恥ずかしくて剃れない。電車がホームに滑り込んできたときに、その騒音にまぎれて慌ててこそこそと電気剃刀（でんきかみそり）で髭を剃った。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　で、電車に乗り、もう一度携帯で到着時間を検索してみた。すると九段下（くだんした）駅で乗り換えとなっていて、九段下駅から3分で市ヶ谷に到着するとの表示。「これは変だ」と思った。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　そりゃそうだ。こちとら千葉の市川に行こうと思っているんだから。まさか九段下から3分で千葉県に着くはずがない。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　ここですさまじいパニックに陥る。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　果たして私は、自分がどこに行こうとしているのか、わからなくなってしまった。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　携帯では「市ヶ谷」と検索している。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　でも私は「市川」に行こうとしている。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　手帳を見ると「市ヶ谷」と書いてある。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　何がなんだかわからなくなり、鞄（かばん）の中をひっくり返して、マネージャーから渡された会場地図を引っ張り出した。そこには、「市ヶ谷」と書かれていた。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　なぜ「市川」と思い込んだのかというと、市ヶ谷で落語会をやったことがなく、市川では何回もやっているので、勝手にそう思ってしまっただけ。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　会場に着いて急いで着替え、</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「談志の真似をしたわけじゃない。ただの勘違いでして、家でオリンピックの開会式を見ていました。もし日本の入場を見ていたら、ここにはまだ来ていません」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　と、詫（わ）びながら笑いをとって、『短命（たんめい）』と『文七元結（ぶんしちもっとい）』の2席をつづけて演じて、客に許していただいた。</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　主催者は談志の旧友で、私のことをことのほかかわいがってくれていて、遅れてきたこの粗忽者（そこつもの）を怒ることもなく、</span></p>
<p><span class="bodytxt">　「弟子を鍛えるためにわざとやったんだよな」</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　と豪快に笑いとばしてくれたのだった。</span></p>
<p><span class="bodytxt">&nbsp;</span></p>
<p><span class="bodytxt">　　</span></p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/1-3.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Sat, 07 Aug 2010 17:34:55 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>立川流鎖国論(2)　立川ボーイズ伝説</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt"><span style="color: #0000ff;">【登場人物】</span></p>
<table class="bodytxt" style="color: #0000ff;" border="0">
<tbody>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●立川談志&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流家元、志らくの師匠</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●春風亭昇太&hellip;&hellip;</td>
<td>落語芸術協会真打ち、志らくの先輩</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●立川談春&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流真打ち、志らくの兄弟子</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●柳家花緑&hellip;&hellip;</td>
<td>落語協会真打ち、志らくの後輩、祖父が柳家小さん（談志の師匠）。志らくとはたびたび二人会を開いている</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●立川志らく&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流真打ち、私</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●落語立川流&hellip;&hellip;</td>
<td>立川談志が落語協会を脱会して設立。脱会によって寄席には出演できなくなり、独演会や一門会のみで活動することになった。脱会直前に弟子となったのが志の輔、脱会後に弟子になったのが談春、志らく、談笑。「寄席を知らない弟子たち」と呼ばれることもあり、それがタイトルの「立川流鎖国論」の由来。</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;"><br />～志らく5分、談春55分～</span></p>
<p class="bodytxt">談志はその昔、よく仕事に穴をあけることで伝説をこしらえた。落語をやりに行ったらば先方の対応があまりに悪く、怒って帰っちゃったとか、客がうるさいので落語を中断して帰っちゃったとか。</p>
<p class="bodytxt">「まさか志らくさんはそういうことはしませんよね」と言われるが、さにあらず。談志ほどの武勇伝こそないが、怒って帰っちゃったことが何度かある。私の場合、談志のように乱暴ではない。こそこそ帰る。こそこそ高座から降りる、である。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">談春兄（だんしゅんあに）さんと、とある高校で落語をやることになった。2人で1時間の持ち時間であった。まず私が高座に上がった。すると高校生が完全にだれきっていた。教室に特設高座を設けての落語会だったのだが、生徒はふてくされ、机に突っ伏していやがった。頭にきて、5分だけで高座から降りちゃった。</p>
<p class="bodytxt">談春兄さんは慌てたね。まだ持ち時間が55分もあるじゃないかと怒りながら高座に上がっていった。で、きちんと古典落語を55分演じておりました。さすがは平成の名人だ。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">成人式で落語を頼まれたことがあった。これも談春兄さんとの仕事。このときも2人で1時間。で、さっぱり客が噺（はなし）を聞かない。こんなところで落語をやる自分がかわいそうになり、やはり5分で降りちゃった。</p>
<p class="bodytxt">談春兄さんは慣れたもんで、愚痴もこぼさず淡々と古典落語を私の持ち分までやっていた。慣れというものは大切ですね。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～早稲田大学正門事件～</span></p>
<p class="bodytxt">談春兄さんとは「立川ボーイズ」というチーム名でコントをやっていたので、のべつ一緒に仕事をしていた時期がある。端（はた）から見ると談春のほうが乱暴に見えるが、このころは志らくのほうが乱暴だった。テレビの仕事も結構やっていたが、プロデューサーやディレクター、放送作家と上手に付き合い、仕事を円滑にすすめられたのは全部談春兄さんのおかげである。</p>
<p class="bodytxt">人付き合いが悪く、わがままで、怒るとこそこそ逃げる志らくではあったが、たまにキレることもあった。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">2人が早稲田大学の学園祭に呼ばれた際、正門で木戸をつかれてしまった。入場料代わりに学園祭のパンフレットを買わないと中には入れないと係の学生がいうのである。我々は招かれたのになんで金を払わなければいけないのか納得できず、要は係の学生にきちんと状況が伝わっていなかっただけのことなのだが、どうやっても中に入れてもらえない。どんなに説明しても「パンフレットを買え」の一点張り。</p>
<p class="bodytxt">談春兄さんはこの状況にあきれて「もう帰ろうじゃねぇか」と言い出し、3メートルぐらい歩き出す。でも私が粘って学生に説明をしているとすぐに戻ってきて、「だから帰っちまえばいいんだよ」と吐き捨てて、また3メートルぐらい歩きだす。これを数回繰り返したところで、「学生が根負けして、わかりました、入っていいですよ」と言ったのだ。</p>
<p class="bodytxt">しかしそう言ったあと、軽く舌打ちをしたのが私の耳に入ってきた。私は学生の胸ぐらをつかみ「ふざけた態度をとるな！　謝れ！」と怒鳴り散らした。</p>
<p class="bodytxt">その剣幕に談春兄さんが驚いて、まあまあと私を止めたのである。現在、「立川談春＝恐怖」と信じている人には、にわかには信じられない光景であろう。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">最近、地方の落語会の主催者が2週にわたって、談春、志らくの会を相次いで催したのだが、主催者が落語会終了の打ち上げで私に次のようにこぼしてきた。</p>
<p class="bodytxt">「志らくさんだと楽ですよ。談春さんだとピリピリしちゃって。落語会が終わった直後、楽屋に呼ばれて、そこに正座しろと言われて永遠1時間も小言（こごと）ですよ。お前は落語会の主催者としてなっていないって。志らくさんとは本当に楽しく会ができましたよ」</p>
<p class="bodytxt">と言われたぐらいだ。</p>
<p class="bodytxt">怒らないと私は実に紳士に見えるらしい。魔太郎なのにね。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～AVと鉄棒とAKB48～</span></p>
<p class="bodytxt">柳家花緑（やなぎやかろく）とトークショウを頼まれたことがある。月例でやっている大田区の下丸子落語倶楽部（しもまるこらくごくらぶ）の2人のオープニングトークの評判がよく、それをやってほしいという依頼だった。場所は東京体育館。あんな大きな会場に、志らくと花緑がおしゃべりをするだけで客が集まるのか不安であったが、ふたをあけてみたら、なんのことはない、満席。</p>
<p class="bodytxt">しかし、トークがてんでうけない。で、我々のあとに少女の集団がステージにかけ上がり、歌い出した。会場の盛り上がり方のすさまじいこと。</p>
<p class="bodytxt">聞いたらば、彼女たちはAKB48だという。その当時、私はまったく彼女たちについての知識がなく、素人の女の子の集まりだと思っていた。でも観客の盛り上がりをみて、この客は彼女たち目当てであることに気が付き、無性に腹がたってきた。</p>
<p class="bodytxt">志らくと花緑のトークは彼女たちの前座だったのか！</p>
<p class="bodytxt">もちろん、打ち合わせのときにAKB48のことは聞いているはずだ。でも興味がないから耳に入っていない。呆然（ぼうぜん）とする私に向かって、主催者が、彼女たちの後にまたステージにあがって、外国人とAKBと一緒にジェスチャーゲームをやってくれと言ってきた。</p>
<p class="bodytxt">まあ最初からそういう段取りだったのだろうが、素人の女の子の集まりの前座にされたことが許せず、私はもうステージには上がらないと主張した。主催者は困惑していた。</p>
<p class="bodytxt">すると花緑が、</p>
<p class="bodytxt">「これは兄さんのやる仕事じゃないよ、俺はこういうの好きだからあとは任せて」</p>
<p class="bodytxt">と1人でステージに上がっていった。いいやつだ、花緑は。</p>
<p class="bodytxt">私は当時所属していた立川企画の社長に、「もう帰るから」と怒りをぶつけた。すると社長は、</p>
<p class="bodytxt">「勘弁してくれよ、ギャラがよかったんだよ」</p>
<p class="bodytxt">と苦笑いを浮かべた。ギャラがいいなら仕方ないやと、社長を許し、AKBと無邪気に遊ぶ花緑を後にして、こそこそと東京体育館をあとにする私であった。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">春風亭昇太（しゅんぷうていしょうた）兄さんと、とある高校に落語をしにいったときの話がある。当時私は深夜テレビのレギュラーを持っていて、その番組内でちょっとエッチなことをしていた。毎週、AV女優をゲストに呼んで鉄棒に逆さにぶら下げて、オッパイを露出させながらインタビューをするという、はなはだ情けない仕事をしたもんだと今となっては後悔しているが、そのせいもあり、私が高座に登場するとものすごい歓声が沸き上がった。そのほとんどが野次である。</p>
<p class="bodytxt">「AVは一緒じゃないのか」「鉄棒はどこだ」云々（うんぬん）。</p>
<p class="bodytxt">前座があがったときからすでに落語をやる雰囲気ではないぐらい礼儀のなっていない子供たちだったのだが、私の出現により場内はストリップ劇場みたいになってしまった。</p>
<p class="bodytxt">私はむかついて、高座に座ったとたん、</p>
<p class="bodytxt">「うるせぇ！　静かにしやがれ」</p>
<p class="bodytxt">と怒鳴ってしまった。</p>
<p class="bodytxt">彼らはマイク越しに芸人に怒鳴られたことなどなかったろう。子供たちは水を打ったように静かになった。でも情けないことに、落語を語りはじめてもずっと客席は静まり返っていた。</p>
<p class="bodytxt">&nbsp;</p>
<p class="bodytxt">こんなこともあった。とある余興を頼まれたときの話。台本を見てあまりに内容がふざけていたので、怒り狂った。</p>
<p class="bodytxt">「いやらしい美女が落語家に寄り添い遊ぶ」という、どんな内容かはもう忘れてしまったが、落語とエロを一緒にする内容だった。AVと鉄棒をやっていた落語家がなにを言うかであるが、着物姿でエロをやることが嫌だった。</p>
<p class="bodytxt">立川企画の社長に「現場には行かない」と電話で伝えた。社長は「来てもらわんと困る」と怒った。怒ったって駄目だ。</p>
<p class="bodytxt">「私はこのまま数日姿をくらますから探しても無駄だ」</p>
<p class="bodytxt">と言って電話をきった。</p>
<p class="bodytxt">社長は仕方なく、「志らくが病気で倒れて入院をした」と先方に伝えたそうな。</p>
<p class="bodytxt">「志らく緊急入院」に私の驚いた弟子が我が家に駆けつけたが、「仕事に行きたくなかっただけだ」と言った私に、彼らはたぶん談志を重ね合わせたに違いない。</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/2.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Wed, 28 Jul 2010 17:20:03 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>立川流鎖国論(1)　志らく伝説・上</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt"><span style="color: #0000ff;">【登場人物】</span></p>
<table class="bodytxt" style="color:blue;" border="0">
<tbody>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●立川談志&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流家元、志らくの師匠</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●快楽亭ブラック&hellip;&hellip;</td>
<td>元・落語立川流真打ち、元・志らくの兄弟子</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●立川志の輔&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流真打ち、志らくの兄弟子</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●立川談春&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流真打ち、志らくの兄弟子</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●立川談笑&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流真打ち、志らくの弟弟子</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●柳家一琴&hellip;&hellip;</td>
<td>落語協会真打ち、柳家小三治の弟子。志らく演出・監督の芝居にたびたび出演</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●立川志らく&hellip;&hellip;</td>
<td>落語立川流真打ち、私</td>
</tr>
<tr valign="top">
<td style="white-space: nowrap;">●落語立川流&hellip;&hellip;</td>
<td>立川談志が落語協会を脱会して設立。脱会によって寄席には出演できなくなり、独演会や一門会のみで活動することになった。脱会直前に弟子となったのが志の輔、脱会後に弟子になったのが談春、志らく、談笑。「寄席を知らない弟子たち」と呼ばれることもあり、それがタイトルの「立川流鎖国論」の由来。</td>
</tr>
</tbody>
</table>
<p>&nbsp;</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">〜特異な落語家集団〜</span></p>
<p class="bodytxt">　落語家生活25周年。とにかく師匠である談志の生きざまをみながら、影響されまくり、自分も談志と同じような落語家になれるのではないかと思い、持ったが病で映画監督をし、演劇の世界に飛び込み、試行錯誤しながら、もがきまくってきた25年である。</p>
<p class="bodytxt">　普通、弟子は談志の弟子になった時点で談志のものすごさに恐れおののいて、到底自分の才能ではあんなすさまじい落語家になれるはずもないとあきらめるか、あるいは志の輔兄さんや談笑のように、まったく違うアプローチから「談志超え」に挑むかのどちらかである。</p>
<p class="bodytxt">　それを真っ向から、つまり談志の落語に対する了見の部分で談志にぶつかっていったのが志らくであり、古典落語の美学の部分でぶつかっていったというか、うまいこといただいた、では語弊があるかもしれないが、談志のテクニックを見事に吸収して持てはやされたのが談春兄さんということになる。</p>
<p class="bodytxt">　まあ、志らく・談春の二人は怖いもの知らずの大馬鹿野郎か、あるいはとてつもない天才であろう。私の場合は、時には談志から「似たような価値観を持っている」と評され、時には「落語をなめている」と叱られ、「この下手くそめ」とののしられ、「でも才能だけならば落語家の中ではこいつが一番」と褒めたたえられ、その言葉を信じ、喜んで方々に吹聴しまくり、我こそが談志イズムの継承者だと自負し、多くの敵をこしらえつつも数多くの文化人に愛されてきた。</p>
<p class="bodytxt">　何が言いたいのかというと、談志の幻影に狂った立川志らくという落語家が、日ごろなにを考えているのかを、それは落語論とかではなく、落語論は新潮社で出版しているからそちらを読んでね、とちゃっかり他社の宣伝をしつつ、つまりそれらをまとめて徒然なるままに書きなぐれば、もしかしたら立川流という特異な落語家集団の、というか世間からみたらそれは新興宗教に近いだろうが、鎖国的考えが見られるのではないかと。</p>
<p class="bodytxt">　そう、「傑出した文化は鎖国から生まれる」という理論からすると、一時の立川流は間違いなく鎖国社会であり、だからこそ志の輔、談春、志らく、談笑といったタイプの違う落語家が誕生したのである。そのことを論理的にではなく、総合的に私の雑記から読みとってもらえばいいと願いつつ、愚かしいことこのうえないが、脈絡もなく書きつづることにする。</p>
<p class="bodytxt">　題して「志らくの立川流鎖国論」&hellip;&hellip;「論理的じゃない」と言いながらもタイトルに論をいれる厚顔無恥をどうぞ笑い飛ばしてくんなまし。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">〜電波芸者の下品さ〜</span></p>
<p class="bodytxt">　自分に伝説があるはずもなく、またあったとしても自らの口から言えばそれは伝説ではなく、ただの自慢話になってしまうし、チェーホフの言葉ではないが、善き人は犬の前ですら恥ずかしさを感ずるもので、よくもまあ、いけしゃあしゃあと「志らく伝説」なんて銘打つもんだ。</p>
<p class="bodytxt">　ただこうやってテレているあたりがまだ救いがあり、最近の芸能人の何が嫌かというと、テレがない輩のなんと多いことか。まあ芸能人と呼ばれている大半は電波芸者であり、世間様にさからわず、ただ煽るだけで、例えば、サッカーワールドカップの監督の岡ちゃん。負けている時はボロクソで辞めちゃえコール連発、それがひとたび勝利するやいなや、英雄に祭りたてる。</p>
<p class="bodytxt">　ワイドショーのコメンテーターの「長いものにはまかれろ的」態度は、人間らしいと言えば確かにそうだが、品がないことおびただしい。</p>
<p class="bodytxt">　話を戻すと、先日、とあるテレビ番組で芸能人の私服やバッグの値段ランキングなるものを発表していたが、下品の一言だ。</p>
<p class="bodytxt">　私服に何十万かけていますだの、エルメスのバッグで何百万だの、それを恥ずかし気もなく鼻高々に自慢している。芸人ならば、お洒落である必要はあるが、値段は口外すべきではない。</p>
<p class="bodytxt">　芸人の基本はテレである。これがない芸人の芸なんぞ、なにが楽しいものか。このテレが哀愁に変化して魅力的な芸人になるのだ。渥美清が私服に何百万もかけているなんてテレビで言うか？</p>
<p class="bodytxt">　談志がイトーヨーカ堂のジャケットを着ていたらばルイ・ヴィトンに見え、セコな噺家がルイ・ヴィトンのジャケットを着たならばイトーヨーカ堂に見えるだけのことだ。</p>
<p style="text-align: center;"><span class="bodytxt"><span style="color: #0000ff;">〜敵をこしらえる生き方〜</span></span></p>
<p class="bodytxt">　ちっとも話が元に戻らない。私の伝説であった。</p>
<p class="bodytxt">　立川志らくという芸人は、普段はおとなしい人間なのだが、嫌なことは絶対に嫌という性格で、また若き日に談志から「落語家は馬鹿ばかりだからお前だけは馬鹿になるな」と教育されてしまった環境も合わさり、落語家とは基本付き合わないことにしている。</p>
<p class="bodytxt">　売れている落語家としか付き合わない。柳家一琴（やなぎやいっきん）がいたか。あいつとは腐れ縁。弟弟子（おとうどでし）の柳家三三（やなぎやさんざ）が売れてきたのだから頼むよ、もう少し売れてくれよ、一琴。他の落語家が経験できない経験をたくさんしてきたではないか。向田邦子の「あ・うん」の主演までやったのだぞ。もっと自信をもって生きてくれ、って一琴にエールを送っている場合ではない。</p>
<p class="bodytxt">　売れている落語家としか付き合わないという話だ。こんな生き方をしているから多くの敵をこしらえる。兄弟子にも嫌われる。でもかまわない。尊敬している人から愛されれば、どうでもいい人から嫌われたってかまわない。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">〜悪魔の子〜</span></p>
<p class="bodytxt">　とにかく好き嫌いは実にはっきりとしている。ならば竹を割ったような男らしい人間かというとこれがまったく違うから面白い。どちらかというと藤子不二雄の『魔太郎が来る!!』の魔太郎みたいな性格である。いじいじしていて愚痴っぽく、嫉妬（しっと）深く、怨（うら）みをはらさでおくべきかといったところがある。</p>
<p class="bodytxt">　実際、人を呪（のろ）う力まである。現在の妻と交際し始めたころ、妻を追いかけ回していた男がいた。その存在を知った私は彼を呪った。すると一週間後、彼は交通事故で死んでしまった。たまたまだと思うだろうが、妻と同棲を始めたときに妻に言い寄ってきた男がいた。電話で男と喧嘩もした。私は頭にきて、今度は死なない程度に呪ってやった。すると数日後、男は病気になり記憶喪失になってしまった。</p>
<p class="bodytxt">　私の監督した映画作品を立川キウイの落語よりひどいと評し、高座でのべつ私の悪口をいい、私が前妻と別れた状況をからかった新作落語『志らくの子別れ』を演じた快楽亭ブラックさんは、自らが書いた脚本の映画撮影の際、怪我をして救急車で運ばれ、そのときに「これは志らくの呪いだ！」と叫んだそうだ。ブラックさんを呪ったことはないけど、現在彼は借金問題で立川流からか除名されてしまっている。</p>
<p class="bodytxt">　　</p>
<p class="bodytxt">　妻は私のこの力を目の当たりにしているので、私をなるべく怒らせないようにしている。以前、歩道で無礼な自転車運転をする若者がいたので、かたわらにいた妻にその不満を訴え、一言小声で「自転車は車道を走れ！」とつぶやくと、前を走っていた7台の自転車がいっせいに車道に飛び出していった。中に、おじいさんが運転していた自転車まであった。あのときの妻の驚きようといったらなかった。</p>
<p class="bodytxt">　実は私のそばにやたらと烏が集まってくる。犬や猫も真っ黒なやつがやたらと私になつく。我が家の電化製品は私が触ると片っ端から壊れる。時折自分は悪魔の子なのかと思うこともある。ただ心は天使。だから怖がらないでね、って何を言っているんだ志らく！</p>
<p class="bodytxt">　頭がおかしい。まあ、談志から「あと10年で志らくは談志同様に狂う」と言われたのだからこの程度の妄想は序の口。数年前、チャップリンが私の枕元に立ち、「しばらく君の身体に入るよ」と言ってきたことがあった。それ以来、チャップリンに似ていると人に言われる。</p>
<p class="bodytxt">　歌手の森口博子さんが一度もチャップリンの映画を見たことがないと言っていたので、「ならば『街の灯』をご覧」と勧めた。するとそれを見た彼女が最初に言った言葉が「チャップリンと志らくさん、表情が似ているというか同じ。『街の灯』を見ている間、チャップリンが志らくさんに見えて仕方がなかった」。</p>
<p class="bodytxt">　私が座長をつとめる劇団で『あ・うん』の芝居をしたときも、かなりの客に「志らくがチャップリンに見えた」と言われた。妄想は終わり。</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/1.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Tue, 20 Jul 2010 11:51:04 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>談志の教え（２）　談志の価値観</title>
            <description><![CDATA[<p>&nbsp;</p>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;FONT color="blue"&gt;【登場人物】</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">●立川談志&hellip;&hellip;落語立川流家元、志らくの師匠</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">●立川志らく（前座名・志らく）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、私&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;DIV align="center"&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;FONT color="blue"&gt;～「談志の価値観」でつまずく弟子～&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;/DIV&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">立川流には前座から二つ目、二つ目から真打ちにあがるのに、昇進基準というものがある。ほかの協会場合、基本は年功順。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">立川流は、二つ目への昇進基準は、「落語五十席、歌舞音曲（かぶおんぎょく）、講談の修羅場（しゅらば）、寄席の太鼓」。真打ちへの昇進基準は、「落語百席、歌舞音曲、客を呼べるメディア、談志の認める価値観」。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">明文化されているわけではないので、弟子によって解釈の違いはあるだろうが、私はこう受け止めている。多くの弟子は「談志の価値観」でつまずく。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">私にも弟子がいるが、彼らにも同じ基準を課している。しかし、どこの世界でも同じだが、やらない奴（やつ）は本当に何もやらない。自分ではそこそこやっているつもりだろうが、例えば、当人のやっている量を200ccのコップだとすると、私の希望している量は50メートルのプールなのである。本当は琵琶湖（びわこ）ほどやっていただきたいのだが、常識の範囲でプールだと考えている。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">しかし連中はコップなのだ。そのコップの八分目あたりまでやるともう満足してしまい、たまにコップからあふれると、俺もずいぶん努力したなぁと満足してしまう。プールを求める私を弟子は「師匠は天才だから」と歯牙（しが）にもかけない。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">私は落語以外に時折、演劇をやる。そのときは、自ら脚本を書き、演出をし、主演をするので、テンションがあがりすぎて、狂ったような状態になる。弟子は演劇の時期が近づいてくると「おいおい、勘弁してほしいよ。また芝居だよ」と困り果てる。さらに、「師匠が芝居を始めると、落語の稽古（けいこ）をする時間がなくなっちゃうんだよね」とこぼす。普段200ccしか稽古をしないやつが、おそらく80ccしか稽古ができなくなるからそう嘆くのだろうが、お笑い種（ぐさ）だ。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">200ccの落語の稽古より、演劇の稽古を勉強しているほうが自分のためになるはずだ。師匠が役者につける演出を聴き、師匠や役者がどう進化していくかを必死に見ていれば、それがかならずや自分の芸に生きてくるはずだ。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">極端な話、演劇の台本を全部覚え、すべての役者の動きを頭にいれ、稽古でその役者が休んだときは、「あっしにおまかせを」と代役をやり、どの役者よりうまく演じ、本番、その役者が事故にあうことを祈るぐらいでないと駄目だ。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;DIV align="center"&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;FONT color="blue"&gt;～師匠に興味がない弟子～&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;/DIV&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">日本舞踊の稽古をお師匠さんに習っている弟子が、そのお師匠さんがあまりに厳しいからと愚痴をこぼしていた。それを他の弟子が「お前、踊りの名取になるわけじゃないんだろ？　二つ目になるためにやっているんだから、ほどほどでいいんだよ」とアドバイスしていた。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">確かに二つ目になるためには、踊りをやらなくてはいけない。でも目的はなんであるのか。二つ目になるためではなく、良い芸人になるためではないのか。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">談志は、</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">「落語家になったのだから、歌舞音曲が好きなはずだ。こういったものを好きになれないのならば、落語家には向いていないということだ」</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">と言った。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">不思議だなぁ。私は談志の弟子になった時、師匠がほれている世界のものは全部体験してみたいと思ったのに。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">師匠が好きな映画は、全部観たかった。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">師匠がナツメロに狂喜していたの見て、自分も同じように楽しみたいと思った。私の弟子も含めて、大半の弟子は師匠の命令だから仕方なく踊りをやり、師匠が酔っ払うとすぐにナツメロを聴きたがるから、「おいおい、またナツメロだよ」と面倒臭そうにCDをかける。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">師匠と一緒にナツメロを楽しもうなんて気持ちはまったくない。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">談志に、弟子の志らくが言った最高の言葉がある。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">「映画とナツメロに興味のない奴は談志の弟子である資格がありません」</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">私の弟子にも、まったくあてはまる言葉だ。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">駄目な弟子は、つまりは師匠に興味がないのである。もともとはあったのだが、この空間に慣れてしまい、他に興味がいってしまったのだろう。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;DIV align="center"&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;FONT color="blue"&gt;～「談志復活の日」に思ったこと～&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;/DIV&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">2010年4月13日、半年以上休養中だった談志が復活した。場所は紀伊國屋ホール。『談志 最後の落語論』の出版記念の会であった。客は本を購入した者の中から抽選で選ばれた。客席は殺伐としていた。久しぶりの談志である。当然、客席も緊張するのであるが、客が全員抽選ということは、単独の客だけということだ。開演前に友達同士でおしゃべりということがない状況。そりゃあ、殺伐としますわね。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">談修が前座をつとめ、私と談春が一席ずつ演じ、師匠をはさんでのトーク、最後に談志が一席、という構成だった。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">志らくは『茶の湯』。狂ったギャグ連発の談志イリュージョン落語をひきつぐ落語である。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">自分でよくもまあ、ひきつぐなんて言うね！</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">談春は『庖丁』。当代一のテクニック。若き日の談志を彷彿（ほうふつ）させる迫力。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">ほめすぎです！</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">談志はイリュージョン落語の完成形ともいえる導入部から『首提灯（くびぢょうちん）』。声はほとんど出ず、往年の談志の姿はどこにもなかったが、客も弟子もこの瞬間に立ち会えたことに感動していた。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">しかしだ。楽屋に弟子がほとんど来ていなかったのだ。若い弟子は駆け付けたが、古株の弟子が来ていない。当日、立川流の定席があったという影響もあるのだが、さびしい光景であった。それよりなにより、その日に談志が復活をしたことすら知らなかった弟子がいたのには驚いた。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">談志が元気なころだったら、談志が高座にあがっているとき、楽屋にいる弟子はみな、舞台袖に張り付いて師匠の芸を勉強していると思うでしょ？　それが違うのだ。もちろん、くらいついている弟子もいるが、中には楽屋に戻ってお菓子を食べたり、駄話に花を咲かせている者もいるのである。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">「兄さん、師匠の落語を聞かないんですか？」</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">「どうせ、『二人旅』だろ？　さんざん聴いたからもういいよ」</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">これが現実である。談志のその時の高座はその時だけなのに、「さんざん聴いたからもういいよ」と平然と答える愚かさ。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">談志が高座にあがった途端、慌てて楽屋に戻って弁当を食べている前座がいた。芸人として向いていません。師匠の落語より弁当の方が大事だと思う感覚は、落語家として何かが麻痺（まひ）している。そんな連中が語ると落語が腐る。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">私が落語をやっているときも、弟子の多くは駄話で盛り上がっていることであろう。私がにらんだところでは、前座のらく兵は、馬鹿の仲間になるまいと連中を無視しているはずである。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;FONT color="blue"&gt;&lt;DIV align="center"&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">～「馬鹿になりたくない」～</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">&lt;/DIV&gt;&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">落語界、それも立川流という閉じられた空間に入ったからには、それ相当の覚悟が必要だ。どこにでも馬鹿はいる。しかし、閉じられた特殊空間にいる馬鹿ほど怖いものはない。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">馬鹿と群れた方が楽だ。でも自分がなんのためにその世界に来たのかを考えたら、楽な方を選ばず、初心を貫き通さないと、あっという間に、自分の目的も存在意義も見失うのである。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; left: -10000px; top: 0px; width: 1px; height: 1px; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden;">談志が落語協会から飛び出したのにはいろいろ理由はあったが、とどのつまりが「馬鹿になりたくない」であったと私はとらえている。</div>
<p class="bodytxt"><span style="color: #0000ff;">【登場人物】<br />●立川談志&hellip;&hellip;落語立川流家元、志らくの師匠<br />●立川志らく（前座名・志らく）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、私</span></p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～「談志の価値観」でつまずく弟子～</span></p>
<p class="bodytxt">立川流には前座から二つ目、二つ目から真打ちにあがるのに、昇進基準というものがある。ほかの協会場合、基本は年功順。<br />立川流は、二つ目への昇進基準は、「落語五十席、歌舞音曲（かぶおんぎょく）、講談の修羅場（しゅらば）、寄席の太鼓」。真打ちへの昇進基準は、「落語百席、歌舞音曲、客を呼べるメディア、談志の認める価値観」。<br />明文化されているわけではないので、弟子によって解釈の違いはあるだろうが、私はこう受け止めている。多くの弟子は「談志の価値観」でつまずく。</p>
<p class="bodytxt">私にも弟子がいるが、彼らにも同じ基準を課している。しかし、どこの世界でも同じだが、やらない奴（やつ）は本当に何もやらない。自分ではそこそこやっているつもりだろうが、例えば、当人のやっている量を200ccのコップだとすると、私の希望している量は50メートルのプールなのである。本当は琵琶湖（びわこ）ほどやっていただきたいのだが、常識の範囲でプールだと考えている。<br />しかし連中はコップなのだ。そのコップの八分目あたりまでやるともう満足してしまい、たまにコップからあふれると、俺もずいぶん努力したなぁと満足してしまう。プールを求める私を弟子は「師匠は天才だから」と歯牙（しが）にもかけない。</p>
<p class="bodytxt">私は落語以外に時折、演劇をやる。そのときは、自ら脚本を書き、演出をし、主演をするので、テンションがあがりすぎて、狂ったような状態になる。弟子は演劇の時期が近づいてくると「おいおい、勘弁してほしいよ。また芝居だよ」と困り果てる。さらに、「師匠が芝居を始めると、落語の稽古（けいこ）をする時間がなくなっちゃうんだよね」とこぼす。普段200ccしか稽古をしないやつが、おそらく80ccしか稽古ができなくなるからそう嘆くのだろうが、お笑い種（ぐさ）だ。<br />200ccの落語の稽古より、演劇の稽古を勉強しているほうが自分のためになるはずだ。師匠が役者につける演出を聴き、師匠や役者がどう進化していくかを必死に見ていれば、それがかならずや自分の芸に生きてくるはずだ。<br />極端な話、演劇の台本を全部覚え、すべての役者の動きを頭にいれ、稽古でその役者が休んだときは、「あっしにおまかせを」と代役をやり、どの役者よりうまく演じ、本番、その役者が事故にあうことを祈るぐらいでないと駄目だ。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～師匠に興味がない弟子～</span></p>
<p class="bodytxt">日本舞踊の稽古をお師匠さんに習っている弟子が、そのお師匠さんがあまりに厳しいからと愚痴をこぼしていた。それを他の弟子が「お前、踊りの名取になるわけじゃないんだろ？　二つ目になるためにやっているんだから、ほどほどでいいんだよ」とアドバイスしていた。<br />確かに二つ目になるためには、踊りをやらなくてはいけない。でも目的はなんであるのか。二つ目になるためではなく、良い芸人になるためではないのか。<br />談志は、<br />「落語家になったのだから、歌舞音曲が好きなはずだ。こういったものを好きになれないのならば、落語家には向いていないということだ」<br />と言った。</p>
<p class="bodytxt">不思議だなぁ。私は談志の弟子になった時、師匠がほれている世界のものは全部体験してみたいと思ったのに。<br />師匠が好きな映画は、全部観たかった。<br />師匠がナツメロに狂喜していたの見て、自分も同じように楽しみたいと思った。私の弟子も含めて、大半の弟子は師匠の命令だから仕方なく踊りをやり、師匠が酔っ払うとすぐにナツメロを聴きたがるから、「おいおい、またナツメロだよ」と面倒臭そうにCDをかける。<br />師匠と一緒にナツメロを楽しもうなんて気持ちはまったくない。</p>
<p class="bodytxt">談志に、弟子の志らくが言った最高の言葉がある。<br />「映画とナツメロに興味のない奴は談志の弟子である資格がありません」<br />私の弟子にも、まったくあてはまる言葉だ。</p>
<p class="bodytxt">駄目な弟子は、つまりは師匠に興味がないのである。もともとはあったのだが、この空間に慣れてしまい、他に興味がいってしまったのだろう。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～「談志復活の日」に思ったこと～</span></p>
<p class="bodytxt">2010年4月13日、半年以上休養中だった談志が復活した。場所は紀伊國屋ホール。『談志 最後の落語論』の出版記念の会であった。客は本を購入した者の中から抽選で選ばれた。客席は殺伐としていた。久しぶりの談志である。当然、客席も緊張するのであるが、客が全員抽選ということは、単独の客だけということだ。開演前に友達同士でおしゃべりということがない状況。そりゃあ、殺伐としますわね。<br />談修が前座をつとめ、私と談春が一席ずつ演じ、師匠をはさんでのトーク、最後に談志が一席、という構成だった。<br />志らくは『茶の湯』。狂ったギャグ連発の談志イリュージョン落語をひきつぐ落語である。<br />自分でよくもまあ、ひきつぐなんて言うね！<br />談春は『庖丁』。当代一のテクニック。若き日の談志を彷彿（ほうふつ）させる迫力。<br />ほめすぎです！<br />談志はイリュージョン落語の完成形ともいえる導入部から『首提灯（くびぢょうちん）』。声はほとんど出ず、往年の談志の姿はどこにもなかったが、客も弟子もこの瞬間に立ち会えたことに感動していた。<br />しかしだ。楽屋に弟子がほとんど来ていなかったのだ。若い弟子は駆け付けたが、古株の弟子が来ていない。当日、立川流の定席があったという影響もあるのだが、さびしい光景であった。それよりなにより、その日に談志が復活をしたことすら知らなかった弟子がいたのには驚いた。</p>
<p class="bodytxt">談志が元気なころだったら、談志が高座にあがっているとき、楽屋にいる弟子はみな、舞台袖に張り付いて師匠の芸を勉強していると思うでしょ？　それが違うのだ。もちろん、くらいついている弟子もいるが、中には楽屋に戻ってお菓子を食べたり、駄話に花を咲かせている者もいるのである。<br />「兄さん、師匠の落語を聞かないんですか？」<br />「どうせ、『二人旅』だろ？　さんざん聴いたからもういいよ」</p>
<p class="bodytxt">これが現実である。談志のその時の高座はその時だけなのに、「さんざん聴いたからもういいよ」と平然と答える愚かさ。<br />談志が高座にあがった途端、慌てて楽屋に戻って弁当を食べている前座がいた。芸人として向いていません。師匠の落語より弁当の方が大事だと思う感覚は、落語家として何かが麻痺（まひ）している。そんな連中が語ると落語が腐る。<br />私が落語をやっているときも、弟子の多くは駄話で盛り上がっていることであろう。私がにらんだところでは、前座のらく兵は、馬鹿の仲間になるまいと連中を無視しているはずである。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～「馬鹿になりたくない」～</span></p>
<p class="bodytxt">落語界、それも立川流という閉じられた空間に入ったからには、それ相当の覚悟が必要だ。どこにでも馬鹿はいる。しかし、閉じられた特殊空間にいる馬鹿ほど怖いものはない。<br />馬鹿と群れた方が楽だ。でも自分がなんのためにその世界に来たのかを考えたら、楽な方を選ばず、初心を貫き通さないと、あっという間に、自分の目的も存在意義も見失うのである。</p>
<p class="bodytxt">談志が落語協会から飛び出したのにはいろいろ理由はあったが、とどのつまりが「馬鹿になりたくない」であったと私はとらえている。</p>
<p>&nbsp;</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-87.html</link>
            <guid>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-87.html</guid>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Wed, 26 May 2010 08:14:40 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>談志の教え(1) ミュージカル</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt"><span style="color: #0000ff;">【登場人物】<br />●立川談志&hellip;&hellip;落語立川流家元、志らくの師匠<br />●立川志らく（前座名・志らく）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、私</span></p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～ミュージカル好きの談志～</span></p>
<p class="bodytxt">師匠の影響でミュージカル映画を観るようになった。それまでは映画マニアではあったが、ミュージカルは苦手だった。何しろ最初に観たミュージカルが「サウンド・オブ・ミュージック」なんだもの。不自然な映画で、なんだこりゃと子供心に笑ったものだ。<br /> 歌嫌いなおやじが女中に惚（ほ）れてしまい、いきなり「エーデルワイス」を歌いながら口説く場面の間抜けさときたらない。なんだ、歌好きなんじゃないか！　<br /> その後観たのが「ウェストサイド物語」。いずれもロバート・ワイズ監督の名作。今観るとなぜ名作なのかはわかるが、当時の私にはこれらの世界が滑稽（こっけい）に見えてならなかった。ジョージ・チャッキリスがチンピラのくせに、バレーダンサーみたいに足をあげて道端で踊ってやがる。変質者かと思った。<br /> 談志の弟子になって、師匠がミュージカル好きだと知り、それでようやく本物のミュージカルに出会えた。「雨に唄えば」「イースター・パレード」「ショウ・ボート」「巴里（パリ）のアメリカ人」、みな談志に教わったミュージカル映画だ。まさに夢の世界。街中でいきなり歌ったり踊ったり、が不自然な感じがない。<br /> 「サウンド・オブ・ミュージック」との違いは、粋（いき）さである。「サウンド・オブ・ミュージック」も楽しい世界ではあるが野暮（やぼ）なのだ。落語も同じで、客には人気があり大いに面白いが、まったくこちら側からすると評価の対象にすらならないという落語家がいる。野暮だから嫌なのだ。<br /> 誰？　言わないよ。喧嘩（けんか）になるから。<br /> 以前、『全身落語家読本』という自著で、落語家を乗り物にたとえた。談志が新幹線で志ん朝師匠がブルートレイン。時代遅れの落語家を駕籠屋（かごや）。小さん師匠のことを愛情を込めてＳＬ。すると、ある先輩落語家が激怒して、談志に向かって、<br /> 「志らくが小さん師匠の悪口を言いやがった。殴っていいですか」<br /> と言った。すると談志は、<br /> 「好きにしなよ」<br /> あららら。以来、その落語家との遭遇を避けているが、あるとき、とうとう同じ落語会に出演する事態に陥った。私がトリでその人が中トリ。年季から言えば私が中トリのはずなのだが、私の都合でそのような順番になってしまった。ただでさえ「殴ってやる」と息巻いているところに、志らくにトリのポジションまで奪われたら、これは何をされるかわかったもんじゃないと、私は恐怖におののいた。<br /> で、どうしたかというと、その先輩が高座にあがっているときに会場入りをして、その様子をモニターで見て、彼が落語を終え、帰ったところを見計らって、ゆうゆう楽屋入りをしたのでした。だらしがないね。<br /> なんの話だ？　ミュージカルだった。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～談志が号泣した夜～</span></p>
<p class="bodytxt">粋なミュージカルは、雨の中で踊ろうが、恋の告白のときに歌おうがまったく変じゃない。感情のデフォルメである。そして優れたミュージカルはとにかく楽しい。<br /> ロバート・ワイズは確かに映画史に残る傑作ミュージカルをこしらえたが、ミュージカルに悲劇や思想を入れてしまった。「ウェストサイド物語」は「ロミオとジュリエット」がベースであり、「サウンド・オブ・ミュージック」は戦争批判である。よって、これ以降のミュージカル映画はみなその形が主流になり、夢の世界のミュージカルは崩壊したのである。<br /> もうひとつ付け加えると、ミュージカル映画の主役は、人間ワザと思えないくらいの素敵なダンスを見せてくれる。<br /> ミュージカル舞台のヒット作品「マンマ・ミーア！」が映画化されたが、昔ながらの楽しいミュージカルではあったが、いただけないのがメリル・ストリープのダンスだ。彼女にしたら頑張っている方だよ、と人はいうが、「頑張っている」ダンスなんて見せられたらたまらない。<br /> 藤原紀香がミュージカルに挑戦！　なんてことが話題になったことがあるが、挑戦なんてしないでいただきたい。踊れないやつはミュージカルをやるな、である。<br /> <br /> ミュージカル映画の最高傑作「雨に唄えば」の最大の欠点は、ヒロインのデビー・レイノルズのダンスが主役のジーン・ケリーと釣り合わないことである。私はデビー・レイノルズの大ファンではあるが、あの役をジュディ・ガーランドが演じたらすごいことになっていたと思う。しかし、映画としてはデビーの可憐（かれん）さが効果的で、彼女が踊れない分、後半にシド・チャリッシが見事に踊ってバランスをとってくれている。いつの間にかミュージカル談義になってしまいました。<br /> <br /> 談志が一番好きなミュージカルスターはフレッド・アステア。アステアが亡くなった晩、師匠は号泣（ごうきゅう）した。飲み屋でヘベレケに酔っぱらって、「アステアが死んじゃったよぉ」と泣いていた。　泣きながら帰りの車に乗り込む師匠の足取りが、かすかにタップを踏んでいたのを私は見た。そのことに気が付いたのが私だけというのが、ちょっこっと誇らしいのです。</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/1-2.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Mon, 17 May 2010 17:47:31 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>談志伝説</title>
            <description><![CDATA[<p>&nbsp;</p>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">&lt;FONT color="blue"&gt;【登場人物】</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">●立川談志&hellip;&hellip;落語立川流家元、志らくの師匠</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">●高田文夫&hellip;&hellip;放送作家。落語立川流Bコース（有名人コース）の真打ちで、立川藤志楼（たてかわとうしろう）として高座にも上がる。志らくを談志に紹介してくれた恩人でもある。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">●立川談春（前座名・談春）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、志らくの兄弟子</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">●立川志らく（前座名・志らく）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、私&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">師匠談志とのエピソードは山ほどあるが、よく私が高座でしゃべるのは、かなり脚色してあって、中にはまったくの創作もあり、今となっては何が事実で何が本当なのかもわからなくなってしまった。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">&lt;FONT color="blue"&gt;～骨壷と女～&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">例えば骨壺（こつつぼ）事件。談春兄さんもこの話を方々でするが、私の記憶だと私しかその場所にいなかった気がする。談春兄さんはかたくなに「俺もいたぞ」と言うし、驚いたのは談幸兄さんまでもが「それは俺が体験したことだ」とおっしゃっている。私も記憶が曖昧（あいまい）で、談幸兄さんのエピソードど自分のエピソードを混ぜ合わせてひとつの話を作り上げたのか？　いや、確かにあの女は来た。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">覚えている限り事実を申し上げると、私がまだ前座のころ。夜、師匠宅に幸薄そうな女性が訪ねてきた。百万円払うから談志の『鼠穴（ねずみあな）』をさしで聴きたいとのこと。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">師匠は「いい了見（りょうけん）だ」と了解して着物に着替えた。しかし落語をやる段になって女の様子がおかしい。大事そうに風呂敷（うろしき）包みを抱えている。談志が「それはなんだい」と尋ねると、母親の遺骨だと言う。「母は生前、談志の『鼠穴』が大好きだった」そうで、冥土（めいど）の土産に聞かせてあげたいとのこと。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">談志はしばし考え、おもむろに口を開いた。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">「あんた、噺（はなし）を聞いたら死のうと思っているんじゃないか？」</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">女は黙りこんでしまった。師匠は、</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">「そういうつもりならば落語をやるわけにはいかないよ」</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">そう言ってお金を返した。女は骨壺を抱えたまま消えていった。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">とまあ、こんな話である。ただし、師匠と女の会話は聞いていない。たぶん、師匠から聞いたのか、あるいはこちらの想像か。「骨壺をもってやがったぞ」という言葉は間違いなく師匠から聞いたから、まあ、二人の会話も師匠から聞いたのだろう。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">これ以外のことはすべて創作だ。たとえば、その後石神井警察署から「骨壺女を保護してます」という電話があったという。なぜ、師匠のところに電話がかかってきたかというと、骨壺に談志のサインがしてあった云々（うんぬん）。そんなわけがない。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">&lt;FONT color="blue"&gt;～麻薬犬～&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">師匠を成田空港まで迎えに行った際、税関から出てきた談志がポケットからラップにくるんだくさやの干物を取り出した。「飛行機の中でこれで一杯やっていたんだ」と談志。たまたまその横を麻薬犬が通りすぎた。ただそれだけのこと。でも、「もしこの麻薬犬が師匠をかんだら面白いな」と想像した。　怪しい匂いがするからと麻薬犬が談志をかむ。麻薬捜査官が調べると、ポケットからくさやの干物が出てきた&hellip;&hellip;。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">この話を高田文夫先生にするとバカウケ。「志らくの談志師匠の話は本当に面白いな」と褒められた。先生がプロデュースした深夜のバラェティ番組「たまにはキンゴロー」に私が出演したときは、私の肩書きが「談志王」であったくらいだ。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">後日、とある深夜番組を見て驚いた。その麻薬犬の話を高田先生がビートたけしさんにしゃべっているではないか。驚きはこれで終わらない。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">とある週刊誌を読んでいたら、「噂」というコーナーで、「談志が成田空港で麻薬犬にかまれたらしい。しかし出てきたのはくさやだった」と書かれていた。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">&lt;FONT color="blue"&gt;～ロリコン～&lt;/FONT&gt;</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">師匠談志は、芸能人の名前をいい加減に覚えていることがあり、例えば松村邦洋を「村松」。何べん言っても彼を「村松」と呼んでいる。以前、車だん吉を「タンク団吉」と言ったことがあって、こりゃ面白いと舞台でしゃべろうとしたら、今度は私が「タンク団吉」が出てこず、言うにことかいて、「爆発五郎」と言ってしまった。するとそれが受けて、以来、ずっと爆発五郎で通している。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">なぎら健壱の名前も出てこなかったことがあるので、師匠ならばなんと間違えるか想像して、「兜三平」。めちゃくちゃだ。それを植木等さんの番組で師匠がゲストに呼ばれた際に、師匠の紹介の前フリということで、私と談春とでそのネタをやったらば、植木さんが驚いて、</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">「談志さん、弟子の今の話は本当なんですか」</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">と聞いた。師匠は冷静に、</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">「全部ウソです」</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">と答えた。そりゃそう言いますよね。師匠の前でやるやつもないもんだ。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">「師匠はロリコンなんです」という話を談志の会の開口一番にやっていたら、師匠に雪駄（せった）を投げつけられたこともある。高座にいる私の後頭部を何かがこすった。「なんだろう」と舞台そでを見ると、ものを投げた直後の形をした師匠がそこにいたのでした。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">師匠は立川流を設立した際、弟子から上納金をとるようになったが、その理由のひとつに、「弟子は俺の話題で飯を食ってやがる。金を払って当然だ」というのがあるのだが、しごくもっともな話でございます。</div>
<div id="_mcePaste" class="bodytxt" style="position: absolute; overflow-x: hidden; overflow-y: hidden; width: 1px; height: 1px; top: 0px; left: -10000px;">ただ他の弟子は、「談志はケチ」だとか、「怖い」とかばかりなので、私の方が数段、師匠孝行です&hellip;&hellip;本当かね。</div>
<p class="bodytxt"><span style="color: #0000ff;">【登場人物】<br />●立川談志&hellip;&hellip;落語立川流家元、志らくの師匠<br />●高田文夫&hellip;&hellip;放送作家。落語立川流Bコース（有名人コース）の真打ちで、立川藤志楼（たてかわとうしろう）として高座にも上がる。志らくを談志に紹介してくれた恩人でもある。<br />●立川談春（前座名・談春）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br />●立川志らく（前座名・志らく）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、私</span></p>
<p class="bodytxt">師匠談志とのエピソードは山ほどあるが、よく私が高座でしゃべるのは、かなり脚色してあって、中にはまったくの創作もあり、今となっては何が事実で何が本当なのかもわからなくなってしまった。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～骨壷と女～</span></p>
<p class="bodytxt">例えば骨壺（こつつぼ）事件。談春兄さんもこの話を方々でするが、私の記憶だと私しかその場所にいなかった気がする。談春兄さんはかたくなに「俺もいたぞ」と言うし、驚いたのは談幸兄さんまでもが「それは俺が体験したことだ」とおっしゃっている。私も記憶が曖昧（あいまい）で、談幸兄さんのエピソードど自分のエピソードを混ぜ合わせてひとつの話を作り上げたのか？　いや、確かにあの女は来た。</p>
<p class="bodytxt">覚えている限り事実を申し上げると、私がまだ前座のころ。夜、師匠宅に幸薄そうな女性が訪ねてきた。百万円払うから談志の『鼠穴（ねずみあな）』をさしで聴きたいとのこと。</p>
<p class="bodytxt">師匠は「いい了見（りょうけん）だ」と了解して着物に着替えた。しかし落語をやる段になって女の様子がおかしい。大事そうに風呂敷（うろしき）包みを抱えている。談志が「それはなんだい」と尋ねると、母親の遺骨だと言う。「母は生前、談志の『鼠穴』が大好きだった」そうで、冥土（めいど）の土産に聞かせてあげたいとのこと。</p>
<p class="bodytxt">談志はしばし考え、おもむろに口を開いた。</p>
<p class="bodytxt">「あんた、噺（はなし）を聞いたら死のうと思っているんじゃないか？」</p>
<p class="bodytxt">女は黙りこんでしまった。師匠は、</p>
<p class="bodytxt">「そういうつもりならば落語をやるわけにはいかないよ」</p>
<p class="bodytxt">そう言ってお金を返した。女は骨壺を抱えたまま消えていった。</p>
<p class="bodytxt">とまあ、こんな話である。ただし、師匠と女の会話は聞いていない。たぶん、師匠から聞いたのか、あるいはこちらの想像か。「骨壺をもってやがったぞ」という言葉は間違いなく師匠から聞いたから、まあ、二人の会話も師匠から聞いたのだろう。</p>
<p class="bodytxt">これ以外のことはすべて創作だ。たとえば、その後石神井警察署から「骨壺女を保護してます」という電話があったという。なぜ、師匠のところに電話がかかってきたかというと、骨壺に談志のサインがしてあった云々（うんぬん）。そんなわけがない。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～麻薬犬～</span></p>
<p class="bodytxt">師匠を成田空港まで迎えに行った際、税関から出てきた談志がポケットからラップにくるんだくさやの干物を取り出した。「飛行機の中でこれで一杯やっていたんだ」と談志。たまたまその横を麻薬犬が通りすぎた。ただそれだけのこと。でも、「もしこの麻薬犬が師匠をかんだら面白いな」と想像した。　怪しい匂いがするからと麻薬犬が談志をかむ。麻薬捜査官が調べると、ポケットからくさやの干物が出てきた&hellip;&hellip;。</p>
<p class="bodytxt">この話を高田文夫先生にするとバカウケ。「志らくの談志師匠の話は本当に面白いな」と褒められた。先生がプロデュースした深夜のバラェティ番組「たまにはキンゴロー」に私が出演したときは、私の肩書きが「談志王」であったくらいだ。</p>
<p class="bodytxt">後日、とある深夜番組を見て驚いた。その麻薬犬の話を高田先生がビートたけしさんにしゃべっているではないか。驚きはこれで終わらない。</p>
<p class="bodytxt">とある週刊誌を読んでいたら、「噂」というコーナーで、「談志が成田空港で麻薬犬にかまれたらしい。しかし出てきたのはくさやだった」と書かれていた。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～ロリコン～</span></p>
<p class="bodytxt">師匠談志は、芸能人の名前をいい加減に覚えていることがあり、例えば松村邦洋を「村松」。何べん言っても彼を「村松」と呼んでいる。以前、車だん吉を「タンク団吉」と言ったことがあって、こりゃ面白いと舞台でしゃべろうとしたら、今度は私が「タンク団吉」が出てこず、言うにことかいて、「爆発五郎」と言ってしまった。するとそれが受けて、以来、ずっと爆発五郎で通している。</p>
<p class="bodytxt">なぎら健壱の名前も出てこなかったことがあるので、師匠ならばなんと間違えるか想像して、「兜三平」。めちゃくちゃだ。それを植木等さんの番組で師匠がゲストに呼ばれた際に、師匠の紹介の前フリということで、私と談春とでそのネタをやったらば、植木さんが驚いて、</p>
<p class="bodytxt">「談志さん、弟子の今の話は本当なんですか」</p>
<p class="bodytxt">と聞いた。師匠は冷静に、</p>
<p class="bodytxt">「全部ウソです」</p>
<p class="bodytxt">と答えた。そりゃそう言いますよね。師匠の前でやるやつもないもんだ。</p>
<p class="bodytxt">「師匠はロリコンなんです」という話を談志の会の開口一番にやっていたら、師匠に雪駄（せった）を投げつけられたこともある。高座にいる私の後頭部を何かがこすった。「なんだろう」と舞台そでを見ると、ものを投げた直後の形をした師匠がそこにいたのでした。</p>
<p class="bodytxt">師匠は立川流を設立した際、弟子から上納金をとるようになったが、その理由のひとつに、「弟子は俺の話題で飯を食ってやがる。金を払って当然だ」というのがあるのだが、しごくもっともな話でございます。</p>
<p class="bodytxt">ただ他の弟子は、「談志はケチ」だとか、「怖い」とかばかりなので、私の方が数段、師匠孝行です&hellip;&hellip;本当かね。</p>
<p>&nbsp;</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-85.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 07 May 2010 18:58:17 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>談ノ進の廃業</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt"><span style="color: #0000ff;">【登場人物】<br />●立川談志&hellip;&hellip;落語立川流家元、志らくの師匠<br />●立川談春（前座名・談春）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br />●立川志らく（前座名・志らく）&hellip;&hellip;落語立川流真打ち、私<br />●立川談ノ進&hellip;&hellip;元・落語立川流二つ目、志らくの弟弟子、廃業</span></p>
<p class="bodytxt">談ノ進（だんのしん）という弟弟子（おとうとでし）がいた。図体がでかい。でも穏和な感じで、頭も良さそうであった。父親がどこぞの検事であった。</p>
<p class="bodytxt">ただちょっと神経質なところがあり、困ると実に悲しい表情をするのだ。そのくせ図々しいところもあり、つまりわけのわからない男であった。</p>
<p class="bodytxt">とにかく変わった男だった。談志の古典落語をこよなく愛しながら、米丸師匠のところに新作落語の稽古（けいこ）に出かけ、『バスガール』なんという話を得意気にやっていた。</p>
<p class="bodytxt">私は彼のことが好きだった。見ているだけで面白い。そして哀愁が漂っていた。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～師匠のリンゴを盗み食い～</span></p>
<p class="bodytxt">とにかくよく食った。師匠の談志が「弟子たちにサンドイッチをこしらえてやるから人数分の食パンを買ってこい」と談ノ進に命じたら、弟子は五人いたのだが、食パンを五袋買ってきた。つまりひとり一袋という勘定だ。自分の基準でパンを買ってきてしまい、師匠が「多すぎだろ」というのを、「いや足りないかもしれません！」と悲しい顔で言い返した。</p>
<p class="bodytxt">当然のことながら余ったのだが、皆が残した分を談ノ進が全部食べてしまった。食べ終えて、「どうだ」という顔をしていた。</p>
<p class="bodytxt">師匠のところに贈答品として届いたリンゴを勝手に食っていたので、「おい、そんなことしたらだめだよ」と注意すると、「師匠が、『腹が減ったらうまいことやれ』とおっしゃっていたからいいんだ」と主張し、のべつリンゴを盗み食いしていた。</p>
<p class="bodytxt">あるとき、いつものようにリンゴをパクつこうと口をあけたところに、師匠が入ってきた。談ノ進、リンゴを片手に口を開いたまま固まってしまった。どれだけ怒られるかと思いきや、師匠は一言吐き捨てた。</p>
<p class="bodytxt">「皮をむいて食べなよ」</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～分厚い本を何冊もカバンに入れて～</span></p>
<p class="bodytxt">これは他の兄弟弟子に聞いた話。</p>
<p class="bodytxt">師匠が弟子と友達をつれて屋久島に遊びに行ったときのこと。談ノ進は師匠のカバンもちでありながら、己の荷物を山ほど持ってきた。兄弟子が「なんだその荷物は」と尋ねると、「本です」と答えたそうな。夜、寝る前に読むための分厚い本を何冊もカバンに忍ばせていたのだった。</p>
<p class="bodytxt">ただの旅行だと思っていた談ノ進だったが、現実は違う。案の定、師匠の荷物を持たされ、それに加え、師匠のマネージャーが素潜りをするための錘（おもり）まで持たされる始末。</p>
<p class="bodytxt">さらにビールとくさやの干物とリンゴを入れたクーラーボックスまで持たされ、炎天下、山登りをする羽目になったんだと。</p>
<p class="bodytxt">談ノ進、荷物がたくさんあるのにもかかわらず、近道をしようと草むらを突進して山を斜めに登ろうとしたため、小さな崖から落ちて、錘が額に当たってケガをしてしまった。</p>
<p class="bodytxt">兄弟子は腰を抜かしたそうな。道からはずれた草むらから、それも額から血を流した談ノ進が泣きそうな顔で現れたのだからね。</p>
<p class="bodytxt">山を越え、海岸に出たときには体力は限界に達し、「とにかく水分をとらねば」と探したが水の持ち合わせがなく、談ノ進はとうとうクーラーボックスの中にたまっていた氷が溶けた水を飲み始めたのだ。ただしこれは普通の水ではない。くさやの匂いがする水だ。周りがやめたほうがいいと止めるのを振り払って、「結構いけますよ」とくさや水を飲み干したらしい。見かねた師匠が「リンゴを食え」というと、「ありがとうございます」と叫んで一瞬にしてリンゴを食べたのであった。</p>
<p class="bodytxt">まさに一瞬。リンゴを口に持ってきて、手のひらで押し付ける。するとリンゴがまるでジューサーにかかるがごとくに液状になって口に入っていく。気がつくと奴の口にはリンゴのへたしか残っていなかった。</p>
<p class="bodytxt">大食いだけでなく、早食いでもあった。</p>
<p class="bodytxt">師匠の家でもらい物の仕出しの弁当を食べる機会があった。談ノ進が弁当を食べようとしていたので、「俺も一緒に食べるよ」と言って弁当のふたをあけたら、談ノ進はもう食べ終わっていた。弁当の包み紙をはがしてふたを取るだけの時間で、彼は全部平らげたのだ。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～「もうあいつには、めしを食わせない！」～</span></p>
<p class="bodytxt">弟子が数人で桶に入った握り寿司を食べようとしたときのこと。談ノ進が醤油の皿に醤油をなみなみとついだ。これを見た談春が怒こり、「醤油をそんなに使やしないだろ！」。すると談ノ進、談春をにらみ付けて、「僕は醤油を飲むんです」と言って醤油皿を手にすると本当に飲んでしまった。そして飲み終わった後、ちょっと悲しい顔をするのだった。</p>
<p class="bodytxt">師匠の友人である厚木の薬屋の高橋さんという方が、前座の面倒をよく見てくださる。師匠の独演会があると打ち上げで必ず、前座にたらふくごちそうしてくれるのだが、あるとき、談ノ進が高橋さんを失敗（しくじ）った。ごちそうしてもらえることが当たり前になり、ろくすっぽお礼を言わなかったのだ。そんな彼の態度が高橋さんの逆鱗（げきりん）に触れ、高橋さんはこう吐き捨てた。</p>
<p class="bodytxt">「あいつを干してやる！」</p>
<p class="bodytxt">「どう干すんですか？」と尋ねると、</p>
<p class="bodytxt">「もうあいつには、めしを食わせない！」</p>
<p class="bodytxt">嫌な干し方だな。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～「落語は来世の楽しみにする」～</span></p>
<p class="bodytxt">談ノ進にうまいラーメン屋を教えてもらったことがある。荻窪（東京都杉並区）の駅前にある「珍満」という店だ。荻窪といえば大変なラーメン激戦区で、当時は山本益博さんが絶賛した「丸信」と昔ながらの東京ラーメンの味を守る「春木屋」が大人気であった。私は師匠の旧友でもある益博さんの舌を信じていたので、「『丸信』のラーメンを食べに出かけたら、とってもうまかった」と話をしたら、談ノ進が「もっとうまい店が荻窪にありますよ」と、私を「珍満」に連れていってくれたのだ。</p>
<p class="bodytxt">なるほどうまかった。マスコミなどには一切とりあげられていない大衆的な店だったが、「丸信」よりうまかった。</p>
<p class="bodytxt">談ノ進は、立川流にしてはかなり早いスピードで二つ目に昇進した。しかし二つ目になってほどなく、落語家をやめてしまうのだ。理由は、信仰していた幸福の科学に人生を捧げるためだ。せっかく二つ目にまでなったのにもったいないという周りの声に対し、</p>
<p class="bodytxt">「落語は来世の楽しみにする」</p>
<p class="bodytxt">と言ったのである。けだし名言である。</p>
<p class="bodytxt">思えば、屋久島に持っていった大量の本は、大川隆法の啓蒙本だったのか。</p>
<p class="bodytxt" style="text-align: center;"><span style="color: #0000ff;">～偶然の再会～</span></p>
<p class="bodytxt">やめてしばらくして、談ノ進が私と同じアパートに引っ越してきた。まったくの偶然である。同じ形状の二階建ての建物が並んでいるアパートで、彼は私の隣の棟に越してきたのだ。しかも、彼の家の場所は私の家と同じ位置。つまり二階建ての一階で、とば口であった。</p>
<p class="bodytxt">最初のうちは互いに気がついていなかったのだが、談ノ進が「志らくと同じアパートだよ」とだれかから聞いて、ずいぶんと慌てていた、ということを私は弟弟子（おとうとでし）に聞いていた。</p>
<p class="bodytxt">いつかあいさつにくるだろうと思っていたが、待てど暮らせど来ない。半年ほど経過して、ついにやってきた。泥酔状態で家を間違えたのだ。</p>
<p class="bodytxt">呼び鈴をならし、ドアを激しくたかき、「俺だ、今帰ったぞ、開けろ！」と怒鳴っていた。そう言えば結婚したという噂も聞いていたので、奥さんを呼んでいたのだろう。</p>
<p class="bodytxt">私は訪問穴からそっとのぞいた。真っ赤な顔をした談ノ進が不機嫌な顔をして立っていた。やがて我が家の表札に気がついた。はっとした顔になり、慌てて逃げ出した。</p>
<p class="bodytxt">窓からのぞくと、大きな身体をかがめて駆けていく談ノ進の後ろ姿が見えた。後ろ姿だから表情はわからなかったが、きっとまた悲しい顔をしていたのだろうな。</p>
<p class="bodytxt">最近、ふと荻窪の「珍満」のことを思い出し、わざわざ食べに出かけた。しかし、「珍満」はつぶれたらしく、そこにはなかった。</p>
<p class="bodytxt">急に談ノ進の顔が頭に浮かび、今度は私が悲しい顔になってしまった。</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-84.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 30 Apr 2010 19:39:25 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>立川談春　下</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt">　<font color="blue">【登場人物】<br /> 
●立川談志......落語立川流家元、志らくの師匠<br /> 
●高田文夫（立川藤志楼）......放送作家、落語立川流Ｂコース（有名人コース）真打ち<br /> 
●立川談春（前座名・談春）......落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br /> 
●立川志らく（前座名・志らく）......落語立川流真打ち、私</font></p> 
 
<p class="bodytxt">　駆け出しのころ、談春と志らくはのべつ一緒にいた。2人で町のゲームセンターに行って野球ゲームで対戦をしたり、ビリヤードで勝負したり、時には金魚すくいに行ったり。<br /> 
　ビリヤードをしながら談春兄（あに）さんがつぶやいた。<br /> 
　「俺の方が売れているぜ」<br /> 
　「何で？そんなことはないでしょ」<br /> 
　「今月は俺の方が仕事が多いじゃないか」<br /> 
　「それと売れているとは違うと思うんだけど」<br /> 
　「馬鹿、仕事が多いほうが売れているというんだ」<br /> 
　「俺が言う売れているというのは人気のことなんだけど」<br /> 
　「うるせぇよ！」</p> 
 
<div align="center"> 
<p class="bodytxt"><font color="blue">～張り合う2人～</font></p> 
</div> 
 
<p class="bodytxt">　つまらないところで張り合っていた。2人がそこそこ世間に認知されるようになったころ。競艇好きの談春兄さんが競艇ツアーを開催した。知り合いを集めて貴賓室で談春のアドバイスのもと、船券を買うのである。<br /> 
　談春兄さんは競艇の世界では顔が知れわたっている。競艇のテレビ番組にもレギュラー出演をしていたぐらいだ。競艇場のレストランに行くと、誰もが「あっ、談春だ」と振り返る。「あっ、志らくだ」という人は皆無だ。<br /> 
　談春兄さんは得意満面の表情だ。「これが人気ってもんだ」とうそぶく談春。志らくは我関せずで通す。貴賓室では1000円からしか船券を購入できない。志らくは貴賓室から出て、一般の窓口で100円で買う。そして焼き鳥だの煮込みだの、安い食い物を買っては貴賓室に戻ってくる。<br /> 
　最初のうちは守衛もあいさつをしていたが、しまいには無視するようになった。貴賓室にはジュースの販売機が設置されていて、これがただ。喜んだ志らくは、まわりの仲間とジュースを飲みまくり、貴賓室始まって以来、レース終了前にジュースが終了になってしまった。<br /> 
　談春は競艇場に対して申し訳ないと気を使う。志らくは我が道を行くでまったく気にしない。<br /> 
　競艇が終わって、数人の仲間で居酒屋に入った。すると店員が私の顔を見るなり「師匠、今日はおしのびですか？」と尋ねてきた。談春の顔を見ても反応はなし。談春兄さんが驚いて、<br /> 
　「おい、あいつ、志らくの知り合いか？」<br /> 
　「いえ、初めて会いましたよ」<br /> 
　「競艇場では人気で負けたが、居酒屋では勝利した」と美酒に酔う志らくであったが、何年たっても相変わらず低レベルなところで競う2人であった。</p> 
 
<div align="center"> 
<p class="bodytxt"><font color="blue">～簡単に許す人～</font></p> 
</div> 
 
<p class="bodytxt">　談春兄さんがまだまだ低迷していたころ、とある落語会で私が、<br /> 
　「談春さんという落語家がいまして、この人がね......」<br /> 
　とマクラでしゃべったのを聞いて、談春兄さんは怒った。<br /> 
　「談春さんという落語家がいて、なんていわなくたって、客は俺のことを皆知っているよ！」。<br /> 
　談春兄さんが書いてベストセラーになった『赤めだか』がテレビ番組の「王様のブランチ」で取り上げられた際、談春兄さんが、<br /> 
　「志らくという落語家が僕の宿敵で」<br /> 
　と発言をした。これを聞いた志らくがマネージャーに怒りをぶつけた。<br /> 
　「志らくという落語家って言い方があるかい。本は売れたかもしれないが、世間的には映画のコラムを書いたり、方々で連載をもっている志らくの方が知名度はあるじゃないか！」<br /> 
　だからどうしてそんなことで競うのか！<br /> 
　志らくが『雨ン中の、らくだ』を出版して、その出版記念の落語会に談春兄さんにゲストで出演してもらおうと、マネージャーがコンタクトをとった。すると、談春が「出演するメリットはあるのか」という返答。たしかにあまりメリットはない。私は談春兄さんの携帯電話の留守電に詫びのメッセージをいれた。<br /> 
　数日後、私の弟子が教えてくれた。<br /> 
　「談春師匠が仰っていましたよ。志らくの野郎、方々で『赤めだか』に書かれていることは嘘だと言いやがって、それでよく出版記念の会に俺を呼ぶよ。これはもうケンカだなと思ったが、電話で詫びてきたから許すことにした」<br /> 
　これが談春という人なのだ。簡単に許すのである。</p> 
 
<div align="center"> 
<p class="bodytxt"><font color="blue">～最後まで2人は一緒～</font></p> 
</div> 
 
<p class="bodytxt">　文都兄さんが亡くなって、そのお別れの会で、談春兄さんは遅れてきた。2人の共通の知人である東北電力の渡辺くんが、談春兄さんのそばに行き、<br /> 
　「志らくさんがいますよ。そばに行かないんですか？」<br /> 
　と聞くと、<br /> 
　「なんで、俺があいつのところにあいさつに行かなきゃいけねぇんだ。あいつが後輩なんだから、あいつから来るべきだ」<br /> 
　と談春兄さんは憮然（ぶぜん）としていたそうだ。しかし数分後、気がつくと談春兄さんは志らくの横にきていて、<br /> 
　「お前の羽織の紐（ひも）の結び方、そりゃなんなんだ。不祝儀なんだからそれらしく結べよ」<br /> 
　と小言を言い始めた。それから最後まで2人は一緒にいた。</p> 
 
<div align="center"> 
<p class="bodytxt"><font color="blue">～「談春さんと志らくさんは仲が悪いんだね」～</font></p> 
</div> 
 
<p class="bodytxt">　『赤めだか』の元になった雑誌の連載を読んだ私は、あまりに志らくの記載に作り話があったので、楽屋で談春兄さんを責めた。<br /> 
　「兄さん、どうして嘘ばっかり書くの？　親から借りた上納金をパチスロですったなんて話はなかったよ」<br /> 
　「おい、お前だってコラムを面白おかしく書くだろ。それと同じだよ。それにな、どこにこの文章は事実ですと断りが入っているんだ？」<br /> 
　「あのね、それならば実名で書かないでよ。名誉毀損（めいよきそん）で訴えたら俺が勝つよ」<br /> 
　「じゃあ、訴えろよ」<br /> 
　周りにいる弟子たちは恐怖にふるえているが、2人はそんな会話を楽しんでいるのだ。<br /> 
　以前、2人が楽屋でなじり合っているのを聞いた小朝師匠が、<br /> 
　「本当に談春さんと志らくさんは仲が悪いんだね。聞いていて怖かったよ」だって。</p> 
 
<div align="center"> 
<p class="bodytxt"><font color="blue">～『赤めだか』が原因で破門騒動～</font></p> 
</div> 
 
<p class="bodytxt">　『赤めだか』が出版されて、志らくは師匠に破門されそうになった。『赤めだか』の中で、師匠談志が大切にしてるライオンのぬいぐるみのライ坊を志らくがいじめて、腹から綿が出てしまったから、腹巻をつけてごまかしていた、と書いからだ。<br /> 
　師匠が「なんでライ坊が腹巻を締めているんだ」と志らくに聞いたら、志らくはしゃーしゃーと「ライ坊が風邪をひかないようにと思ってやりました」と答えた。すると師匠が、「そうかありがとう」と礼を言った......うんぬん。<br /> 
　これを読んだ談志が、<br /> 
　「志らくを破門する！」<br /> 
　と激怒したのだ。<br /> 
　実はこれはネタである。立川ボーイズの漫才用に志らくが作ったものなのだ。実際は談志が「これはドイツで一目ぼれをして買ってきたライ坊というんだ。可愛がっているんだから、いじめねぇでくれ」と言っただけだ。談志の口から「ライ坊をいじめねぇでくれ」と出たことがあまりに面白かったので、それをふくらませてしゃべっただけだ。<br /> 
　談春兄さんからすぐに詫びの電話が入った。<br /> 
　「お前に迷惑かけてごめんな。あれはネタですと師匠に言っておいたから、大丈夫だよ」<br /> 
　私は念のため、師匠のところに行き、「談春兄さんは嘘つきですから信用しないでください」と訴えたのであった。</p> 
 
<div align="center"> 
<p class="bodytxt"><font color="blue">～仕返し～</font></p> 
</div> 
 
<p class="bodytxt">　｢談春がな、俺の『子別れ』で作ったクレヨンのフレーズをぱくりやがった！　このフレーズは、談志が何年もかけてたどり着いて出てきたものだ。それを簡単にぱくりやがって。あいつは俺の『芝浜』でもなんでもすぐにパクるだろ。ならば『やかん』や『金玉医者』をぱくってみやがれってんだ｣<br /> 
　師匠がレギュラー出演をしていったMXテレビの収録現場での言葉だ。<br /> 
　普通だったら、「師匠、まあまあ」となだめるべきなのだが、<br /> 
　「談春兄さんは『短命』も、師匠のギャグを全部ぱくってやっていますぜ」<br /> 
　とちくる志らくであった。<br /> 
　実は、これは仕返しであった。談志・談春・志らくの会が有楽町の読売ホールで開催されたことがあった。会の数日前に横浜のにぎわい座で私が独演会をやっていると、談春兄さんが楽屋に訪ねてきた。<br /> 
　「今度の三人の会、お前、なにやるつもりだ？」<br /> 
　「私は『抜け雀』をやろうかなと」<br /> 
　「馬鹿だなお前は。『抜け雀』は志の輔兄さんの十八番だぞ。比べられちゃうよ。お前、『子別れ』の下（げ）をやれよ。俺が上（じょう）をやるから。リレー落語にしたら客も喜ぶぞ」<br /> 
　私はその考えに従うことにした。しかし談春兄さんは、私の弟子に、<br /> 
　「俺が『子別れ』の上をやったら、客は志らくの『子別れ』の下なんか聞いちゃいられねえよ」<br /> 
　と言っていたらしい。<br /> 
　当日、会場は満員。1300人の客が入った。かなりマニアックな客がきていたが、なかにはあまり落語を聴いたことがないような客もたくさん来ていた。そこで談春が『子別れ』の「上」を熱演してもこれは難しい。<br /> 
　というのも、「上」は落語の美学の塊のような噺（はなし）で、初めて落語を聴く人にはあまり面白い作品ではないのだ。そこへくると「下」はドラマティックな展開があり、笑いあり涙ありで得な噺なのだ。<br /> 
　談春の『子別れ』の「上」の客の反応はいまひとつ。しかし志らくの『子別れ』の「下」は大いに受けた。<br /> 
　楽屋に戻ると談春兄さんは、<br /> 
　「へへへ、なんだか今日は志らくをひきたてるための会だったなぁ」<br /> 
　と悔しそうに吐き捨てた。<br /> 
　仲入り後、師匠が高座にあがるとき、<br /> 
　「お前ら、『子別れ』をやったのか。俺が近ごろ、『子別れ』をやっているのを知っているな」<br /> 
　と少々おかんむりの表情でそう言った。つまり、「俺が『子別れ』をやっているのに、よく俺の前で平然と『子別れ』を演ずることができるな」という師匠の小言である。<br /> 
　私は「申し訳ございません」と頭を下げたが、談春は、<br /> 
　「下をやったのは、志らくですから、へへへ」<br /> 
　と笑いながら師匠に言った。<br /> 
　おいおい、自分が『子別れ』をやろうともちかけたくせに、ひどい話である。<br /> 
　だからその仕返しをMXテレビの際にしたのである。<br /> 
　しょうがない2人だこと！</p> 
 
<div align="right"> 
<p class="bodytxt"><font color="blue">（つづく）</font></p> 
</div> ]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-78.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Thu, 04 Mar 2010 03:29:56 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>立川談春　中</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt">　<FONT color="blue">【登場人物】<br /> 
●立川談志......落語立川流家元、志らくの師匠<br /> 
●高田文夫（立川藤志楼）......放送作家、落語立川流Ｂコース（有名人コース）真打ち<br /> 
●立川談春（前座名・談春）......落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br /> 
●立川志らく（前座名・志らく）......落語立川流真打ち、私</FONT></p>　
 
<p class="bodytxt">　談春と志らく、2人は共に前座修行をした戦友である。談春の方が1年半先輩だ。高田文夫先生の紹介で談志の弟子になったエリートの志らくを他の兄弟子（あにでし）は嫌った。しかし、談春だけは近づいてきた。</p> 
 
<DIV align="center"> 
<p class="bodytxt"><FONT color="blue">～17歳のすごい前座～</FONT></p> 
</DIV> 
 
<p class="bodytxt">　志らくが入門してまだ半年のときに、2人で落語会を開催した。当時は前座が勉強会を開くのはご法度（はっと）であったが、師匠の談志が特例でそれを認めてくれたのだ。<br /> 
　場所は西武池袋線の江古田（えごた）駅（東京都中野区）のそばにある浅間湯という銭湯の2階のコミュニティホール。タイトルは「談志が呆（あき）れた落語会」。<br /> 
　当時、「談志が選んだ駅前寄席」という落語会が下北沢（しもきたざわ、東京都世田谷区）で開催されていたが、それをもじったのだ。<br /> 
　当時から自我を押し付けるような落語をやる志らくに対し、談春は至極まっとうな古典落語をやっていた。それが抜群に上手かった。なにより談春は耳がいい。談志の落語を数回聞くだけ覚えてしまう。師匠の知り合いのお座敷で談志十八番の『よかちょろ』を演じ、「すごい前座だ」と喝采（かっさい）を受けたこともある。<br /> 
　前座が『よかちょろ』を演ずるのはとんでもないことで、談春もそのことは重々わかってはいたが、客のリクエストということもあり、師匠には内緒という条件で『よかちょろ』を演じた。しかしその出来があまりに素晴らしく、客が師匠にしゃべってしまった。客に悪気はなく、「談志師匠の弟子はすごい」と伝えたかっただけである。でもこれにより、談春に1ヵ月の謹慎処分が下されたのであった。<br /> 
　この「談志が呆れた落語会」に高田文夫先生がいらしてくれたことがあった。打ち上げは黒ひげというスナック。そこで談春は、内藤国男の「おゆき」を朗々と歌い上げて、高田先生を爆笑させた。当時まだ17歳の小僧が「おゆき」を歌うのがあまりに異様で面白かったのであろう。</p> 
 
<DIV align="center"> 
<p class="bodytxt"><FONT color="blue">～モテる談春、ピエロの志らく～</FONT></p> 
</DIV> 
 
<p class="bodytxt">　談春は当時から女性によくもてた。師匠がリトグラフの個展を銀座で開いたことがあった。前座の弟子は会場係となった。そこのギャラリーのミマちゃんという女性に談春は惚（ほ）れられた。じつは、その子のことを最初に気に入ったのは志らくだった。仕事が終わってから何遍か彼女とお茶を飲みに行った。そしてついにボーリングのデートに行く運びとなった。そのことを得意げに談春に話すと、なんと当日、そのボーリング場に談春が現れたのである。<br /> 
　邪魔な奴（やつ）がきたとおかんむりの志らくである。でもミマちゃんはまったく迷惑そうな顔をしない。<br /> 
　「兄（あに）さん、帰れよ」と私が言うと、<br /> 
　「一緒にボーリングしようよ」とミマちゃん。<br /> 
　仕方なく三人でやることになった。面白くもなんともない。<br /> 
　さらに志らくを悲しませる出来事が起こる。志らくがピンを倒しても、ミマちゃんは無関心。ストライクを出してもあきらかにお義理の拍手をする程度。それなのに談春がピンを倒すと大はしゃぎ。ストライクなんぞ出ようもんならば飛び上がって喜び、談春とハイタッチまでする始末。<br /> 
　後日、2人が付き合い始めたことを知った。なんでボーリング場に談春が現れたかというと、ミマちゃんに泣きつかれたそうな。<br /> 
　｢志らくさんとボーリングに行かなきゃならなくなっちゃって困っているの。談春さん、来てくれない？」<br /> 
　志らくは、とんだピエロであった。</p> 
 
<DIV align="center"> 
<p class="bodytxt"><FONT color="blue">～失恋～</FONT></p> 
</DIV> 
 
<p class="bodytxt">　2人の落語会に来る女性客の大半は談春目当てであった。志らく目当ては、ほとんど同じような、怪しい目つきの男ばかりであった。<br /> 
　一度だけ、談春兄さんがフラれたのを見たことがある。相手は黒ひげで知り合った女性。勉強会の打ち上げで談春兄さんと飲んでいたら、2人組の女性が声をかけてきた。意気投合して4人は深夜遅くまで飲み明かした。2人組の女性は、ひとりはスレンダーな美女。もうひとりは、女性漫画によく登場キャラクターで、主人公のそばでいつもはしゃいでいる眼鏡をかけたチビみたいな子だった。<br /> 
　スレンダー女性は談春を気に入り、漫画は志らくになついた。当然、私は漫画なんぞ相手にしなかったが、談春はスレンダーに夢中になった。<br /> 
　そこで談春は、クリスマスイブの晩に彼女にプレゼントをすることを思いついた。イブの7時に黒ひげで待ち合わせをした。何をプレゼントしたらよいか悩む談春に、志らくは言った。<br /> 
　「お金がないんだから、ブランドの服や宝石は無理。ならば質より量で勝負しなきゃ。可愛らしいアメ玉とかチョコとかお菓子類をたくさん袋につめて渡すんだよ。女性はキュンとなって、もう兄さんにメロメロさ」<br /> 
　2人で新宿のマイシティという若者向けのデパートに行って、1万円分のお菓子を買った。前座にとっての1万円はとてつもない大金である。談春兄さんの本気度がそこからもうかがえる。<br /> 
　大量のお菓子をビニール袋に入れ、談春は黒ひげに向かった。志らくは家に戻り、談春の勝利の報告を待った。<br /> 
　時計が8時をさした。談春から電話がかかってきた。<br /> 
　「女がこないんだよ」<br /> 
　私は「じらしているだけだから、もうすこしの辛抱だよ」とアドバイスを送った。<br /> 
　その後10時になっても彼女は来ない。やがてイブが終わり、クリスマスに突入しても彼女は姿を現さなかった。フラれたと分かった談春は飲めない酒をあおり、黒ひげで酔いつぶれてしまった。<br /> 
　明くる朝になって談春から電話があった。<br /> 
　「結局こなかったよ」<br /> 
　「残念だったね。ところでプレゼントはどうしたの？」<br /> 
　「店の店員にゴミと間違われて捨てられちゃった......」<br /> 
　ビニール袋に入れておいたので、その形がちょうどゴミ袋と似ていて、それで捨てられてしまったのであった。</p> 
 
<DIV align="right"> 
<p class="bodytxt"><FONT color="blue">（つづく）</FONT></p> 
</DIV> 
]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-77.html</link>
            <guid>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-77.html</guid>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Wed, 24 Feb 2010 03:28:40 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>立川談春　上</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt">　<font color="blue">【登場人物】<br />
●立川談志......落語立川流家元、志らくの師匠<br />
●朝寝坊のらく（前座名・談々）......故人。落語立川流落語家、志らくの兄弟子<br />
●立川文都（前座名・関西）......故人。落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br />
●立川談春（前座名・談春）......落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br />
●立川志らく（前座名・志らく）......落語立川流真打ち、私</font></p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～ハブとマングース～</font></p>
</div>

<p class="bodytxt">　「談春師匠は怖い」<br />
　これが立川談春に対する若手落語家の共通の見解だ。<br />
　「志らく師匠は談春師匠のこと、怖くないんですか？」<br />
　と聞かれたこともある。私の答えは、<br />
　「全然怖くないよ。むしろ向こうが怖がっているんじゃないの？　なにをしでかすかわからない野郎だとね。まあ、ハブとマングースの関係だよ」</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～「おはよう」と言うのが恥ずかしい～</font></p>
</div>
<p class="bodytxt">　談春兄（あに）さんは本来は実に優しい人だ。そしてものすごく他人に気を使う。打ち上げで飲んでいるときなんか、談春兄さんは全員に気を使う。皆ちゃんと飲んでいるか、食べているか、退屈はしていないだろうか、終電に間に合うかどうか。そのことを普通に表現したら、立派な旅行ツアーの添乗員になれる。<br />
　でも彼は気を使っている自分に照れて、わざと乱暴に振舞う。<br />
　「もう帰ぇればいいじゃねぇか。終電がなくなるんだろ、おい、ぐずぐずするな！」<br />
朝、会うと「おはよう」と言いながら私の膝（ひざ）を蹴（け）ってきたこともある。「おはよう」と言うのが恥ずかしいのである。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～呼ぶのが照れくさい～</font></p>
</div>

<p class="bodytxt">　初対面の人を含めたグループでカラオケに行ったとき、女性タレントが私にクレームを付けてきたことがあった。<br />
　「談春さんってどんな人なんですか！？　今日はじめて会ったばかりなのに、おい、そこの女！　と言われました」<br />
　何々チャンと呼ぶのが照れくさい。だから「そこの女」になるのだ。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～天国の志らく、地獄の談春～</font></p>
</div>
<p class="bodytxt">　とある落語会に呼ばれた談春兄さんが、終演後、そこの主催者を楽屋に呼びつけて1時間にわたって小言（こごと）を言ったそうな。私が同じ落語会に呼ばれたとき、主催者が談春兄さんのことで愚痴をこぼしてきた。<br />
　「志らく師匠と談春師匠とでは、まさに天国と地獄ですよ。本当に談春師匠はおっかなかった」<br />
　私は「柳に風」のところがあって、どんな悲運な状況でもそれを笑い話としてうけとめ、まず文句を言うことはない。よほど腹が立ったときは、所属事務所のマネージャーや社長に言いつけて、クレームをつけさせるか、あとは高座で文句を言うか、ブログで文句を書くか。陰湿なのである。<br />
　以前、これは落語会ではないが、妻と温泉旅行に行ったときの話。ある旅行会社に海外旅行の際、お世話になったのだが、向こうの手違いで朝食がつかなかった。そこで旅行会社がお詫びのしるしにと、国内旅行をプレゼントしてくれたのだ。<br />
　だが、その旅行で使ったホテルが最悪。テレビのコマーシャルで有名なホテルなのだが、夕食のひどいこと。オーダーバイキングで、そのメニューをみて呆（あき）れた。寿司に天ぷらはいいとして、カレーライスにソース焼きそば。海の家じゃあるまいし。そのどれもがまずい。ケタ外れにまずい。<br />
　でもその場では文句を言わず、部屋に戻ってから所属事務所に電話してすぐにクレームをつけてくれと頼んだ。それだけでは飽き足らず、私が連載している「キネマ旬報」のコラムにホテルの名前がだれでもわかるようにして文句を連ねた。映画のコラムだというのに、無理矢理映画と結びつけてホテルを攻撃してやった。<br />
　何が言いたいかというと、談春兄さんだったらそんなことはしない。その場でレストランの店員に文句を言い、旅行会社に怒鳴り込んでいたであろう。そうなると、ホテルの人は「談春という落語家は怖い」、旅行会社も「あの人はヤクザではないか」とびびるであろう。<br />
　でも本当に親切なのはどちらか。志らくよりも談春なのである。<br />
　どちらが本当に怖いかというと、談春よりも志らくとなる。<br />
　<br />
　実は志らくは魔太郎ではないかと自分で思っている。藤子不二雄のマンガのね。私の悪口を言うと、その人は病気になるというジンクスがあるぐらいだ。それに私が怒ると、その対象者が必ずと言っていいほど病気になるのだ。ひどいときには死んだりする。私の妻の昔の恋人が、妻にちょっかいをだしてきたことがある。私は怒り狂った。すると、数日後、男は病気になり、記憶喪失になってしまったのだ。さらに、妻をくどこうとした男は、私の怒りをかった数日後、交通事故で死んでしまった。<br />
「志らくの監督した映画は立川キウイの落語よりひどい」と言った快楽亭ブラックさんは、自身が脚本を書いた映画の撮影中、骨折をする事故に巻き込まれ、病院に搬送される際に「志らくの呪（のろ）いだ！」と叫んだらしい。ブラックさんは、その事故から数年の後、借金問題で立川流から除名になっている......。<br />
　志らくの話はいい。自分で書いていて恐ろしくなってきた。ついでにいうと、夫婦喧嘩をすると翌日、100パーセント、妻は高熱を出してしまう。歩道を歩いていて、あまりに自転車が危険な運転をしていたので、怒りを込めて小声ではあったが「自転車は車道を走れ！」と言ったとたん、5～6台の自転車が車道に飛び出していったことがある。一緒にいた妻がギャッと言った。だから私の話はいい。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～江戸っ子の照れ～</font></p>
</div>
<p class="bodytxt">　談春兄さんの性格は江戸っ子そのものである。乱暴は照れの裏返しなのだ。ただあまりに虚勢を張りすぎて、誤解をうけることもしばしば。自叙伝『赤めだか』の爆発的なヒット以降、落語界では談春ブームが巻き起こり、東京で一番チケットのとりづらい落語家になった。そこで謙虚にしていればいいのに、吠（ほ）えまくる。　<br />
　「談春の野郎、ぶっ飛ばしてやる！」。<br />
　入院中の談志が私に会うなりそう言いはなった。体調を崩し大学病院に入院している師匠を私が見舞いに行った。するとおかゆを食べていた師匠がそう言って怒るのだ。<br />
　「あのな、談春のやつ、120万の仕事を断りやがったんだ。どんな理由があるか知らねぇが、腹が立ってな。俺が代わりに出てやる。それで、やつにどんな仕事があろうが、会場にこさせて俺の前座をやらせる。開口一番をやらせて、高座かえしをやらせる。ただでな」<br />
　実はこれは師匠の誤解だった。その仕事はギャラはいいが、落語をやるにはあまりいい状況ではなく、師匠のマネージャー（師匠の息子）が間に入って、断るつもりだったのが、先方が談春兄さんに電話をしてしまい、それで談春兄さんが断ったがために、それがストレートに師匠の耳に入り、とんでもねぇ野郎だ、となったのである。<br />
　売れてきて、ほうぼうで大きなことを言っていることが師匠の耳にも大かれ少なかれ入り、それで誤解を招いてしまったのだろう。<br />
　「談春は怖い」と思っているその大概が誤解であると私は思う。でも談春兄さんに言わせれば、怖かろうがなんだろうが、仕事が山のように入ってきて、ファンが押しかけてくるのだから文句はねぇだろうってことになる。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～気遣い～</font></p>
</div>
<p class="bodytxt">　二人でタクシーに乗ったときのこと。名古屋の松坂屋落語会に向かうため、新幹線を降りた談春と志らくはタクシーに乗った。会場の地図は志らくがもっていた。<br />
　「運転手さん、松坂屋に行ってください。デパートの正面入り口ではなく、従業員の入り口なんです。これが地図です」<br />
　するとタクシーの運転手は愛想の悪い人で、「え？　従業員の入り口って......」とつぶやいて黙ってしまった。志らくが差し出した地図を見ようともしない。私は仕方なく地図を運転手の横に置いた。<br />
　「......おい、どこに行くのかわかっているのか！」<br />
　談春がすごみながら言った。運転手は無言のまま。<br />
　「おい。地図を見なくても行き先がわかるのかよ」<br />
　「松坂屋でしょ」<br />
　「だから行き先はわかっているのかって聞いているんだよ。おい、地図を見るのか見ねぇのか。こいつ（志らく）が渡したんだぞ」<br />
　慌てて運転手、地図を見出す。<br />
　「......やっぱり見ないと行けねぇんじゃねぇか」<br />
　「いや、確認を」<br />
　「うるせえ！　ぐずぐず言ってねえで、そこに行け！」<br />
　「兄さん、およしよ。松坂屋の従業員の入り口はわかりづらいところにあるんだから。あのう、運転手さん、正面の入り口のたぶん、真後ろあたりになると思いますから、よろしくお願いします」<br />
　一見、乱暴な人だが、談春兄さんは志らくに気を使ってくれていたのだ。志らくが地図を出したのに運転手は無視をした。これでは志らくがかわいそうだ、こういう態度の運転手はけしからん、これは叱（しか）るべきだ、とこうなったのだ。</p>

<div align="right">
<p class="bodytxt"><font color="blue">（つづく）</font></p>
</div>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-70.html</link>
            <guid>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-70.html</guid>
            
                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Thu, 18 Feb 2010 00:39:42 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>朝寝坊のらく　下</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt"><font color="blue">【登場人物】<br />
●立川談志......落語立川流家元、志らくの師匠<br />
●朝寝坊のらく（前座名・談々）......故人。落語立川流落語家、志らくの兄弟子<br />
●立川文都（前座名・関西）......故人。落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br />
●立川談春（前座名・談春）......落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br />
●立川志らく（前座名・志らく）......落語立川流真打ち、私</font></p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～受けまくった立川ボーイズ～</font></p>
</div>

<p class="bodytxt">　1988年3月、のらく、文都（ぶんと）、談春（だんしゅん）、志らくは、二つ目に一緒に昇進した。そして1年後、私たちは、「平成名物TV　ヨタロー」（TBS）に「立川ボーイズ」として出演し、一躍人気者となった。<br />
　この番組は若手落語家のバラエティで、深夜放送。落語協会、落語芸術協会、円楽党、落語立川流の4団体の若手が3人1組になり、大喜利、コントなどをやって競う番組で、のらく、談春、志らくが組んで立川ボーイズを名乗ったのだ。<br />
　番組スタート時点では、コントのところは志らくと談春だけで出て漫才もどきを披露した。<br />
　無名の若手落語家の漫才なんかだれも聴かない。公開放送だったが、まったく受けなかった。しかし、番組内でのらく兄（あに）さんがちょいとしゃべると客席から反応があるのだ。若手といいながら、ひとりだけ明らかに中年で、禿（は）げているし、その姿が異様だったのであろう。<br />
　そこで志らくは、次の収録からコントにのらくに参加してもらった。これが大当たり。どっかんどっかん受けるのだ。ボケがのらく。志らくは危ないギャグを連発。談春がそれらに突っ込む。<br />
　のらくを主人公にしたいろいろなコントを私がこしらえた。のらくを魔法のランプの精にしたり、らくだのシャツに股引（ももひき）をはかせてキングコングに見立てたり、新聞紙で折った兜（かぶと）をかぶせて、下着に腹巻をさせて大魔神にしたり、金髪のカツラをかぶせて、悪魔にとりつかれた少女リーガンにして「エクソシスト」のコントをやったり、大暴れだった。<br />
　この立川ボーイズのコントが受けたので、１クールで終了のはずの番組が1年続いたのである。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～のらく兄さんの恋～</font></p>
</div>

<p class="bodytxt">　収録スタジオには10代の女の子の追っかけがつめかけ、さながらアイドルであった。ただ、のらく兄さんのキャラは際物（きわもの）で、次第に客から飽きられていった。こうなるとどうにもならない。登場するたび、失笑だったが、志らくと談春の人気がすさまじかったので、この2人のコントの部分は受けるのであった。追っかけも志らく派、談春派に分かれ、2人が登場するだけでスタジオはキャーキャー大騒ぎであった。<br />
　失意のどん底におちたであろうのらく兄さんであったが、実はそのころ、バラ色の人生であったのだ。というのも彼は恋愛をしていた。ファンの子と付き合っていたのだ。相手は、フェリス女学院大学に通っている美しい女性とのこと。<br />
　あるとき、のらく兄さんが、こんなことを言った。<br />
　「志らくよ、コントでのおじさんの出番をもう少し多くしてもらえないかな。女が志らくさんばっかりＭＶＰをとってずるいって言うんだよ。おじさんもそろそろＭＶＰをとりたいしね」<br />
　ＭＶＰとは、その日の番組で一番面白かった落語家に与えられる賞である。初期のころはのらく兄さんも随分ともらっていたが、途中から志らくばっかりになっていたので、彼女にせがまれそう言ってきたのである。でも旬が過ぎてしまった人を復活させる腕は私にはなかった。<br />
　旬は過ぎても春が来ているのだからいいではないかと、時折私と談春兄さんでなぐさめたものだが、この恋も、実はのらく兄さんの一方的な勘違いであったという事実が発覚した。<br />
　彼女から私のところに苦情がきたのだ。「のらくさんがしつこくて困る」と。たぶん、最初のころは女も気を引くようなことを言ったのだと思う。そのうちにあまりにのらく兄さんが本気になってきたので、驚いて身を引こうとしたら、もう手遅れで、つまりストーカーみたいになってしまっていたのである。<br />
　「着物姿ののらくさんがうちのマンションの前にずっと立っているんです。もう怖くて怖くて」<br />
　女は電話口で泣いていた。数日後、のらく兄さんに事情を聞いてみた。<br />
　「いや、彼女と飲んだんだよ、居酒屋で。で、彼女の家が近所だというので、送っていくと言ったら、結構ですと言うんだ。それは「寄ってもいいわよ」というサインだと思うだろ？　女のイヤはイイということだもの。だけどかたくなに彼女が拒否するんだよ。帰られちゃうと困るから、彼女のハンドバッグを奪ったんだ。もってあげるよって言ってね。そうしたら、泣きながら逃げちゃったんだよ。後を追いかけてマンションを突き止めたんだけど、出てこないから、それでしばらく立っていたんだ。女心は分からないもんだよ」<br />
　ハンドバッグを捨ててでも逃げたかった女の恐怖が、まったくわかっていないのらく兄さんであった。<br />
　完全にふられているのにそれに気がついていない。「女のじらし」だと言ってきかない。<br />
　仕事が終わって、のらく兄さんと二人で食事をして、その際もずっと彼女の話に終始していて、そろそろ帰ろうとしたら、<br />
　「志らく、喫茶店にでもいかない？」とのらく兄さん。<br />
　「何か話でもあるんですか？」と尋ねると、<br />
　「いや、もう少し、おじさんの女の話を聞いていかないかい」<br />
　......そんな暇はないよ、兄さん！<br />
　そんなのん気なのらく兄さんも、数ヵ月後、ついに自分がふられたことに気がついた。随分と荒れた。自棄酒を飲んでいた。<br />
　そんなのらく兄さんを慰めようと、志らくと談春が彼に付き合った。場所は池袋の居酒屋。2軒3軒4軒の梯子酒（はしござけ）。<br />
　明け方のスナックで、酔ったのらく兄さんが、<br />
　「談春（はる）、このウイスキーを一瓶一気に飲んだら、おじさんは死ねるかな」<br />
　とつぶやいた。談春兄さんは、<br />
　「飲んで死にゃぁ、いいよ」<br />
　と吐き捨てた。志らくも談春も一晩中ぐだぐだ愚痴る兄弟子（あにでし）にほとほと愛想がつきていた。<br />
　朝、カラスが飛び交う池袋の繁華街を3人で歩いていた。始発で帰るためだ。するとのらく兄さんが叫んだ。<br />
　「もう少し、付き合って！　もう1軒だけ飲みに行こう！　兄弟子の命令だ。行くぞ！」<br />
　これには談春兄さんが切れた。<br />
　「いい加減にしやがれ、この禿げが！」<br />
　のらく兄さんをヘッドロックして駆け出すと、ゴミために投げ捨てた。<br />
　憐（あわ）れなりのらく兄さん。<br />
　着物姿の朝寝坊のらくが、「あぁあぁ」と情けない声をあげながら、朝の池袋のゴミ溜めに沈んでいた。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～すごむ談春 VS 涙目のらく～</font></p>
</div>

<p class="bodytxt">　師匠の娘さんの結婚式で立川ボーイズが余興をやることになった。場所は東中野の日本閣。当日はパーティの手伝いもあり、余興の稽古（けいこ）もしないといけないので大忙しであった。私とのらく兄さんは早めに会場入りをして雑用をしていたが、談春兄さんがこない。<br />
　「談春兄さんはきっとまた競艇ですよ」と私が言うと、<br />
　「たまには小言（こごと）を言わないとな」と珍しく語気を強めるのらく兄さん。<br />
　「びぃしっと言ってやってくださいよ！」とあおる志らく。<br />
　遅れて談春兄さんが到着。のらく兄さんは真顔で言った。<br />
　「おい、談春（はる）！　どうして時間通りに来ないんだ。どうせまた競艇だろ！」<br />
　すると、談春兄さんの顔色が変わった。<br />
　「競艇じゃないですよ。仕事があってそれで遅れたんですよ。文句ありますか？」<br />
　仕事で遅れたのならば仕方がない。のらく兄さんも「ああ、そうだったのか」ですませればいいのに、<br />
　「なんだ、その言い草は！　俺は兄弟子だぞ！」<br />
　と談春兄さんを叱（しか）った。すると談春兄さんはすごんだ目をして、<br /><br />
　「......それがなんだってんだ。文句があるなら表に出ろよ！」
　この言葉にのらく兄さんは、<br />
　「いや、あのう、文句はないよ。もういいよ」<br />
　と涙目になって後ずさり。談春兄さんがいなくなってから私に、<br />
　「......談春（はる）は洒落（しゃれ）が通じないから困ったもんだよ、へへへ」<br />
　と笑って涙をごまかす情けないのらく兄さんがいた。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～破門騒動～</font></p>
</div>

<p class="bodytxt">　『雨ン中の、らくだ』にも書いたが、彼の性格を如実（にょじつ）に表すエピソードだから、また書こう。<br />
　「平成名物TV　ヨタロー』でのらく人気が下降し始めたころ、彼の破門騒動が持ち上がった。<br />
談志があるとき、のらく兄さんに電話を入れたのだが、へべれけに酔っ払っていたのらく兄さんは、声の主が談志だということに気がつかなかったのだ。「俺だ」という談志に対し「どちらの俺さんですか？」と聞き返してしまったのだ。<br />
師匠は怒り狂った。すぐさま私のところに電話をかけてきて、<br />
　「のらくの奴は破門だ。師匠の声もわからねぇ。破門だと伝えておけ」<br />
　私は慌ててのらく兄さんに電話をした。<br />
　「破門になっちゃうから、明日すぐに詫びに行かないといけないよ！」<br />
　明くる日、のらく兄さんは練馬の師匠の自宅に飛んで行った。あとでのらく兄さんに電話で様子を聞くと、<br />
　「ああ、大丈夫。師匠、怒ってなかったから」<br />
　私も一安心。数日後、師匠に会うと、「のらくは破門だから」とまだ怒りが収まっていなかった。師匠が言うには、<br />
　「あいつ、来たよ、次の日。ヘラヘラ笑いながら。で、掃除だけすると、何も言わずに帰っちまった。なんだかわからねぇ」<br />
　私はのらく兄さんに「どうなっているの？」と聞いた。するとのらく、<br />
　「おかしいな。家に行ったとき、師匠、何にも言わないんだもん。もう怒っていないのかと思ったよ」<br />
　鈍感にもほどがある。<br />
　次の日、私と談春兄さんがのらく兄さんに付き添って、師匠の仕事場に詫びに行った。師匠は何を怒っているのかを優しく語ってくれた。要は酒はほどほどにしておけということだった。私と談春兄さんはしきりに頭を下げていた。しかし肝心ののらく兄さんが頭を一度も下げないのだ。師匠の楽屋から出て、2人はこの兄弟子を叱りつけた。<br />
　「なんで、弟弟子（おとうとでし）が頭を上げているのに、張本人の兄さんが下げないんだよ。兄さんがあそこで土下座をすれば師匠の怒りは収まるんだよ！」<br />
　このとき、この兄弟子の頭には「土下座」の文字だけがインプットされてしまったようだ。打ち上げで銀座の「美弥（みや」という師匠の行きつけのバーに行った。師匠がトイレに行こうとしたら、便所の前でいきなりのらく兄さんが土下座をしてしまったのだ。<br />
　「俺はそういう行為が一番嫌いなんだ！　どけ！」<br />
　だれがそんな時に土下座をしろと言ったよ、兄さん！<br />
　のらく兄さんはまた涙目で、<br />
　「だって土下座しろというから。お前たちにまた一杯食わされちゃったよ」<br />
　とつぶやいた。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～談志 VS のらく～</font></p>
</div>

<p class="bodytxt">　それからしばらくたって、師匠が海外に出かけた。帰国のときは迎えはいらないと師匠からの通達があったが、ここがチャンスと私はにらんだ。のらく兄さんに、<br />
　「成田まで迎えに行くべきだよ。だれも弟子は行かないんだから、兄さんがひとりで待っていたら、許してもらえるよ」<br />
　と伝えた。のらく兄さんは私に言われるがまま、成田へと向かった。すると電話がかかってきて、<br />
　「志らく、師匠がいなくなっちゃたんだよ」<br />
　と泣き声である。なんでもバスに乗るために師匠に1万円札を両替してこいと言われ、戻ってみたら師匠がいなかったとのこと。私はすぐに師匠の家に向かえと指示をだした。<br />
　数日後、師匠が言った。<br />
　「あいつ、成田にきたよ。追い返すわけにもいかないよな。で、バスに乗ろうとしたら、細かい金がないんだ。俺の分はあるが、あいつの分まではなかった。それで『1万円をくずしてこい』とのらくに言ったんだ。見ていたら、遠くの方であいつが走り回っているんだ。するとバスが来たんだ。俺はバスに乗って帰るのが目的だわな。あいつを待つことが目的ではない。で、俺はバスに乗ってひとりで帰ったんだ。しばらくして、あいつ家にきたよ。『すみません』と謝るんだ。『どうしたんだ』と聞いたら、両替機がないから、お土産でくずしてもらおうと走りわまっていたんだと。『まあ、それはいいや。とにかく金を返せ』と言ったら饅頭（まんじゅう）の箱詰めを差し出しやがるんだ。『なんだ、これは』と聞いたら、どこも両替してくれないからこの饅頭を買ったんだと。『饅頭はどうでもいい。金を返せ』と言うと、饅頭の箱の上に8800円をのせるんだ。お釣りです、だとさ」<br />
　結局、1ヵ月の謹慎ですんだ。その代わり、酒は禁止となった。談志の弟である立川企画の社長の提案である。<br />
　「のらく、酒をやめるんだぞ」<br />
　と言うと、のらく兄さんは真顔で「一生ですか？」と聞き返した。<br />
　「一生とか、そんな話をしているんじゃない。とりあえず、今はやめろといっているんだ！」<br />
　社長も激怒していた。</p>

<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～廃業～</font></p>
</div>

<p class="bodytxt">　その数ヵ月後、のらく兄さんは落語家を廃業した。<br />
　「平成名物TV　ヨタロー」は終了したが、それでもまだ立川ボーイズの人気が続いていたので、単独ライブをやることになった。チラシも完成し、コントの台本を私が書き上げ、いざ稽古に入ろうとした前日、いきなり落語家を辞めるとのらく兄さんが言い出したのだ。<br />
　これには企画を立ち上げた立川企画の社長が怒った。<br />
　「とにかく志らくの家まで詫びに行け！　志らくが台本を書いているんだ。お前がやめるということになれば、志らくはまた2人用の台本を書きなおさなくちゃならないんだ。志らくが許すと言わなければ、辞めたらだめだ！」<br />
　社長から「これからのらくがお前の家に行くから、話を聞いてやってくれ」という旨（むね）の電話が入った。<br />
　事務所から我が家まで1時間もあればこれるのだが、3時間待ってものらく兄さんは来ない。これには社長が青くなった。きつく言い過ぎたから、思いつめて自殺でもしたんじゃないかと心配をした。3時間半経過して、のらく兄さんがやってきた。<br />
　「弟弟子のところに謝りに行くのは決まりが悪くてね。社長が行けというからそれで来たんだけど。途中で、お腹がすいたからカレーライスを食べてきた」<br />
　緊張感のない人だ。近所のファミレスで一通り話を聞いて、私は、<br />
　「兄さんの人生だから、兄さんの好きなようにやるしかない」<br />
　と言った。<br />
　帰り際、勘定を払う段になって、<br />
　「ここはやっぱり兄弟子の貫禄で全部払うべきかな」<br />
　とのらく兄さんは笑いながら言った。払って当然なのに、駄目な兄さんだな、でもこれがのらくって人なんだよな、と私は心の中で笑った。<br />
　のらく兄さんは本当に廃業してしまった。無理にでも引きとめるべきだったのかな。止めていれば、一緒にコントをやり、それが芸の糧（かて）となり、落語にも生きてきたのではないだろうか。<br />
　落語は下手でも、強烈な個性の持ち主だ。昨今の落語ブームで世間がほうっておくはずもない。<br />
　落語家をやめたから酒の量が増えて、それで身体を壊して命を縮めたのではないだろうか。<br />
　生きていたら、今ごろ志らく一門のいい参謀、おじさん格におさまっていたのではないか。<br />
　志らくの映画にも芝居にも出演していたのではないだろうか。<br />
　回転寿司もあの当時とは比べ物にならないほどきれいになって美味しくなった。絵皿をとって、ちょいといい酒を飲めたのではないだろうか。<br />
　私がコントをやらせなかったら、変に人気が出ることもなく、細々とではあるが、好きな酒をチビチビやりながら、「志ん生（しんしょう）は乙（おつ）だね」なんて言いながら、長生きできたのではないだろうか。</p>

<p class="bodytxt">　だけどね、兄さん、兄さんとコントをやっていたころが一番、楽しかったよ。あのころの兄さんは、だれよりも一番面白かったよ。<br />
　今でも時折、街中で着物姿の禿げを見ると、ひょっとしてのらく兄さんじゃないかと、後を追いかけている自分がいる......。</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-68.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Tue, 09 Feb 2010 00:00:22 +0900</pubDate>
        </item>
        
        <item>
            <title>朝寝坊のらく　上</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt">　<font color="blue">【登場人物】<br />●立川談志......落語立川流家元、志らくの師匠<br />●朝寝坊のらく（前座名・談々）......故人。落語立川流落語家、志らくの兄弟子<br />●立川文都（前座名・関西）......故人。落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br />●立川談春（前座名・談春）......落語立川流真打ち、志らくの兄弟子<br />●立川志らく（前座名・志らく）......落語立川流真打ち、私</font></p>
<p class="bodytxt">　のらく兄（あに）さんのことが忘れられない。時折、夢に出てくる。そのとき、私が必ず言う言葉が「なんだ、兄さん、生きていたんだ」。</p>
<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～酒のために死す～</font></p></div>
<p class="bodytxt">　朝寝坊（あさねぼう）のらく。前座名を立川談々（だんだん）といった。1954年生まれだから、志らくより九つ上である。談志に入門した時点で禿（は）げていた。その禿げ方はコントで使うハゲヅラのようであった。志ん生（しんしょう）と安酒をこよなく愛した噺家（はなしか）であった。<br />　死んでしまったらしい。「らしい」というのは、私は葬儀にも出ていないし、親族の方から直接訃報（ふほう）を聞いたわけでもない。ただ、落語ファンの人から、のらく兄さんの葬儀に参列したとを聞いただけ。<br />　だから今でもひょっとしたらどこかで生きているのではないかと......いや、やっぱり死んじゃったんだろうな。生きていたら、顔ぐらい出すはずだもの。</p>
<p class="bodytxt">　のらく兄さんは二つ目になって、少し売れて、それで落語家を廃業して、やがて酒のため死んでしまった。<br />　第一印象は悪かった。私が談志の弟子になろうと思っていたころ、落語会で高座返し（座布団を返したり、演者名を書いた「めくり」をめくる役割。前座が担当する）をしている彼を見たとき、なんて貧相な前座なんだろう、それに馬鹿そうだな、と呆（あき）れたのだ。<br />　当時、談志が、『現代落語論』のパート２『あなたも落語家になれる』を出版して、その中で「今の前座の弟子は馬鹿ばかり。落語を全く覚えようともしねえんだ」と書いていて、私は自分が弟子になったら師匠が驚くほど落語を覚えてみせるのに、と思い、師匠を嘆かせる弟子を軽蔑（けいべつ）していた。そんなときに、のらくを見たのだから、こいつが師匠の言う「馬鹿」かと思ったのである。</p>
<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～その芸にとまどう客～</font></p></div>
<p class="bodytxt">　入門してしばらくは、のらく兄さんに会う機会がなかった。というのも、前座は人間修業の名目で築地の魚河岸（うおがし）に通わされていたのだ。のらく兄さんの行き先は包丁屋。不器用な人だったが、包丁とぎには才能があったらしく、親方から随分とかわいがられていたそうだ。落語家を辞めて後継ぎになれ、と言われたこともあるらしい。<br />　入門して1ヵ月ぐらいで初めて対面した。実に優しいおじさんだった。気が小さくて、声も小さい。つぶらな瞳（ひとみ）。ちょいととんがった口。小柄でおっとりとした善人であった。<br />　とにかく天然で、やることなすこと実にトンチンカン。談志が「おい、談々、のせものをよこせ」と言ったのを聞いて、のせものとは落語家の符丁で「食べ物」のことなのに、彼は談志の頭の上に帽子をのせてしまった。<br />　落語はからっきし下手。志ん生の真似（まね）をしているつもりなのだろうが、前座がそんなことをしたって芸になるはずもない。志ん生はずぼらで、かなりいい加減に落語をやっているようにみえるが、若いころ、どれだけ稽古（けいこ）をしたことか。<br />　のらく兄さんは、志ん生のずぼらなところだけを真似する。だから本当にずぼらな芸になってしまい、そのうえ声が小さいから客はどう反応していいかわからずただただとまどう。</p>
<p class="bodytxt">　『どざえもん』という小噺（こばなし）が大好きで、どういう小噺かというと、<br />　「兄ぃの前だが、昨日大川で水練の達人を見たぜ」<br />　「どんなんだった？」<br />　「顔を水につけたまんま、一度も息継ぎをせず、すーっと川下に向かって流れていったんだ」<br />　「おい、それはひょっとしたらどざえもんじゃねえのか？」<br />　「いやぁ、名前までは知らねぇ」<br />　のらく兄さんはいつもこの小噺をやっていた。一度、前にあがった落語家がこの小噺をやってしまったことがあった。さすがにあきらめるだろうと思っていたら、高座にあがったのらく兄さん、<br />　「えー、ただ今、前の人がどざえもんの小噺をやっておりましたが、私もこの噺が大好きなので、私もやってみましょう」<br />　と言って、まったく同じ小噺を語り始めたのだ。<br />　「いやぁ、名前までは知らねぇ」......ったて受けるはずがない。客はいい迷惑である。</p>
<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～「掃除は野暮だよ」～</font></p></div>
<p class="bodytxt">　のらく兄さんの至福の時間は酒を飲んでいるときである。一番のお気に入りの飲み場所は「回転寿司」。<br />　「いいよ、回転寿司は。まず、3枚ほど好みの皿をとるんだね。100円のやつね。で、上の魚だけを剥（は）がして、これを肴（さかな）にちびちび酒を飲むんだ。2合は飲めるね。で、お腹がすいたら、残ったしゃりをガリで食うんだ。乙（おつだね」<br />　ちっとも乙じゃない。貧乏臭いだけ。でも、かわいらしい人でもあった。<br />　師匠が海外旅行に行くとき、見送りの際、のらく兄さんはすっと師匠のそばにより、「師匠、ご無事で」とお守りを渡していた。お母さんのようであった。</p>
<p class="bodytxt">　師匠の家の大掃除をするとき、志らくと談春（だんしゅん）兄さんは師匠の目の届かないところに行って、掃除をする。<br />　談春兄さんの掃除はひどかった。師匠のテーブルの上を拭（ふ）くのに、物をどかさないのだ。布巾（ぞうきん）を端を持って、物と物の間をつーっと通らせるだけ。そして師匠が談春兄さんが掃除している部屋に入ってくると、何気なく隣の部屋に逃げてしまう。師匠が隣に来ると、また次の部屋に逃げるのだ。当時、師匠の家にはパックマンというゲームのマシーンが置いてあって、我々は師匠から逃げる談春兄さんを見ては「パックマンだ」と笑ったものだ。<br />　のちの文都（ぶんと）、当時の関西（かんさい）兄さんは師匠が見えるところで必死に掃除をする。「わては掃除をしてまっせ！」というのをアピールしていたのだろうが、師匠の目に付くところにいるということは、その分だけ小言をくらいやすくなる。のべつ怒鳴られていた。<br />　で、のらく兄さんは力仕事は一切せず、師匠の書斎のすみで、談志の資料の整理を淡々とこなしていた。師匠が頼んだわけでもないのに、まるで自分は談志の秘書のような顔をして整理をしていた。<br />　「兄さんも掃除をしてよ」と言うと、<br />　「掃除は野暮だよ」<br />　前座のセリフではない。</p>
<div align="center">
<p class="bodytxt"><font color="blue">～カモのらく　VS　ギャンブラー談春～</font></p></div>
<p class="bodytxt">　前座のあいだは、落語はいっこうにうまくならなかった。のべつとちっていた。とちっても落語家はうまいことごまかすものだが、のらく兄さんはそれができない。ただただ慌てふためく。その姿が面白いので、わざと間違えやすい落語を、私と談春兄さんでやらせたものだ。<br />　「おじさん（自分でおじさんと言っていた）、今日、なんの落語をやろうかな。『狸（たぬき）』はやりすぎて飽きちゃったし」<br />　「兄さん、たまにはちょいと珍しい噺をやってくださいよ」と談春。<br />　「この間、志ん生の『千早振（ちはやふ）る」をテープで聴いたんだけど、あんなふうにやりたいね」<br />　「やったらいいじゃないですか」と志らく。<br />　「でも、まだちゃんと覚えていないんだよ」<br />　「兄さんならば、一（いち）か八（ばち）かでできちゃう」と煽（あお）る談春。<br />　「兄さんの『千早』、聴きたいなぁ」と無責任なことを言う志らく。<br />　「じゃあ、ちょいと冒険してみようか」と、まんまとひっかかったのらく。<br />　案の定、途中でセリフが出てこないで、高座の上で立ち往生。客は凍りつく。舞台そでで大爆笑の談春と志らく。この二人はピノキオをだます猫と狐である。</p>
<p class="bodytxt">　時効だから話すが、博打（ばくち）をしても、のらく兄さんはよく負けていた。一度、談春、のらく、志らくでトランプ博打をしたことがある。私はギャンブラーではないが、ここ一番の集中力がすごくて、時折神がかり的になることある。だからあまり負けない。談春兄さんは根っからのギャンブラー。本物である。のらく兄さんは......ただの禿げちゃびん。二人からすると良いカモだ。<br />　数時間の後、談春兄さんが大勝をして、のらく兄さんはおけらになってしまっていた。帰り道、のらく兄さんがか細い声で、<br />　「談春、随分と勝ったんだから、おじさんに帰りの電車賃をだしてくれないかい」<br />　すると談春兄さんは、<br />　「あれ？　帰りの足代も計算していなかったの？　博打をうつ資格がないな。金はあげないよ」<br />　と笑いながら言い放った。のらく兄さんはしょんぼりして、私に愚痴をこぼした。<br />　「おじさんは情けないよ。ひとまわりも下の子供にこんなことをいわれてね」<br />　この「子供」という言葉に談春兄さんが怒った。<br />　「子供に博打で負けるやつがどこにいるんだ！　千葉まで歩いて帰りやがれ！」<br />　のらく兄さんは千葉に住んでいた。私がそっと交通費を貸してあげた。それなのに、<br />　「志らく、今日、ギョーザを食べたでしょ。口が臭いよ」<br />　金を貸してくれた人に言う言葉じゃない。</p>
<p class="bodytxt">　1988年3月、のらく、文都、談春、志らくは、二つ目に一緒に昇進した。そして1年後、私たちは、「平成名物TV　ヨタロー」（TBS）に「立川ボーイズ」として出演し、一躍人気者となるのである。</p>
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<p class="bodytxt"><font color="blue">（つづく）</font></p></div>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-64.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Mon, 01 Feb 2010 20:31:41 +0900</pubDate>
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            <title>ことば</title>
            <description><![CDATA[<p class="bodytxt">　日本語は難しい。こんなに難しい言語をしゃべる日本人が英語をしゃべることができないはずがない。にもかかわらず、英語をしゃべることができる日本人が少ないということは、いかに学校の英語教育がひどいかということだ。</p>

<p class="bodytxt">　私は落語家だから海外に行った時、実に苦労をする。言葉をつかさどる仕事をしている人間が言葉を取られてしまうからだ。<br />
　<font color="red">ロスの空港の税関</font>で指紋をとられたことがあるのだが、空港職員が私になにを求めているのかがまったく分からなかった。以前ニューヨークに行った時は指紋をとるなんということはなかったので、かえってとまどってしまった。<br />
　職員は、手を出せ、指紋を押せ！　と言っていたのだが、私はただただ笑みを浮かべて「Yes Yes」とだけ繰り返していた。痺（しび）れを切らした職員が私の手をつかむと、無理矢理指紋を押させたのであった。その姿はほとんど犯罪者である。<br />
　そのことがトラウマになった。ラスベガスでのフードコートでのこと。オニオンリングを注文したのだが、店員が私に携帯電話ほどの機械を目の前にさし出し、なにやら言っている。何と言っていたのかというと、オニオンリングができたらこの機械のランプが点滅するからここまで取りに来い、うんぬん。<br />
　私はそのシステムを知らなかったので慌てふためき、その機械に思わず指紋を押してしまったのだ。フードコートで指紋を押したのは私ぐらいのものだろう。</p>

<p class="bodytxt">　近ごろ、落語を英語でしゃべって外人に聞かせている落語家がいるが、恥ずかしい。ネイティブな英語をしゃべられないのに、落語の面白さを表現できるはずもない。<br />
　私も<font color="red">ニューヨークで落語会</font>を開催したことがあったが、英語でしゃべるのは無理なので、吹き替えにしようかどうしようかと真剣に悩んだ。でも、落語を吹き替えにしたら私の存在意義はない。ただ座布団に座って口をパクパクさせているだけでは、いくらなんでもみっともない。<br />
　そこでスクリーンをおろして字幕でやることにした。私の落語をあらかじめ英語に翻訳して、スクリーンに字幕を出すのだ。当然、これにはスイッチャーがいるわけで、私が上下（かみしも）を切るのを合図にスイッチングをする（「上下を切る」は、顔を右に向けたり左に向けたりすること。落語では複数の登場人物を演じるため、このような動作をする）。<br />
　しかし、私が本番で、アドリブで......と言ったって、「おう」とか「え？」程度のセリフをはさんだだけなのだが、上下を切ったがために、スイッチャーがわけがわからなくなり、結果、聴いている外人もパニックになってしまった。<br />
　そもそもアメリカ人には字幕を見るという習慣がない。そんな器用なことはできないのである。だからあちらで上映される外国映画は、基本は吹き替えである。</p>

<p class="bodytxt">　それに<font color="red">昔のハリウッド映画</font>を観ると、フランス人だろうがロシア人だろうが、平然と英語でしゃべっている。ひどいのは戦争映画。敵国のドイツ兵が英語でしゃべっているのだ。「ニュールンベルグ裁判」なんという映画は、裁判の場面で最初のうちはドイツ人はドイツ語をしゃべっているが、途中から全員英語でしゃべりだすのだ。ならば、最初から英語にしとけ。</p>

<p class="bodytxt">　アメリカで日本映画が上映されるときの吹き替えで、笑ってしまうことが多々ある。任侠映画によく登場する「おひかえなすって」は吹き替えにすると「ハウドゥユードゥ」。これしか適当な言葉がないそうだ。</p>

<p class="bodytxt">　日本語は実に多彩。たとえ（比喩）を使った表現も多いが、その分、間違える日本人も多い。<br />
　仕事に遅く来た人に向かって、「今ごろ来たのかい？　まるで重役出勤だね」なんと言うことがあるが、ある人がそれを言い間違えて<font color="red">「今ごろ来たのかい、まるで大名行列だね」</font>と言ってしまったのを聞いたことがある。<br />
「それじゃあ、まるで裸の王様だよ」というのを<font color="red">「まるで裸の王様の耳だよ」</font>と言ったやつもいた。「裸の王様」と「王様の耳はロバの耳」とが混ざってしまったのだ。<br />
「余は満足じゃ」という殿様のセリフを<font color="red">「余は五体満足じゃ」</font>と、健康状態まで言及してしまった人もいる。</p>

<p class="bodytxt">　私の妻の友人がAV女優のスカウトマンをしていて、それを自慢げに吹聴しているというから、「注意してやれ」と私は妻にアドバイスした。<br />
　「ＡＶのスカウトマンってぇのはね、昔で言うところの吉原（よしわら）の女衒（ぜげん）なんだからね」<br />
　妻はその友人に<font color="">「私の亭主が言ってたわ。AVのスカウトマンって、昔でいうところのゲシュタポよ！」</font>。</p>

<p class="bodytxt">　妻が高校生のころ、学校で狂言鑑賞会なるものが開催された。妻は狂言がなんであるかわからず、言葉から連想した。狂言......狂う言葉......なるほど、頭のおかしい人の芝居に違いない。<br />
　そして本番。狂言である。あの独特のしゃべり方を聞いて、本当に頭のおかしい人たちが懸命に芝居をしていると思い、心の中で「頑張れ！」と応援してしまったそうだ。<br />
　また妻は、ひょっとこを妖怪の一種だと思っていたし、福助を七福神のメンバーだと思っていた。<br />
　さらに妻は、白黒の写真やフイルムを見て、その時代の世の中に色はないと思い込んでいた。私がいつから色がついたんだよとたずねると、「昭和三十年代の後半から徐々に......」。</p>

<p class="bodytxt">　最後に、私の失敗談。バーでの出来事。ママに「志らくさんって左側から見るといい男ね」と言われ、「口がうまいんだから！」と言うべきところを「口ほどにもない！」......侍みたいな口調になってしまったのであった。</p>]]></description>
            <link>http://special.gotoshoin.com/shiraku/post-56.html</link>
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                <category domain="http://www.sixapart.com/ns/types#category">立川志らくの怒らないでください。</category>
            
            
            <pubDate>Fri, 08 Jan 2010 11:43:18 +0900</pubDate>
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